漫画「美味しんぼ」の有名なエピソードに「トンカツ慕情」というのがある。
”いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるようになりなよ”というセリフが有名だ。
同感だ。
いつでもトンカツを食べられることがちょうどいいくらいの幸せだと。
であれば、そこが免許センターであっても、俺はトンカツを食べる!
いつでもトンカツを食べられることが幸せ
美味しんぼの「トンカツ慕情」のエピソードはこうだ。
貧しい少年がある日カツアゲにあったところをトンカツ屋の店主に助けてもらい、おまけにトンカツをご馳走になる。
その少年はやがてアメリカで名を立て成功者となるのだが、いつかのトンカツ屋の店主にお礼がしたいと主人公の山岡士郎に依頼する…というもの(超概略)。
↑コミックス第11巻に収録
有名なのがトンカツをご馳走になった際に店主が話す、
「いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるようになりなよ。
それが、人間えら過ぎもしない、貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ。」
というセリフ。
↑『美味しんぼ』コミックス第11巻 (集英社)「トンカツ慕情」より
このセリフを読んだ私は膝を打った。
「そうだよな、いつでもトンカツを食えるって幸せなことだよな!」と。
あ、私は懐の具合のことではなく、メニューの選択肢にトンカツがある幸せを言ってます。
私とトンカツとの思い出
忘れられないトンカツがある。
東京・府中の運転免許試験場で食べたトンカツ定食。
車の免許を取るために朝早く赴いた、府中の運転免許試験場。
寝坊をした私は朝食も撮らず受付時間ギリギリに試験場に駆け込んだ。
受付を済ませて遅い朝食として食べたのは、試験場内の食堂の券売機で見つけたトンカツ定食。
その後受けた試験は自信がなかったが、なんとか合格。
大学生で何者でもなかった自分に、社会に出るパスポートを渡されたような気分だった。
あのとき食べたトンカツの味を忘れられないでいる。
何の変哲もないトンカツだったと思うのだが、深く記憶に刻まれているのはなぜだろう。
公共施設の食堂にトンカツがあった、ということのバリューだろうか。
そう、いつでもどこでもトンカツが食べたい。
それをかなえられるのが、人としての幸せというのではないだろうか(無理矢理)。
トンカツを巡る冒険
トンカツが食べたきゃ専門屋に行けよ、で片づけるのは無粋というもの。
ファミレス、食堂、フードコート…
トンカツ屋ではなくても、いたるところでメニューにトンカツを探すことに喜びを見出す戯び。
↑ファミレス「ガスト」でトンカツ定食を探すも
↑メニューにあったのは「やわらかヒレカツ」(ライス別注)。広義のトンカツだろうが、そこはやはり「いわゆる」のトンカツが食べたい。
↑高速道路のサービスエリアでも忘れずトンカツを探す。北陸道の米山SAにて。
↑一番近いものがこれでした(なんで?)。「新潟たれかつ丼」、せっかくなので、派生メニューの「新潟たれかつ・しらす丼」にしてやった。トンカツからどんどん離れていく。
↑何度か法務局に用事があり、法務局が入居する官公庁の合同庁舎へ行くことがあったので
↑部外者だが建物に入る食堂を利用することにした
↑当然トンカツ定食を探すも、ここでもトンカツはなし。近いものはカツカレーか。
↑カツの中身がうっすうすで、何を食べているのか不思議な気持ちになった。でも、ここで働くスーツの人たちに混ざって食べる非日常を含め、特別感が味わえた。
↑「まいどおおきに食堂」ってのも、よくロードサイドで見かけますよね。自分で好きなおかずをセレクトしてオリジナルの定食を作るセルフサービス方式。
↑揚げ物コーナーには、から揚げ、アジフライ、コロッケ、メンチカツ、白身フライ… トンカツの文字がない。
↑新潟名物の「タレかつ」ならありました(タレにくぐらせるなよ!おいしいけど!)
以上、トンカツ探訪記でした。
やはり、「トンカツ大王」のあのおじさんが言っていたとおり(ちがう)「いつでもトンカツが食える」というのはなかなかに難易度が高いということがわかった。
でも、食べられないことがトンカツへの欲求を高めてくれるのだ。
本命である免許センターへ向かう
先に触れた私的エピソード「免許試験場とトンカツ」。
ファミレス、高速道路のサービスエリア、官公庁の食堂などが空振りだったのは、免許試験場でトンカツに出会う喜びを高めるためだったのだろう。
すっかり「免許試験場で食べるトンカツの口」になっている。
いまは地元の新潟に住んでいるため、東京・府中の運転免許試験場ではなく、新潟県にある免許センターへ。
免許更新のタイミングではまったくないのだが、食堂を利用したいとやってきたのだ。
↑食品サンプルがイかしている
食堂内にはまばらに人がおり、食事を取ったり、試験に向けて勉強していたりと思い思いに過ごしていた。
店内ではBGMとしてラジカセからV6の曲が流れている。
さあ、ついにトンカツ定食を食むことはできるのか!?
↑あったのはカツ丼でした
どうして卵でとじちゃうのか!
カツ丼ができるなら、メニューにトンカツがあってもいいでしょうに!
と、頭の中で悪態をつきつつ食べるそれは、とてもとてもおいしかった。
普通は逆かもしれないけど、子どものころはあまり好きではなかった卵とじのカツ丼を、大人になったら好きになってきた。
トンカツもいいけど、カツ丼もいいじゃないか。
V6を流すラジカセのBGMが、中学生のころに聞いていた聞きなじみのある曲に替わった。
「いつでもトンカツを食べる」は難易度が高い
府中の免許試験場でトンカツに出会えたのは奇跡だったのかもしれない。
フラットにトンカツに出会うのはなかなかに難しい。
でも、そうやってトンカツを探す時間こそがなにより「ちょうどいい幸せ」なのかもしれない。
最後に訪れたのはカフェテリア。
↑カフェテリアで、すごくいいトンカツに出会えました