宝石をカガクする! 特別展「宝石」 監修者が見どころを解説
2月19日(土)~6月19日(日)まで、東京上野の国立科学博物館で特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」が開催されます。古くから人類を魅了し続けてきたさまざまな宝石とジュエリーを一堂に集めた本展覧会。宝石の誕生や美しさの科学とあわせて、主な見どころを監修者に語っていただきます(編集部)。
宝石は、地球という大きな星の小さな「かけら」から見いだされます。46億年にわたる地球の生い立ちでは、悠久の自然の創作が繰り返されています。その自然造形物に秘められた、彩り、輝き、煌めきが、古より人々の英知により磨き出され、今日まで伝承されています。宝石は、美しさの「理由(わけ)」を光にこめて語っています。その「理由」を、地学、化学、物理、産業技術などの科学の観点からひもとき、世界的な宝飾芸術コレクションを通じて文化の観点から鑑賞していただく展示構成となっています。
本展では、ダイヤモンドやルビー、サファイア、エメラルドなど、広く知られているものから、コレクターズアイテムとよばれる「レアもの」、フォスフォフィライトのようにSFファンタジー漫画などの意外な分野から知名度が上がったものまで、宝石を幅広く取り上げました。国内の宝石コレクション、鉱物コレクションから選りすぐったラフ(原石)とルース(裸石:カットされているが、枠や台がついていない宝石)、さらに、世界的な宝飾芸術コレクションの至宝を陳列し、宝石の魅力の一端をお伝えします。
宝石はどうやってできるのか?
宝石の原石の多くは、地下深いところでうまれます。地球内部は、マグマがあったり、大きな地圧がかかったりと、高温高圧の極限環境にあり、しかも、プレート運動などによって、長い年月をかけて動いています。
このため、地表には数々の風光明媚な地形を創り出すと同時に、地中では多種多様な化学反応や結晶化と融解を繰り返し、その結果として様々な鉱物が生じます。その中で美しく、堅牢で、充分な大きさのものだけが宝石の原石となるのです。
宝石がどのように形成されるのか、それを知る手がかりとなるのは、宝石の原石が含まれている岩石(母岩)です。母岩を調べると、宝石ができる大まかな形成プロセス(起源)を推定することができます。
展示の冒頭では、重要な地質作用に焦点を当て、4つのタイプ(火成岩、ペグマタイト、熱水脈、変成岩)の母岩と原石の大型標本で、宝石が地球の躍動(ダイナミズム)の中で誕生するプロセスを紹介します。
たとえば、本展のためにブラジルから取り寄せた高さ2.5mの巨大アメシストドームは熱水のタイプで、この前で迫力ある記念撮影もできます。この大型標本は、ブラジルの溶岩台地から掘り出されたものです。南米では今から1億3200万年ほど前(白亜紀)に、大地をマグマが覆い尽くすほどの大規模な噴火が起こり、100万年も継続しました。洪水玄武岩と呼ばれるこの溶岩流の面積は形成初期には150万平方キロメートルに達し、現在はブラジル、ウルグアイ、パラグアイにまたがる領域に層厚最大1.7キロメートルの溶岩台地が広がっています。
「玉磨かざれば光なし」。このことわざは、宝石が原石から磨き出される事実を適切に表しています。原石から宝石としての特性を最大限に引き出すための整形と研磨の工程をまとめて「カット」と呼び、その出来映えは、原石の大きさや品質に劣らないほど宝石の評価を左右します。
宝石の特性を最大限に引き出し、良質部分だけを残しつつ原石の大きさを活かすようにカットが施されることで、宝石の価値はさらに高まります。国立西洋美術館から特別出品される「橋本コレクション」の貴重な約200点の指輪で、紀元前2000年以降、人類とともに発展してきた宝石のカットの歴史をたどる展示は必見です。