特徴的な赤い発疹で知られる麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスによって引き起こされ、空気、飛沫、接触を通して感染する。ワクチン未接種の状態でさらされれば10人中9人が発症するという、現存するウイルスの中でも特に強い感染力をもつ。大半のケースは軽症で済むものの、最初の感染から数カ月から数年後に深刻な合併症が引き起こされる場合もある。
世界保健機関(WHO)によれば、2023年には世界で30万人超の感染が報告され、2022年に比べて8割近く増えた。特にヨーロッパでは増加が著しく、2023年には前年比で40倍以上の4万2200人が感染した。新型コロナウイルスの流行期に麻疹ワクチンの接種率が下がったことが、感染が増えている主な原因だという。
また、米疾病対策センター(CDC)によれば、米国では2024年1月1日~2月29日にすでに41人の感染が報告されており、CDCは、この流行は世界的な脅威の拡大を反映したものだと警告している(国立感染症研究所によれば、日本での2024年の麻疹報告数は2月28日時点で2人)。
1963年に麻疹ワクチンが導入されるまで、米国では毎年300〜400万人が感染、4万8000人が入院、400〜500人が死亡し、1000人が脳炎を発症していたと推定されている。ワクチンの導入後、これらの数は99%以上減少した。
「ある意味、私たちは自分自身の成功の犠牲者なのです。というのも、人々の目に見えなくなり、心からも消え去ったものは、もはや問題とはみなされなくなるからです」と、米テキサス大学ヒューストン医療科学センターの感染症専門医・疫学者のルイス・オストロスキー氏は言う。
主な課題のひとつは、麻疹は感染力が強いため、流行を防ぐには非常に高い割合の人々が予防接種を受ける必要がある点だ。住民のワクチン接種率が極めて高くならない限り、流行は避けられないと、米クリーブランド・クリニックの感染症専門医カミール・サベラ氏は述べている。「麻疹は、感染しやすい人を決して見逃しません」
まだワクチンの初回接種を受けていない小さな子どもや、ワクチンを受けられない免疫不全の人々、1回しか接種を受けていない子ども(最大の効果を得るには2回の接種が必要)などは特に麻疹に感染しやすい。
麻疹感染のリスク
麻疹の症状は、発熱、せき、鼻水、目の充血とうるみ、鮮やかな赤い発疹だ。感染した人は、発疹が出る前の最大4日間と出た後の約4日間、他の人への感染力をもつ。
大半の人が完治する一方で、麻疹は「関連する病気を引き起こす割合も、死亡率も高いのです」とサベラ氏は言う。
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