頭が2つあるサメの報告が世界で増加、原因不明

ひとつ目のサメなどの突然変異も、乱獲で遺伝子の多様性が低下した?

2016.11.08
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2008年にオーストラリア沖で捕獲されたヨシキリザメの子宮内で見つかった双頭の赤ちゃんザメ。(PHOTOGRAPH COURTESY CHRISTOPHER JOHNSTON)
2008年にオーストラリア沖で捕獲されたヨシキリザメの子宮内で見つかった双頭の赤ちゃんザメ。(PHOTOGRAPH COURTESY CHRISTOPHER JOHNSTON)
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 双頭のサメなど、映画の中の作り物のように思われるかもしれない。けれども科学者によると、そうしたサメはたしかに実在し、しかも、世界中で発見例が増えているという。

 2013年には、フロリダ沖で捕獲されたオオメジロザメという胎生のサメの子宮内から双頭の胎児が見つかって話題になったし、 2008年にはインド洋でも双頭のヨシキリザメの胎児が発見されている。

 2011年には、カリフォルニア湾内とメキシコの北西沖で捕獲されたメスのヨシキリザメの子宮内から発見された双頭の胎児を詳しく調べた論文も発表されている。実は、これまでに双頭の胎児が発見されているサメのほとんどがヨシキリザメだ。2011年の論文で研究チームを率いたメキシコ国立工科大学のフェリペ・ガルバン・マガーニャ氏によると、ヨシキリザメの子宮には一度に50匹近くも胎児が入っていることがあり、数が多い分、奇形が見つかりやすいのだという。(参考記事:「世界でサメを撮ってきた」

 このほどスペインの研究チームが発見した、ヤモリザメの仲間であるアトランティック・ソーテール・キャットシャーク(Galeus atlanticus)の双頭の胎児について科学誌『Journal of Fish Biology』に論文を発表した。ヒトの健康の研究のために研究室でサメを育てていた研究者たちは、透明な卵の中に異常な胎児がいることに気づいたという。(参考記事:「頭が2つあるサメが見つかる、卵生で初、地中海」

双頭のヨシキリザメはまだ多いほうだ。ヨシキリザメのメスは一度に多くの子を産むため、その分、異常な胎児が見つかることも多いと考えられる。(PHOTOGRAPH COURTESY CHRISTOPHER JOHNSTON)
双頭のヨシキリザメはまだ多いほうだ。ヨシキリザメのメスは一度に多くの子を産むため、その分、異常な胎児が見つかることも多いと考えられる。(PHOTOGRAPH COURTESY CHRISTOPHER JOHNSTON)
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 今回の発見には特別な意味がある。トラザメのような卵生のサメで双頭の胎児が発見されたのは、これが初めてなのだ。(参考記事:「共食いも胎盤も! サメは「繁殖様式のデパート」」

 研究者たちは卵を切開して胎児を調べた。研究チームを率いたバレンティン・サンス・コーマ氏は、この胎児が孵化しても生きられたかどうかは分からないと言う。双頭の胎児が今回初めて見つかったという事実は、人間の目にとまるほど長生きできるものがいないからかもしれない。

突然変異の原因は不明

 双頭のサメはめったに見つからないので、突然変異の原因を特定するのは難しい。

 サンス・コーマ氏らによると、双頭の突然変異の原因は遺伝子の異常にあるようだ。この胎児はほかの800匹近くの胎児と一緒に実験室で育てられていたため、研究者たちの知るかぎり、サメの卵はいかなる感染症、化学物質、放射線にもさらされていなかった。(参考記事:「動物の奇形:3つ目のカニ、双頭のカメ」

 一方、野生のサメの奇形については、ウイルス感染症、代謝障害、汚染のほかにも、乱獲で遺伝子の多様性が失われたことによる遺伝的異常など、さまざまな原因が考えられる。(参考記事:「イルカの健康被害、原油流出の影響か」

双頭のサメが生きて産まれることはほとんどない。(PHOTOGRAPH COURTESY CHRISTOPHER JOHNSTON)
双頭のサメが生きて産まれることはほとんどない。(PHOTOGRAPH COURTESY CHRISTOPHER JOHNSTON)
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 最近行われた別の研究では、海洋科学者のニコラス・エーエマン氏が、ベネズエラのマルガリータ島沖の漁師によって捕獲された2種類のサメの双頭の胎児を調べた。1匹はホシザメの仲間(Mustelus higmani)の胎児で、もう1匹はヨシキリザメの胎児だ。エーエマン氏によると、このサメたちは生きて産まれることはできなかったと考えられるが、カリブ海で双頭のサメが見つかったのはこれが初めてだという。

ひとつ目ザメも

 メキシコ国立工科大学の修士課程の学生であるエーエマン氏は、自然界で双頭のサメの胎児が増えているなら、乱獲により遺伝子の多様性が失われていることが原因である可能性が高いという。

 これに対して、2011年にヨシキリザメの論文を執筆したガルバン・マガーニャ氏は、双頭のサメが増えているわけではなく、このタイプの奇形に関する論文を掲載する科学雑誌が増えただけだろうと考えている。

 ガルバン=マガーニャ氏は、ほかにも奇妙なサメをいくつも見ている。その1つは、2011年にメキシコ沖で発見された、頭の正面に大きな目が1個だけある「ひとつ目ザメ」だ。1個だけの黒っぽい目は単眼症と呼ばれる先天性疾患の特徴で、ヒトを含む数種類の動物で確認されている。(参考記事:「偶然の発見、メキシコで単眼のサメ」

 エーエマン氏は、奇形のサメは非常に珍しいため、研究は難しいという。

「できれば研究してみたいのですが、双頭のサメは海に網を投げれば引っかかってくるというものではありません」と彼は言う。「ランダムにしか生まれてこないのです」

文=Joshua Rapp Learn/訳=三枝小夜子

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