村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

2020年01月

FRBは最低限必要な準備預金は1.5兆ドルと結論を出す

FRB議長「貿易の不確実性は減った」 会見要旨

FOMCの今回の金融政策も大まかな言っていることも対してなにも変わっていないので、大半は議事録もカンファレンスもただ一点を除いては見る必要性のないものであった。
その一点とは準備預金量に関する発言で、パウエル議長の発言は
「準備預金は最低1.5兆ドル持っておくべきと考えている」
と発言した。

以前書いたような気もするが、FRBが2016年以降利上げをしていく中で、それと同時にFRBはバランスシートおよび準備預金を減らしてきていた。
しかしリーマン前と比べて大きく強化された金融規制強化も相まって銀行がマネーマーケットに供給する資金量が足りなくなっていき、担保資産を通じた資金獲得が難しくなっていた。
通説では準備預金は0.8兆ドルあれば十分と言われていたのが、実務的にはそうではないということがここで初めてわかったのだ。
去年9月にレポレートが突然ジャンプし、これが明らかに露呈したところからFRBはこのまま準備預金量を減らすことは今の段階では難しいと把握し、ここから姿勢を反転させマネーマーケットに資金を供給するためのレポオペレーションの拡大とTビルの購入に踏み切った。
この効果もあり、準備預金は1.4兆ドル台から1.6兆ドルまで増加し、また特に警戒されていた年末越えで資金供給を特に厚くしたことから資金はじゃぶじゃぶな状態になった。

ただ市場ではこのレポオペレーションとTビル購入による資産増加がいつ終わるのか、またその際に準備預金はどのように推移させるつもりなのかというのが焦点になってきていた。
そもそも前述したように一体準備預金はどれぐらいあれば適正なのかという議論が脇に置かれたまま資金供給が続いていた。
しかし、今回のFRBの会見で結局適切な量がわからなかったので、前回問題が起きたレベル以下には当面は準備預金は下回らないように金融政策を行うというのが名言されたのだ。
これにて当面FRBのバランスシート・準備預金は減らないということが確定したので、まず金融政策サイドからショックを受けるような2018年末型の下げはそこまで危惧する必要性はなくなったと考えていいと思う。

ただし、一方でじゃあ無節操にバランスシート拡大させるようにしてくれるかというとレポオペレーションは既に残高が減り始める中で一日あたりの量も300億ドルぐらいに減額、Tビル新規購入もやはり2Qぐらいまでに終わりそうという趣旨の発言も出ていることから、微増に留まることも見えてきた。
(そもそも今回の措置はワンタイムシングスとも言っていて、本当はあまりやりたくないと思っている)
ようはバランスシート拡大思惑相場は終わり、業績の良化が見られなければ認めてもらえない業績相場へ移行していく可能性が高まりつつある。
その端境期にはやはり主な投資プレイヤーの移行が存在するわけで、やはりその過程でリスク資産にいくらかの下押し圧力が全体的なファンダメンタルズの好転が見られるまでは生じるのではないかと個人的には考えている。
というわけでまだ当面は防御は固め、資金には余裕を持ちながら押し目を丁寧に探る展開になると思われる。

なお、日経新聞ではこの準備預金の量についてバランスシートと誤訳しており、そういう区別もついてない記者が記事書くとかなめとるんかと思う次第である。
 

アップルはまだ完全なコンシューマーセクターになっていないのに織り込みすぎ

アップル10-12月期、iPhone販売回復で堅調 新型肺炎の影響懸念

電機セクターとコンシューマーセクターの間。

<過去参考記事>

アップルのPERは15倍が正しいのか25倍が正しいのか


アップルの決算がiPhoneの販売好調とサービス売上高の成長で前年比9%増収増益ということで盛り上がっている。
一通り決算カンファレンスも聞いたが、まあ咎めるところもあんまりない決算ですなと聞いてて思った次第。
じゃあ株価はすんなり上がるかというと、かなりアップポテンシャルが乏しいレベルにまで到達した感じが足元では出始めてきている。
以前に記事でアップルはサービス売上高の増加に伴い、投資家からの評価が電機セクターからコンシューマーセクターに変わる途上におり、その過程がPERを押し上げていると説明した。
実際にアップルは去年ぐらいからこれでもかと様々なサービスを立ち上げてきているのが何よりの証拠だろう。
アップルの株価バリュエーションはすでにコンシューマーセクターレベルのPERである25倍に到達してしまった。

<アップルの株価チャート>
タイトルなし


一方で伸びているとはいえ、サービスからの売上高は12.7bilUSDであり1Qでいうと全体の13%、iPhoneがあまり売れない4-6月期を考えても20%ちょいぐらいであり、未だ売上の6割はiPhoneに依存している状態であり、スマートフォン市場が成熟していることを考えれば前年比9%増の売上高をいつまでも続けられるとは少し考えづらい。
以前にアップルについて評価したときは配当金の4.5倍の自社株買いをぶつけてくれると評価し、配当利回りと自社株買いを足すと9%の利回りがあると書いたが、株価が高騰したせいもありこの還元利回りは5.5%まで下がっている(配当1%+自社株買い4.5%)
つまりiPhoneの販売のぶれを一定程度加味して年間増益率5%と仮定し、そこに自己株買いが4.5%加わってEPSが9.5%の上昇が期待できる銘柄となっている。

コンシューマーセクターで許容されているPERが25倍だが、アップルは自社株買いパワーが普通の企業より大きいため、それを加味するとアップルが完全なコンシューマーセクターという認識をされるなら25+1.5-2%ぐらいなされてもいいかなという気がする。
しかし実質的にはそこが限界だと思う。
現在のPERはすでに25倍に到達したことは前述したとおりだ。
しかもまだサービスが占める売上高の割合は15%ぐらいしかない。
そうなればPERの押上分だけで上昇できる余地というのはあとわずか程度しかなく、そこから先は自力EPSの拡大が必要になることも想像しやすいと思う。
もちろん中長期投資という形で安いところから持っている人は高い還元率を背景にホールドを続けることは非常に合理的な判断だと思うが、ここから焦って全力エントリーというのは非常に馬鹿げた判断ではなかろうかと個人的には思っている。
 

(続報)中国のコロナウィルスの状況と相場への影響について

相場の下げをけん引しているので、引き続きフォロー中。

・感染者数はやはり数百人で留まるわけはなく、合計は既に数千人単位のケースになっている
・基本的な致死率は今のところ2-3%とやはりSARSと比べると低い。
・SARSの時は中国の症例数は隠蔽されているので、単純な発症者絶対数の比較はあまり意味がない。
・一般的には致死率が低いものの方が感染率は高まるので見た目の感染者数はSARSより多くなる可能性は否定できない。
・死亡者も高齢者であったり何かしらの持病を持っているケースが非常に多く、平常者がいきなり死ぬ可能性はそこまで高くない状態。
・中国で様々な行事がとりやめや延期になっており、短期的には明らかに中国の景気下押し要因
・中国国内で感染拡大を食い止めるために様々な移動制限がかけられ始めており、旅行客減だけでなく、サプライチェーンの混乱も見られる展開
・武漢内にある工場は操業延期が多数出ている。
・各国が武漢内から出られない自国民運送のためのチャーター機を飛ばす予定
・米国や欧州でもぽつぽつと感染例が出てきているが、SARSの時と比べると中国当局の対応が速いせいもあってか国外で爆発的に感染者数が増加しているという感じではまだなく、確認感染者数もまだ2桁台。
・中国国外では死者はまだゼロ。
・中国の公的病院は基本的にクオリティがクソなので、野戦病院チックになっているのは正直しょうがない。
・中国では交通制限、フィリピンなど一部強権的新興国では武漢からの来訪者送還などが行われているが、法治国家である先進国ではこうした強権的手法は準拠した法律が存在しないことから難しい。
・ネットでは日本語・英語・中国語問わず真実なのかどうかよくわからない情報が飛び交っており、信ぴょう性が薄い情報が大量投下されている。
・武漢市長が責任取らされている。
・中央政府は今回は情報共有に比較的オープンな姿勢を見せているが、どちらかというと地方政府が隠蔽を働いているといった感触がする。

相場の今のところの状況は以下の通り
・日本株はやはりアジア新興国株を売れない分米国株対比で大きめに下げている。
・中国本土株や香港株は春節明け5%下げぐらいが今のところのコンセンサス
・特にインバウンド絡み銘柄は厳しい下げになっており、これは至極当然な動き
・JREITはホテル銘柄が厳しい動きだが、指数全体でみると下げは軽微
・中国の武漢中心に多くの工場が休暇明け操業を延期せざるを得なくなっている
・米国株および米国ハイイールドも売り場を模索していた人達の理由付けになっておりそこそこの値幅を伴って売られている。
・バンクローンはまだ若干程度しか売られていない。
・米国10年債は1.6%と久々の低水準
・一方で為替は米ドル円がまだ底堅い(ただし一般的には債券より為替の方が間違うと言われている)
・クロスカレンシーは全般的に弱くて、ドル円だけ見ていると相場間違えそう。
・株と同様にド派手に売られているのがコモディティで原油・銅中心に結構きつい下げ方をしている。
・MCHIは結構出来高を伴って売られている
・地味にコモディティの売られ方が米株よりきつめ

こういった状況を見ていくと相場インパクトはSARS以下だがMERS以上ぐらいという認識で良いのではなかろうか?
そうなると調整期間は2-3ヵ月ぐらい見積もる必要性があると見ているが果たしてその判断は正しいのかどうかじっくり各資産の動きを見ながら考えていきたいと思う。
 

地銀はそもそも創造的なビジネスを行うように出来ていない

歴史的に見て役割が違うんだから、地銀に何かを働きかけるのが間違っている。

ここ数日真剣にマネーマーケットの勉強しなきゃなと思い、色々書籍を読んでいたのだが、その過程でそもそも地銀とはどういった存在だったのかというのが理解できた。

<今回読んだ書籍>

東京マネー・マーケット


レポ‐リバース市場―貸し債券市場の実務

一言で言えば、都銀が貸出超過となる中でその資金需要を埋めるために預金をかき集めて、マネーマーケットで都銀に資金を提供するために存在している。
そしてこれは日本だけでなく、米国もほぼ同じ構造であったことから、これはほぼ全世界的共通項であることは間違いないだろう。

具体的にいうと、第二次世界大戦後に世界の経済が復興していく中で、日本でも米国でもやはり人やモノが集まり、急速にインフラやビルディングの建設が必要な都市部に拠点を持つ銀行(日本ならいわゆる都銀、米国はシティやバンカメなどの超メガバンク)には貸出需要が旺盛にある中で、貸出原資となる預金が不足していた。
一方で地方の銀行は預金は集まるものの、都心部と比べればやはり借入需要が低いということもあり、預金が余っている状態になっていた。
そこで、ではどうやってメガバンクはどうにかして預金が余っているところから金を引っ張ってきたいという需要と、地方銀行は余資をいかに有利に運用して利益を稼ぐかという供給がマッチングし、そしてマネーマーケットが生まれた。
つまり、そもそも地方銀行は昔から伝統的に預金が余っている主体なのである。

時代は変わり、先進国の銀行は基本的にどこも資金がじゃぶじゃぶに余る時代となってしまった。
日本ではメガバンクでさえ預貸比率に非常に余裕があるわけで、そうなると元々メガバンクに資金を供給する役割であった地銀の貸し出し状況がもっとひどくなり、収益が低下することなんてまったくもって当たり前の話なのである。

だから本質的には地銀にいくら状況を改善しろといっても伝統的にそのような役割を担ってきてこなかったのだから無茶な話である。
本当にせっつくべきなのはメガバンクの方で、こちらに新しい貸し出し需要を生ませるようなイノベーションを求めなければいけないわけで、地銀にそれを求めるのははっきりいって筋違いにも程があると感じた。

そして大体こうした利益状況が苦しいところから、その余資をハイリスク投資に傾けていくという悪い風習があるため(中国の地銀は全くその状態にある)、個人的には金融庁の方向性は間違っていると思っている。
(まあ本人達もわかっているようには思えるが)

モーゲージ金利低下が足元の米国経済の底堅さを下支え

米住宅着工、13年ぶり高水準 利下げと好天候が後押し

最初統計が嘘くさいと思ってたけど、もろもろ照合していくと確かにそうだなと。

前に発表された米国住宅着工がいきなりジャンプして最初この数値ほんとなんかいなと思っていたが、色々状況を確認していくと確かにそうなんだろうなと感じている。

<米国住宅着工件数>
タイトルなし

この米国住宅着工の大幅増加は新規許可建設件数で動きとしては見えていたものなのかなと思われる。
一部はちょうど許可建設降りて一気に年末にまとまって完成したという案件があるものと思われる。
ただ個人的にもこのレベルで住宅着工件数が増加するとは思っていなかった。

<米国新規建設許可件数>
タイトルなし
 
ただものすごい盛り上がっているかというと中古住宅販売の動向を見ると、一旦下押ししたレベルから回復してきましたねというレベルかなあとも思える。
こういうデータを見ると、リーマン前と比べると住宅に勢いはないものの、業者が過剰在庫を抱えるのを恐れていて逆に過少在庫気味で推移しており、新規に建設してやろうという動きが見えているように個人的には思っている。

中古住宅販売:12月は約2年ぶり高水準、在庫難で価格も上昇

<米国中古住宅販売>
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これら米国住宅指標が好調なのは、やはりモーゲージ金利の低下が大きいと思われる。
特にFRBの利下げがもう合っても一回レベルというのがわかっているので、この過去最低レベルに低いモーゲージ金利調達するっきゃないという動きは妥当な動きだろう。
というよりFRBもこのデータ見てこれ以上金利を下げていったら本当にバブルが発生してアンコントローラブルになりかねないという感覚を持っているように思われる。
(今のところはまだそのレベルになく、会合においても言及はなされていないが)

<モーゲージ金利の推移>
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ちなみにこのモーゲージ金利の低下は単に住宅需要の押し上げに聞いているだけでなく、米国の小売り消費の盛り上げにも聞いている。
なぜなら米国で住宅を買っている人はこうした金利動向に敏感で、金利が低下してくればさっさと低金利に切り替えていく。
そしてそれで浮いたお金を平気で全部使うといった習慣がある。
これが昨今世界的に景気が低迷しているはずなのに米国の景気が維持できている要因である。

逆を言えば、次に相場が本当にがたつく時というのはモーゲージ金利が上昇していき、小売りも徐々に元気がなくなっていき、米国住宅販売状況も落ちてきた時ということも明白なので、このモーゲージ金利の動向はつぶさに観察していく必要性があるだろう。

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