村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

トランプ期待剥落で厳しいが、反知性主義に期待したい米国株

アメリカを動かす「反知性主義」の正体

トランプに期待する必要性なんてないと思う。

足下の米国株のグダリ具合は基本的にはトランプ政権に対する過剰な期待の剥落というのが現状だろうと思っており、市場参加者もトランプが株価をぶっ壊すのではないかという不安を非常に強く感じている。
しかし、個人的にはさほど状況は悲観的には見ていない。
なぜならそもそも米国というのは反知性主義の国であり、反エリートの国だからである。
(反知性主義については下記参考書籍参照)

【参考書籍】
反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―

実業世界では政府はいらないとさえ思っている節があり、これが仮想通貨という反政府主義的なものを生み出す土壌にもなったのでないかと思う。
少しでもエリートが自分達の意志にそぐわないか行動を取れば、それにすかさず臆さずに反発して是正に向かうダイナミズムのある国である。
なので、トランプが大暴れしていても、実際に自分達に利がないことがわかると猛烈にあちこちから反発が生まれ、最終的にそれに相当程度忖度する必要性が出てくるため、これが再度株価を高値に呼び込む呼び水になるだろうと思う。
これが足下トランプ政権が株価に悪影響を与えている一方で、中長期的に米国株に楽観的な理由である。

しかし、反知性主義的な側面が大きいからこそ気を付けたいことがある。
初期ならともかく一度株価がド天井を打ってしまって政府からの支援拡充しかもはや頼みの綱がない産業なんていうのはオワコンorまだ株として投資できるステージにない産業ということで、そこに対して少しでも収益機会があれば狙ってくるような米国の投資家がショートを仕掛けてこないわけがないので、この点は非常に気を付けたいところである。
実際にクリーンエネルギー関連はもろにそれを食らって、なんの復活の芽もないまま足下のぐだぐだ相場が直撃していて、より状況は悪化している。
(そういった意味では死んだセクターからすぐに人が抜けて有望セクターに集まるダイナミズムがあるという考え方もできる)

【ICLN(クリーンエネルギーETF)のチャート】
タイトルなし

さらに言うと、反知性主義であるからこそ民間セクターが暴走してバブル経済を作り出し、その後の大混乱を引き起こす国であるので、米国株が駄目な時はどちらかというと政府セクターではなく民間セクターに原因があると考えてもらえればよいと思う。

この辺は中国株と大きく違う点だ。
中国株の場合は政府の政策が全てで、そこと合致しなければ投資対象にならず、合致すれば中長期的にはどうなるかわからないが少なくとも一時的にバブルになるわけで、政策方向性が全てなのである。
これは経済が登り龍の時はよっぽど下手な政策が打たれなければ正当化できるが、一人当たりGDPが中所得国なり、さらに民間債務が対GDP比でとんでもない量になっていることを考慮すると、非効率度合いが高い政府部門が本当に中長期的に株価が高くなるような行動をし続けることができるのかは相当個人的には疑問だし、そんなことが今できる余裕があるなら過去15年中国株が一切上昇しないなんてことになるはずがない。

ということで、足下米国株下落・中国株上昇という2010年に見たデカップリング感のある動きとなっているが、個人的にこれが短期的ならともかく、中長期的に長続きするとは思っていないという結論になる。
中長期投資する上では常に、このようなそれぞれの国の文化特性を理解していないと、自信を持って保有継続ができないので、この辺は今後も気を付けていきたいと思う。

【過去参考記事】
それぞれの国の歴史・気候・立地・文化を無視した経済・投資議論は有害である理由


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複数年の景気刺激策にも関わらず中国のデフレは深刻化

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイナス

ノリとテンションでどこまでいけるのか?

ここもと中国株はDeepseek期待と中国政府の景気サポート策を好感して、香港株を中心に株価はそこそこ上昇して推移している。

【香港ハンセン指数のチャート】
タイトルなし


しかし、その裏で統計結果はより状況の深刻化を示している。
特に最大の問題は物価統計である。
去年の春節とのズレの影響もあるが、2月のCPIについて市場予想-0.4%に対して結果は-0.7%とデフレ具合はより深刻化している。
PPIも市場予想-2.1%に対して結果は-2.2%とPPIのマイナスは2年半連続となっていて、金融緩和と財政支出策を2022年からやっているわけだが、一切経済統計に効果が出ていないというのが現状だ。
結局中国経済の最大の問題は過剰供給体制にあり、それに対して需要が少なすぎるし、不動産バブル崩壊後に需要を盛り上げるだけのエンジンがやはり見つかっておらず、容易にデフレから脱却できていないということである。
これは下記過去記事で書いた通り、いかにデフレになっている経済を立て直すのが難しいかを如実に表しているものだと思う。

【過去参考記事】
なぜデフレをやっつけるのはインフレをやっつけるのより難しいのか?

そういった景気刺激策はほとんど効いていない中で、香港ハンセン指数と香港テック指数はDeepseek期待でテック銘柄が数多く入っていることもあり、ノリとテンションで上げているように見える。
しかし、このようなテック株が入っていない上に、無能が極まっている国営企業が中心の上海総合指数やCSI300は上値を追えていないのが現状である。
一応全人代で財政赤字目標対GDP比4%と拡張したが、たった1%と既存の延長線上の対策に過ぎず、こういったこともハイテクを含んでいない株価は上値を追えない状態となっている背景だろう。

【CSI300指数のチャート】
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さらに言えば、Deepseek期待も結局中国テックが国内需要で閉じ込められていることを考慮すると、中国景気自体の足腰がしっかりしていないといけないわけで、この上昇も基本的にこのデフレ深刻化を考えると持続性がどこまであるのかというのは相当疑問符だと思っている。

ワンチャン投資するとすればテックしかなく、それ以外の中国・香港株は相変わらず投資不適格であることには変わりないが、さらに問題はテック企業が儲かった場合に本当にその利益は習近平に収奪されないのかという話もあり、これらを投資すると短期はともかく中長期投資はやっぱりやりたくないというのが正直な感想だ。

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日本株アクティブファンドのFMの多くは金融業・銀行業のアンダーウェイトで沈没



「良い企業に投資する」という病気と呪縛。

よくメディアに出ている日本株ファンドマネージャーが報道で大口叩く割にはパフォーマンスが出てないということが良くある。
その一例として、よくメディアに出ている奥野氏が運用しているおおぶねJAPANはTOPIXに大幅劣後した上に、今月の運用レポートでTOPIXとの比較数値を開示しなくなったことで大口叩く権利あるんかお前となり、ネットで騒がれているという状態である。
このおおぶねジャパンのTOPIXに対するアンダーパフォームはほぼ超バリュー銘柄の保有が足りないことに加えて、特に足下で株価がずっと上昇基調で推移している金融・銀行業を6%程度しか保有していないことによるものがほとんどだと思われる。

【おおぶねJAPANの業種別組み入れ比率】
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しかし、この金融業・銀行業のアンダーウェイトで負けてるケースはおおぶねジャパンに限らず、相当多くの自由型日本株アクティブファンドにあてはまるものであり、今回はこれについてまとめていきたい。

よく日本株アクティブファンドマネージャーの多くは「良い企業に投資する」というお題目を掲げるが、これが逆に金融業・銀行業への投資を避けてしまう理由になってしまっている。
金融業(特に銀行業)というのはこの差別化というのが相当難しい業種かつ規模が正義みたいなところがあるし、リーマンショック以降2020年までリーマンショックの余波で銀行業冬の時代というのが長かった。
さらに言えば、日本株において金融業・銀行業は1990年以降の失われた30年で非常に低迷していたということもあり、その期間は金融業・銀行業をオーバーウェイトしていたら即負け的な相場であり、過去30年というと今現役でやっているファンドマネージャーのほとんどが金融業・銀行業をオーバーウェイトするという体験をしたことがない。
それに加えて、銀行・金融業は独自性よりもマクロファンダメンタルズで動く部分があまりにも大きく、これは「良い企業はマクロファンダメンタルズに左右されにくい株」という認識を持ってしまっている思考にたどり着いてしまう。
つまり、業種間で独自性ないしマクロファンダメンタルズにベットする必要性があるために、「良い企業に投資する」という対象からまず最初の時点で外してしまうのである。

そういったこともあり、日本株アクティブファンドの大半では金融業・銀行業をアンダーウェイトさせたままコロナ禍以降の相場に入っていってしまったわけであるが、皮肉にもそこで日本のデフレが終わりインフレ時代に突入する中で、日銀の緩やかな利上げも始まり、過去30年の呪縛から金融業・銀行業は解放された。
デフレが終わったことについては下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
デフレからインフレへなぜ世界は大きくレジームチェンジしたのか?

しかも、インフレに入ったことで資産持ち企業のバリュー相場が来てしまったことから、デフレ時代の「良い企業を買う」という発想から切り替えられていないファンドマネージャーほどインフレ時代に弱い銘柄しか持っていないという状況に入ってしまったまま、思考停止してしまっている。
その代表格がおおぶねジャパンであり、これがTOPIXにボロ負けしている理由である。

さらに加えると、あれだけ奥野氏はメディアにも出て書籍も出して大口を叩いているが、個人投資家の大企業の高配当な株を買おうという至極単純な投資戦略にさえボロ負けしているわけである。
これは高配当株が結局のところ金融・銀行業のウェイトが高いことから、こうした結果になっている。
(高配当株ETFの1577の3年間リターンは約65%+配当金10%ぐらいでおそらく75%ぐらい)

【1577のチャート】
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過去30年ずーっと死んでいたわけであるから、たった3~4年で金融・銀行業のアウトパフォームがそう簡単に終わるとは思えず、「デフレ時代の良い企業に投資するという呪縛・病気」から解放されない限り、「良い企業に投資する病」にかかってしまっているアクティブファンドは残念ながらあれだけディスっていたTOPIXにボロ負けする展開が続くだろうと思う。

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米国CCC格以下社債のスプレッドは区切り目に到達

Why Credit Spreads Could Begin to Widen

ジャンクの中のジャンク債はスプレッドが一定目途に到達していると思う。

相場が非常にグダっている中で、相場の炭鉱のカナリアと呼ばれているハイイールド債についても、ETFベースで見ると大して下落していないように見えるが、ベース金利の低下が含まれているということもあり、単純に国債に対する上乗せ金利だけ見ると拡大していて、リスクオフになっていることは明らかだ。

その中でも下記の一番下の格付けで、片足どころか両足レベルでデフォルト沼に陥りかけているCCC格以下の米国社債のスプレッドは一番相場が堅調だった700bpsから872bpsにまで拡大している。

【米国CCC格以下社債のスプレッド】
タイトルなし

https://fred.stlouisfed.org/series/BAMLH0A3HYC

この数値だけ見るといよいよ何かやばいことが起きているのではないかと思うかもしれないが、個人的にはバリュエーションがほぼ正当な位置に戻っただけではないかと思っている。
そう思う理由をうにゃうにゃ考えながら、以下のような思考回路で結論を作り出している。

個人的には米国景気が株価が根本的に下落するリセッションというのは、起こっているとすれば2024年7月だったと思っている。
あの時はまだFRBの利下げ姿勢が非常にあやふやだったところに雇用統計が崩れた・さらに日銀ショックも加わってスプレッドが不安定であったが、そこから米国景気が意外と崩れなかったこととトランプ期待もあり900bpsあったスプレッドは700bpsまで低下していったが、結局トランプに対する期待が剥がれたということで足下で872bpsまで拡大している。
これは概ね過剰期待が剥落したと考えるのが自然だろうと思う。
そしてこのスプレッドに到達する過程では、ハイイールド債券ETFのオプション市場で大量のヘッジ取引がなされている。

【HYGのオプション売買量】
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https://www.cboe.com/us/options/market_statistics/historical_data/

一般的にハイイールド債券のオプションはリターンが限定的な一方でテールリスクが生じた時の損失が無限なので、ハイイールド債券ETFのオプション取引はほとんどプットオプションの取引で構成されているわけで、過去1年ちょっとの間では相当大きい出来高がなっていることから、慌ててプットオプションを買ってポジションヘッジしている姿勢がうかがえる。
株式や国債などであれば先物があり、先物を売ってヘッジができるのだが、ハイイールド債券だと先物は存在しないのでCDS買うかETFのプットオプション買うかコールオプション売るかしか選択肢がないので、これは明らかなヘッジ売りだろうと思う。
そして、それはオプションが一定程度主導しているものであり、ヘッジ量も考えるとややパニック的な反応だと思っている。
なお、オプションによる相場の上下については下記過去記事を参考にしてもらいたい。

【過去参考記事】
株価が上にも下にも行き過ぎる現象をオプション市場から考察する

以上を踏まえると、相場のややパニック的なヘッジ売りと過剰期待バリュエーションがほぼ剥げた中で、ファンダメンタルズが大した悪化をしないorFRBがどうせ利下げしてサポートするでしょと考えるのであれば、相当相場はいいところまで下落して追加買いできそうな気がするし、自分的にはそのスタンスを持っている。
(ファンダメンタルズが変わってしまうと考えるのであれば、この限りでないことには注意したい)

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日本の中古住宅不動産市場動向(2025年2月)

http://www.reins.or.jp/library/2025.html

↑中古住宅不動産市場統計を出しているレインズデータライブラリーのHP

東京以外は在庫大売出し。

毎月レインズデータライブラリーで発行されている首都圏の中古住宅不動産市場動向の2025年1月データを今回は確認していきたいと思う。

まずは全体概況である。

【中古マンション市場の概況】
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全体概況だけ見ると成約数が大幅増加していて、成約価格はぼちぼちの上昇率なので、特段問題が起こっていないようにも見える。

しかし地域別でみるとその様相は大きく変わる。

【地域別の成約単価動向】
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地域別成約価格を見ると、東京区部以外は下落で明らかに弱いことがわかる。
そしてこれまでのトレンドを考えればデータを見るまでもないが、東京区部でも都心3区が激強で他はマイルド上昇という流れで、住宅ローン金利が上昇する中で資産性が低いところは価格の調整が入っているということである。

ただし成約数を見ると、どの地域も好調である。

【地域別の成約数】
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さらにこのデータが2月であることを考慮すると、在庫を抱えた業者が大売出し的に価格を引き下げたりキャンペーンを行ったりすることによって在庫捌きを優先させているように見えるというわけである。
特に東京区部以外は在庫水準などを見てもだぶついているわけで、その傾向が強く、おそらく3月もまだ期末であるし、さらに住宅ローン金利の改定が行われることを考慮すると同様な結果になる可能性は高いだろう。

【在庫水準】
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業者は在庫がだぶついていることがわかっているので、積極的な買い取り再販はしていないようで、とにかく在庫を捌くモードになっている。
そのため在庫自体は徐々に低下しており、一応メルトダウン的な価格下落というのは下記考え方をすると起こりにくいと思われる。

【過去参考記事】
住宅不動産価格の先行きを予想するために知っておくべき不動産需給サイクルとは?

東京以外の在庫も地域にもよるが、半分ぐらいの地域は在庫が徐々に捌け始めているということもあり、日銀の利上げが止まるまでは東京区部以外はだらだらした下げが続いてその後安定していくかなと考えている。
住宅を購入している人も金利が上がるといってもせいぜい変動金利1%という水準なので、2~3年より前に買っている人は変動金利借り入れでも既に給与がそれなりに上昇していてほとんど返済に困っていないことを考えれば、競売投げ売りメルトダウンというのも基本的には考えづらいだろう。

ということで、日銀の利上げ+グロス価格の高さと業者が在庫一掃セールをしていることもあり、東京区部以外の中古マンション価格は弱いという評価になっている。
このように東京以外の不動産価格が明らかに弱含みであることを見ると、もはや日銀の政策金利引き上げを積極的に行うことは難しいだろうと思われる。
現状市場では見えている利上げはあと2回で政策金利1%着地を見ているわけだが、それ以上はおそらく難しく、結局日銀の言うところの中立金利1~2.5%と言っている中での政策金利着地点は1%という下限で落ち着くだろうと思われる。

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