
グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践―質的研究への誘い
- 作者: 木下康仁
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2003/08
- メディア: 単行本
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グラウンデッド・セオリーの理論特性5項目:
- データに密着した分析から独自の説明概念をつくって、それらによって統合的に構成された説明力にすぐれた理論
- 継続的比較分析法による質的データを用いた研究で生成された理論
- 人間と人間の直接的なやりとり、すなわち社会的相互作用に関係し、人間行動の説明と予測に有効であって、同時に、研究者によってその意義が明確に確認されている研究テーマによって限定された範囲内における説明力にすぐれた理論
- 人間の行動、なかんずく他者との相互作用の変化を説明できる、言わば動態的説明理論
- 実践的活用を促す理論
グラウンデッド・セオリーの内容特性4項目:
- 現実への適合性(fitness)
- 理解しやすさ(understanding)
- 一般性(generality)
- コントロール(control)
修正版M-GTAの7特性:
- 上記5+4項目を満たす。
- データの切片化をしない。
- データの範囲、分析テーマの設定、理論的飽和化の判断において方法論的限定を行うことで、分析過程を制御する。
- データに密着した分析をするためのコーディング法を独自に開発した。(分析ワークシート)
- 「研究する人間」の視点を重視する。
- 面接型調査に有効に活用できる。
- 解釈の多重的同時並行性を特徴とする。推測的、包括的思考の同時並行により理論的サンプリングと継続的比較分析を実行しやすくしている。
何人くらいの面接データがあれば一応ベース・データとなるかという問題である。だいたいの目処としては10例から20例位であろう。
データを切片化するのではなく、つまり、データの中に表現されているコンテキストを破壊するのではなく、むしろコンテキストの理解を重視する。そこに反映されている人間の認識、行為、感情、そして、それらに関係している要因や条件などをデータにそくしてていねいに検討していく。
分析結果の完成度についての判断ができ論文で発表すべき内容が確認されたら、論文執筆に入る前にストーリーラインを書く。これは、分析結果を生成した概念とカテゴリーだけで簡潔に文章化することであり、必ず論文を書き始める前に行う。
同著者の1999年の本『グラウンデッド・セオリー・アプローチ』に続くものだが、こちらの方が具体的で、分析ワークシートの例もあり、またGTAによる論文の書き方も説明されているので、こちらを先に読んだ方が良いかもしれない。
インタビューデータを切片化しコーディングしたら、文脈やストーリーはずたずたにされるわけで、意味ないやん、と思っていたけれども、やはり文脈は重要なんだ(というかそれ以外に質的データ分析をする意味があるのか)。これで安心して使ってみることができる。
この本では個人インタビューの例が中心だが、フォーカス・グループ・インタビューにも使えるのではないかなと思って、amazonを検索してみたら、Sharon Vaughn他『グループ・インタビューの技法』(1999)という本が出ていた。「 第2章 なぜ教育・心理学研究でフォーカス・グループ・インタビューを適用するのか」というような章もあり、読んでみるつもり。