日本型雇用について
社労士試験の勉強、その後の労働関係の本を読む中で、雇用についての理解が深まってきました。
学習の成果として、日本型雇用について語ってみたいと思います。
日本の雇用の特徴として、メンバーシップ型が1番のキーワードになります。
これによって、全てが説明できると言っても過言ではありません。
メンバーシップ型は、まず人があって、そこに仕事を当てはめていく。
これと対局なのが世界の主流であるジョブ型で、まず仕事があって、そこに人を当てはめていく。
メンバーシップ型の最たる例が、新卒一括採用。
専門的な能力のない若者を、職務を限定せずに卒業と同時に採用します。
そして文学部卒で、簿記のぼの字も分からない人が経理部に配属されて、仕事をしながら経理の知識を身に付けていく。
対するジョブ型では、明確に経理のポジションで募集・採用します。
採用されるためには、一定の知識・資格・経験があることが前提。
メンバーシップ型なのか、ジョブ型なのかによって、働く環境は大きく違ってきます。
まずは解雇。
日本を含め、多くの国では解雇規制があり、合理的な理由のない解雇はできません。
しかし、この合理的な理由の解釈が異なってきます。
ジョブ型であれば、仕事を明確にして雇用されているので、会社からその仕事が無くなるとか、その仕事を遂行する能力がないことが分かれば、解雇のための合理的な理由になります。
しかしメンバーシップ型であれば、職務を限定している訳ではないので、やっている仕事がなくなったり、仕事ができなくても、病気や障害で労働能力が落ちても、別の仕事を与えないといけません。
解雇のハードルは上がります。
続いて採用。
ジョブ型だと、職務が明確で知識・資格・経験があるとの基準で分かりやすい。
メンバーシップ型だと、どんな仕事をさせるか分からないので基準は曖昧になるし、1度雇ったら解雇も難しいので変な人は入れたくありません。
よって、採用の自由は広範囲に認められています。
性別や障害等の一定の制限はあるものの、雇入れ段階ではどんな選別をしても自由。
変な宗教に入っているから採用しないとか、顔が可愛い・イケメンだから採用しても問題ありません。
さらに賃金。
ジョブ型は、仕事ありきなので、この職務はいくらと仕事に値段が付いています。
一方でメンバーシップ型は、何をしてもらうか分からず、仕事に値段を付けてしまうと会社都合で命じた人事異動で給与が下がってしまう事態が生じます。
これは現実的ではないので、大卒新人はいくら、年にいくら上がる、係長になればいくらみたいに、人に値段を付けることになります。
自然と年功序列になる。
その他、メンバーシップ型のために解雇が厳しい裏返しで、異動や残業は会社の権限が強い。
そこは自由にさせてあげないと、会社が成り立たなくなります。
畑違いの部署や転居を伴う異動、出向も労働者は受け入れないといけません。
指示されれば、残業も断れません。
多少家庭の事情があっても、これらは会社の言い分が通ります。
拒否すれば解雇自由になり得ます。
メンバーシップ型だと、最初は業務知識がないことが前提で、教育してもらえるとは言え、仕事なので素人でも一定の責任があるのは精神的にしんどい。
また、会社都合で全国どこに飛ばされても文句は言えないし、長時間の残業にも耐えないといけません。
その代わりに、身分は安定して、生活設計がし易いメリットがあります。
ジョブ型では、職務が明確で、会社都合で専門外のことを命じられることもないので、仕事はやりやすい。
しかし、一定の知識・経験を身につけるまでは採用されにくく、若者の失業率が高くなる傾向にあります。
一長一短ありますが、仕事がより専門化・複雑化している世の中では、メンバーシップ型で素人を教育していくことは無理があるんだろうと思います。
会社内で一人前になるまで教育するのは非効率ですし、かと言って半人前で任せれば様々な問題が起こるのは不可避。
日本もジョブ型にシフトしていく流れになってきています。
- 関連記事
-
- 名刺交換が尋常じゃなく嫌い
- 日本型雇用について
- 社労士として初仕事