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食虫植物ウツボカズラが動物たちの水洗トイレに!持ちつ持たれつの共存関係の秘密とは

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 食虫植物のウツボカズラは、その袋の部分に消化液の混じった水が溜まっていて、落ちた虫などを消化・吸収して栄養分にしてしまう。

 だが最近、ボルネオ島の高地で発見されたウツボカズラは、虫だけではなく動物の排泄物からも栄養分を吸収している種があることがわかってきた。

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 つまり、あの壺のような構造は、虫をとらえる罠としての機能だけではなく、動物たちのトイレにもなっているということらしいのだ。

動物を招いてトイレを提供する食虫植物

 ゆっくりとフタを開けていくウツボカズラ。日本でよく見る自動でフタが開くウォシュレット式のトイレみたいだ。

 実はこれ、トイレみたいに見えるというだけじゃなくて、実際に動物たちのトイレになっているようなんだよ。

 このウツボカズラのフタからは甘い汁がにじみ出ている。それを目当てに、毎日朝になるとこのツパイ(トガリネズミ、キネズミ)の仲間がやって来て、フタの裏をペロペロ舐めるんだ。

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 汁を全て舐めてしまうと、ツパイは代わりにあるモノを置き土産にしていく。ウツボカズラの壺の上で踏ん張って……ああ、スッキリした!

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 そう、ツパイはウツボカズラを朝食後のトイレにしているのだ。

 雨が降ると天然の水洗式トイレが機能して、ツパイの排泄物は壺の中に落ちていく。ウツボカズラはこの排泄物を消化・吸収して、栄養素として取り込んでいるんだ。

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虫だけを食べる種に比べて2倍の栄養を保持

 この「糞食」のウツボカズラは2009年、オーストラリアのカーティン大学の研究チームによって確認された。その後の観察で、コウモリや鳥類も同様にトイレにしていることが判明したそうだ。

 研究チームは、その後ウツボカズラの組織サンプルを採取して、窒素と炭素の含有量を比較した。その結果、昆虫食をする通常のウツボカズラより、糞食のウツボカズラの方が、窒素15の含有量が2倍以上多いことが判明した。

 このウツボカズラが見られるのは、今のところ、熱帯でも標高の高い山頂付近に限られているという。

標高2,200m以上の熱帯の山頂では、餌になる昆虫が少ないのです。

そこでこのウツボカズラは、ツパイの糞のような、より価値の高い窒素源をより少しずつ集めて保持することで、栄養を最大限得られるようにしているのでしょう

 見た目もまさにトイレなら、その実態も紛れもなくトイレだったこのウツボカズラ。

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 現在この糞食のウツボカズラは何種類か確認されているそうだが、もしかするとさらに大きな生き物にオヤツとトイレを提供する種もいつか現れるかもしれない。

 自然が生み出した奇跡のようなトイレシステム。水洗トイレとかウォシュレットとか、人間が騒いでいる影でこっそり実現していたわけだ。やはり自然界侮りがたし。

 トイレに命をかけているとか言われる我々日本人の今後のトイレライフにも、何かヒントをくれそうな気がするようなしないような気がするんだよ。

 この研究は『Annals of Botany』に掲載された。

References:Study: Some Tropical Pitcher Plants Capture Mammal Droppings / written by ruichan/ edited by parumo

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この記事へのコメント、38件

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  1. >トイレに命をかけているとか言われる我々日本人の今後のトイレライフ

    聞いたことないな

    1. >>2
      現代だと言われるのはウォッシュレットとかかな?
      発明自体は海外の医療用だけどそれを一般化し、一般家庭に幅広く普及しているとかおかしな話よ

    2. >>2
      外人が日本に来て
      日本のトイレすげーって驚く話が
      よくあるじゃん

  2. ファンタジー系物語に植物でできたトイレとか登場できるかも。
    自然ってすごい。

  3. 獲物狙って口開けてるところにブリブリって堪らんな
    泣いてるよウツドン

  4. 朝食が便器なのは人間には辛いね
    けど犬猫含めた動物は大丈夫そうだね
    フランスの太陽王もご飯大好きだったけど歯を全部抜いてしまってから常におまるに乗ってたとか
    そう、王者になれば朝食が便器の上でも気にしないのかもしれない

    だめだ
    どんなに考えても応用が浮かばないwキャンプで使い捨てトイレ?公園で緑のトイレ??

  5. 自分を肥溜めにするのか…何という効率性
    厳しい環境に居る生物は本当に逞しいな

    1. >>8
      消化管って口から肛門までつながってるから、
      食道や胃が動き出すと、順番に中身をしごき出すように下流まで動く
      →食べると大のほうが出やすくなるシステムになってるんだわ
      (裏を返すと便秘の人は食欲なくなりがち、出口が滞ると上流も動きが鈍くなるので)

  6. 何かのライフハックでウツボカズラ系食虫植物の壺の中の水分で喉の渇きを潤すというのが紹介されてたが、甘い匂いのするトイレの水か・・・。

    1. >>9
      ライフハックでウツボカズラの水分を飲むのはあくまで「フタが開く前の未開封の水」を飲むのであって
      フタが開いてるものは絶対口つけちゃいけないって教えとセットだったはず

  7. 動物は排泄物で存在がバレることになるから
    確かにトイレあると生存に有利だな

    1. >>14
      ああいう小さな容器+液体の中に排泄する方が
      匂いが広がり難い=敵に見つかり難い、
      みたいなメリットはありそう。

      1. >>16
        現代っ子って洋式しかトイレがないから、水に包まれてないウンチがどれだけ臭いか知らない節がある気がするわw

    2. >>14

      甘い汁をペロペロしたついでに朝起きたすぐのトイレを済ませてるんじゃね

    3. >>14
      現地はツパイの餌になる果物類が少ないから代わりにウツボカズラの蜜を舐めに来る。
      ウツボカズラとしては餌になる昆虫が少ない環境でフンを集めた方が虫を捕るより効率が良い。そのためにこのウツボカズラはツパイの好みの蜜を出して、ツパイが蜜を舐めやすい形の袋を作って、ツパイが見つけやすい波長の光を反射する。
      こんな感じのWin-Winな関係。

  8. 動物に気持ちよく用を足して貰える方が
    栄養を多く手に入れられるとなると、
    ウツボカズラがさらにトイレっぽい形に
    進化していく可能性があるということかな。
    いつかウォシュレット機能とか獲得したら素敵。

    1. >>17
      あれはただクサイだけや…花だけクサイと思いきやツルや葉までしっかりクサイ
      昔の人は重宝してたみたいやけどね

  9. 排泄物を隠す必要が無いから小動物にとっても有利なんだな
    上手くできてるわ…

  10. おもしろい共存だね
    根っこからの吸収ではなくて本当に便器として使ってるのか

  11. 草刈り作業後、何か臭いなぁと周りを見渡したが・・ワイやった

  12. 昭和の時代はおしっことかをトイレからくみ取って野菜の肥料にしていたけど
    植物界で同じようなことしてるとは・・・
    しかもただのトイレになってるんじゃなくて蜜でおびき寄せるとか

  13. ウツボカズラの内部専門に住んでいるクモもいるらしい。蜜に惹かれてやってきた虫を捕らえて糞をするクモ。
    ウツボカズラにしてみると獲物を横取りされているように見えるが、虫を自前で消化して得られる栄養とそれに必要な消化液を作るより、クモの糞から得られる栄養と必要な消化液の少なさの方がコストパフォーマンスがよいとか。

  14. 更にそのフンの匂いで虫をおびき寄せる、まで計算のうち?

  15. annalsで年代記・年報・論文集って意味なんだね。ひとつ勉強になった。
    トイレの話だけに、一瞬「植物の肛門」って書いてあるのかと思ってしまった…

  16. ツパイってあの酔っぱらいの?
    ウツボカズラの蜜では酔わないのかな

  17. 植物園とかでオオタニワタリの真ん中に牛糞とか放り込まれてたから、動物のフンは植物にとって魅力的な栄養源なんだろうな。

  18. 江戸では家庭の便所の排泄物を近隣の農家が買っていたから、似たような関係だな。

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