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HOME   »   原発・放射能  »  「ある皇族の血筋の方」が書いた脱原発パブコメの文章
       
内閣府国家戦略室は8月15日、2030年の原発比率をめぐり、政府が示した三つの選択肢への意見公募(パブリックコメント)を行った結果、寄せられパブコメの総数が計8万9124通に上ったことを発表しました。

その中の一通をご紹介したいと思います。
その一通は、「皇族の血筋にある方」のパブリックコメントです。

「皇族の血筋を引いている」ということから、やはりどうしても一定の制約が伴うと思うのですが、その中でも、こうした明確な意見を述べておられるということを、みなさんにも知っていただくために、ここにご紹介します。

長文ですが、全部がパブリック・コメントです。

《ある皇族の血筋にある方のパブリック・コメント》
--------------------------------------------

「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する意見

与えられた選択肢のどれでもなく、覚悟を持って、日本国内すべての原子力発電所を即刻全廃にする大目標を立て、最長5年以内に完全な脱原発(全基廃炉)を達成する、という決定を希望します。
                                     ○○○○○○○   


まず、今回のような、国の根幹に関わる重要な事柄について、広く国民の意見を聞き、政策に反映していこうとする試みは、パターナリズムが強い日本では、歴史始まって以来のことと思います。

今回の試みに心から敬意を表したいと思います。

(ただ、議論が深まれば深まるほど、今後社会の変革を進めていくとともに、生じるであろうさまざまな痛みに対して、より良い社会をつくるために、どういう理由でそれらの痛みを受け入れていくことが必要なのか、国民の間に理解も生まれるし、覚悟もできると思うのですが、現在のところ、PRが足りないのか、充分な議論がなされていないように見えるのが残念です)

どうしても3つの選択肢の中から選ばなくてはならないとするならば、「0%」の選択しかあり得ません。

私としては、与えられた選択肢ではなく、覚悟を持って、日本国内すべての原子力発電所を即刻全廃にする、という大目標を立て、この大目標は何があっても決して変更しない、としながら、やむにやまれぬ事情があり、どうしても他の方法を取ることができない場合にのみ、限定的に厳選したごく少数の原発を細心の注意で稼動させ、1~2年でそれらもすべて停止廃炉にする、どんなに遅れても最長5年以内に完全な脱原発(全基廃炉)を達成する、という決定を希望します)。

【理 由】

原発を継続するメリットとデメリット、廃止するメリットとデメリットを考える時、答えは自ずと出ると考えます。

原発を継続するメリット

「原発を継続するメリット」は、

・当面、電力会社の経営が安定すること。
・原発への巨額の投資とランニングコストに対し、当面の利益を維持しながら、投資に対する減価償却ができること。
・電力会社に資本を提供している大手金融機関の経営にダメージを与えなくて済むこと。
・当面は、産業構造の転換のための努力を必要とせず、関連産業ともに雇用を維持できること。
・核燃料サイクル会社の破たん処理をしなくて済み、これに巨額な資金を出している電力会社の赤字幅を抑えることができること。
・立地自治体の収入が維持できる、

などであると思われます。

一方、原発を廃止すると、火力発電の燃料費が増大し、それにともなって二酸化炭素排出も増加する。また、貿易赤字が生じる可能性もある。


「継続するメリット」は、主にCO2の排出量と火力発電用の燃料費増大を抑制できることですが、それ以外のメリットは、電力会社や大手金融機関などの既存の組織やシステムとその利益関係が維持できること、また、システムの変革によって社会に生じる一定の不安定要因や痛みを回避できることなどです。

しかし、それは、日本のエネルギーの本質的な問題を先送りするに過ぎません。

まず、CO2については、現在大きな割合を占めている石炭火力を効率の良い新型の天然ガス発電に切り替えれば、排出量の増加を抑えることができます。

一方、「石油生産地域は政情不安定なので、エネルギーの安全供給のためには原発維持の選択肢は必要だ」という主張がありますが、石油価格の上昇が直撃するのは、石油の用途の大部分を占める運輸用燃料と石油精製産品であり、全体の1割 あるかないかの発電のために、これを原発維持の理由とするのは、論理のすり替えに他なりません。

問題は、現在、すでに火力発電の燃料のほぼ半分を占めており、石炭からシフトして更に割合を増やすことが望ましい天然ガスですが、これは、液化して運んでこなくてはならない手間を勘案しても、非常に高い価格で日本は購入しているようです。

天然ガス購入については長期契約が結ばれ、総括原価方式のために、購入価格の引き下げ交渉の努力がないがしろにされており、その上、「安定確保・安定供給」を最重要視するあまり、かえって天然ガス輸出国に足元を見られる結果となり、富の海外への流出を許すことにつながっています。

現在、原発を停止しているために、火力に必要な燃料費増が、富の外国への流出を招く結果となっているのは短期的な事象であって、本質的な問題は、富が流出しても関係会社は困らないシステムが維持されていることにあると考えられます。

そのため、原発の維持のために必要となる電源立地促進付加金などの諸経費を含めて、実は以前から他の 国々と比べて相当に高い電気代を支払うことを余儀なくされているのは、日本の経済の屋台骨を支えながらも、しかし発言力の小さい中小企業(と家庭)です。

原発の廃止が与える影響は、もちろん、①電力会社と必要な資金需要を支えている大手金融機関を始めとして、原子炉メーカー、大手ゼネコンなどの、いわゆる原子力関連産業に対するものと、これ以外の、②製造業をはじめとする諸企業に対するものとを分けて考えるべきと考えます。

特に、②について言えば、電力が安定して、それも確実に供給されること、および、電力料金が不合理に上がらないこと、のふたつが満たされていればよいと思います。
つまり、 しっかりと火力でまかなうことができればよい。

最大の問題は燃料費ですが、短期的には燃料費の増大は避けられず、電力会社、場合によっては電力消費者の痛みを伴う可能性もあるものの、上記に述べたような天然ガスを高い料金で買わされるような構造を残しておく方が、中長期的には日本にとってマイナスだと思います。

完全なる発送電の分離、全国規模でのフレキシブルな送電網の整備、その他、徹底した電力システムの改革、総括原価方式の見直しなどで、本来、あるべき企業努力を受け止め、代替としての強力な自然エネルギーの普及などで、輸出国に対し価格交渉力を強める。

一方、短期的には、電力会社との価格交渉力においては、劣勢に置かれている中小の企業に対して、税制上の優遇をするなど、別途、有効な補助を行い、中小企業を守っていく方法はないのか。

他方、①のグループについては、電力会社の社会的責任という観点から、その体質改善は不可避でしょう。

 大手金融機関が、融資先としてはリスクのもっとも少ない電力会社に高い金利で資金を出していたのも、電力会社が高い金利で金融機関から資金を調達していても堅実な利益を上げることができたのも、それらの金利負担分すべてが原価に含められる総括原価方式によるためです。

金融機関の社会的使命のひとつとして、懸命に努力している企業を可能な限り支えていくというものがあります。
①のグループには、その責任の大きさから、社会の変革にともなう痛みを引き受けていただくのが本来の在り方だと考えます。

原発関連の従来の雇用は、他の分野、特に環境関連の雇用創出に強力にシフトさせていくことが大切です。

原発立地自治体については、電源三法を廃止し、「廃炉交付金」のようなものを充分に充実させ、廃炉研究や、「原子炉を安全に閉じていく」産業に誇りを持っていただけるように、社会への理解を促進することが大切だと思います。

廃炉プロセスに関しては、またひとつの大きなテーマであり、今後の日本の世界的な競争力の源になりうるため、長期的に見て有望で大切な分野だと思います。

日本が、社会を根本的に転換することに力を注ぎ、自然エネルギーの普及に成功すればするほど、同時にこの廃炉に関する研究とノウハウは国際的な競争力を獲得していくはずです。

世界的に、原子力から自然エネルギーへの転換を促す流れが加速し、(これは既に始まっているようです)こうした市場が形成されるからです。

以上のように、原発を廃止するデメリットは、基本的に「当面の」痛みによるものであり、本気になって努力、工夫すれば乗り越えられるものです。
しかし、それには相当な努力を必要とすることは間違いのないことではありますが。

原発を継続するデメリット

なにより、事故の確率をゼロにはできない、ということ。

(どんなに安全設計をしたとしても、構造物の物理的な欠陥、起こりうる事象の見落とし、考慮不充分の可能性はゼロにはできない。
このほか、人間社会や組織の構造的な欠陥-人間の認知、行動の欠陥、限界-は常にありうる。

今回の事故では、日本的な認知、思考の欠陥が露呈した。これは、心理学的な問題である。
このことは充分に議論されておらず、このような「思考の性向」は、すぐに改善したり変わったりするものではない)

ひとたび事故が起きた時の悪影響それによってもたらされる苦しみ、悲しみは計り知れないのです。

今回の事故の経済的なロスは、計量不可能なほど巨大です。
「原発は必要不可欠だ」と主張する人たち中には、つい経済を優先しがちになる人々がいますが、それでは、こうした人々のうち一人としてこれを責任を持って計算しようとした人がいないのは理解に苦しむところです。

原子力発電以外の分野での人間の営為の中にも、必ず失敗や事故のリスクはあるが、基本的に燃焼反応に帰結する破壊現象や、力学的破壊のリスクと、核エネルギーのリスクは本質的に異なるはずです。

更に、地震の活動期に入っていると指摘されてもいるのです。
つまり、現実に国が滅びる可能性がある、ということ。

「原発の廃止・存続」の意思決定に加わることのできない、“まだ見ぬ未来の世代”に放射性廃棄物を残し、さらに、その量を増やし続けてもいい、あるいは、そうしても仕方がないという論理は、そうした経済を優先する人々が重視する経済合理性と倫理性との間に整合性を取る努力を放棄してしまったことを意味するのです。

中止するメリット

継続するデメリットを(段階的ではあっても、なんとか少しずつ)なくしていくことができる。(これが最大のメリット。)

このほかに、以下のような、これと並ぶほど重要なメリットがあると考えています。

世界は、人口増加が止まりません。

新興国が経済発展を続け、その状態を継続すれば、あらゆる面で地球の資源は枯渇していきます。
新興国の食料需要、エネルギー需要は増大し続け、グローバルに足りなくなるために、やがては奪い合いになります。

今までは先進国が金融、経済を取り仕切るかたちになった来ましたが、これから、経済発展により力をつけた新興国、資源保有国が発言力を増していくと思われます。

両者の間の広い意味におけるパワーバランスがじわじわと逆転していく時、日本は、今までのような条件で果たして資源を売ってもらえるのか。

今までは、日本の最大の強みである工業生産力で国力を維持してきましたが、これも激しい競争にさらされて疲弊し、多くの分野で、その競争力が少しずつ弱まっています。

この10年の凋落は非常に深刻で、国民はこのことについて、まだ十分な実感を持って受け止めていないのでは、とする指摘もあります。

力をつけた資源国からは足元を見られ、日本の目覚しい戦後復興・発展を成長モデルにして追い上げてきた新興国には、工業生産と輸出競争力で追い上げられ、このままでは、どちらの方向からも挟まれるようにして、日本のあらゆる面での停滞が現実的なものとなってきました。

つまり、今までの古い硬直化した経済発展モデルは、まったく機能しない世界になってきているのです。

グローバルなエネルギー・食糧危機がやって来るとすれば、いち早くそれに対応した社会を構築したところが、今後、世界に対して大きな役割を果たすことができるということになるはずです。

エネルギー危機に対して、原子力エネルギーを増産することで対処する方法を取り、とにかく電力を供給しまくる、つまり大量生産と大量消費の経済発展モデルを、これからも踏襲し、維持するという発想では、その過程で生じるさまざまなリスクを度外視して、純粋に経済的な分析、リソースとして考えたとしても、地球は完全にもたなくなります。

現在の危機に対しては、まったく違う社会を作る、という発想を持たない限り対応不可能です。

原発廃止へシフトすることと並行して、強力な省エネと環境技術、それに対応した社会インフラを徹底的に構築していくことが大切です。
地球環境を維持する持続可能な社会、文明をつくる、ということは、実は人類の未来にとって圧倒的に重要で避けて通れない道です。(避けていたら地球は、やがて壊れるでしょう)

日本が先んじて原発廃止後の持続可能な社会をつくることに成功すれば、環境規制や資源の使い方に関する国際的な取り決めや誘導において裏付けのある説得力持つことになり、国際交渉の場での発言権が増していきます。
日本はそのためのイニシアティブを取りやすくなるはずです。

厳しい環境規制や資源活用法の世界的徹底の実現は、そのための技術や社会インフラをもし日本が達成していれば、特に日本が利己的な発想を持たなくとも、他とは比肩できない独創的な強みを獲得することになり、自ずと日本の国益につながっていくでしょう。

それが、結果的に地球を守り、世界への貢献となるでしょう。
今、日本は大変な危機の最中に置かれていますが、勇気を持ってパラダイムの転換を図ることで、日本が新しい文明の黎明を切り開くことができるかも知れません。

これからは、父性的な闘争に明け暮れ、いたずらに疲弊することより、ともに育む母性的な社会の構築が望まれているのです。
大震災以来、人々の価値観、生き方、幸福に対する考え方も、深いところで変わっ てきていると感じます。

日本は、現在危機の状態を脱していませんが、不幸な出来事から生み出された日本の危機対応能力が、私たちの地球をこれ以上、痛めつけないことに役立つかもしれません。

せめて、「今回の危機は、このことに気付かせてくれたのかもしれない」と考えることは、あまりにも薄情で酷な言い方でしょうか。
仮に、そうとでも考えなければ、この耐え難い不幸を私たちが体験させられている理由の、たったひとつさえ説明することさえできないのです。

日本の社会を根本的に構造転換させ、省エネを飛躍的に進化させ、環境に適応した洗練された強い社会に変えていくきっかけをつくる、ということが、原発を廃止していくもうひとつの大きなメリットです。

短期間に一挙に脱原発をしてしまう、という、一見無謀に見える選択を支持する理由は、以下のふたつです。

1) 老朽化した原発や、ほぼ確実に大地震が来るといわれているたいへん危険な立地の原発はもちろんのこと、そうではないものも、直下型の地震動で想定を超えた現象が起きる可能性は否定できない。
相当規模の地震は、いつ、どこで起きるかわからない。
また、地震以外の自然災害の可能性もある。危険は常に四六時中ある。

2)原発からの撤退は、かなり強行に、速やかにやらないと、ますます困難になるかもしれない。
巨大な利権が絡み合い、依存症状態となっているからには、強力な指導的原理が必要。
これは、上記1) と同じくらい重要な問題と感じています。

原子力産業には、さまざまな分野、多方面の人たちの利害が絡んでおり、現在の構造の中核と周辺を固めているので、いたずらに長引かせることは民意と明らかに逆行することになり、とりもなおさず抵抗勢力の巻き返しを許すことになります。

さまざまな立場の人たちの利害のぶつかりあいを超えた視点で、全体にとっての「利」とは何かを考え、道徳的な(社会正義に基づく)評価を用いて社会を再構築していくための指導的原理とは何かについて議論し、これに基づいてものごとを決めていく、という伝統 (習慣)が日本では培われてこなかったようです。

従って、一度動き出し(利害の形成された)、それが今日まで来ている以上、私たちの「正しさの指標」をもちいて今までの軌道を修正することは難しいでしょう。新しい時代の指導的原理とは何か、真摯な議論を重ねる必要があります。

最後に、今回は「原発依存をどうするか」といった国民による議論の俎上には乗せられていませんが、核燃料サイクル事業は、すべて終了させ、使用済み核燃料はすべて直接処分とすることを強く望みます。



(おわり)


管理人の説明:

このパブコメ-「ある皇族の血筋の方の意見」は、9月の頭に、「ある方」を挟んで、私のところにいただいたものです。
この内容の公開をお願いをしたところ、快諾いただきました。

その後、二度、三度、「ある方」を介してメール交換させていただいていたところ、国際的な問題が次々と持ち上がったため、さまざまな事情を勘案した上で、この日まで公開を控えておりました。

この「ある皇族の血筋の方」が公開を許諾する際の条件は、「あくまでも、私個人の考えです」ということをお断りすることでした。

ただ、皇族の血筋にある方も、私たちと同じように「脱原発を明確に望んでいる」ということを世間の人たちに知っていただき、また、実際に制限のある中、このような動きをされているということを知っていただくのは、とてもいいことだと思います。

これを書かれた方は、ある専門分野のエキスパートです。私たちと同じように市井の中で生活されています。ご存知の方も多いことと思われます。

ただ、この件についてお問い合わせをいただいても一切お答えできません。また、ご質問のメールにも一切返信できません。
管理人としても辛いところですが、諸般の事情を考えると、それが、いちばんいいと思うからです。

ここでは、一切のレビューを控え、ただ、「皇族の血筋にある方」も私たちと同様、可能な限り早い時期に「原発ゼロ」が達成されることを願っているという事実があることだけをお伝えしたいと思います。







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