昭和の根っこをつかまえに 第3回「地の塩の箱」の巻 北尾トロ 地の塩運動って何だ? 総武線・錦糸町駅の改札脇。ここに「地の塩の箱」と名付けられた手作りの募金箱がある。周囲から浮きまくり、妙なオーラを発する、古ぼけた黄色い箱だ。 駅に募金箱というのは見たことがないし「地の塩の箱」というのも聞き覚えがない。たしか「地の塩」は聖書の一節にある文句だから、どこかの宗教団体が設置したのだろうか。よくわからない。 それにしてもヘンな箱である。何かの目的のために金を集める募金箱なのに、横に大きな穴があいているのだ。もちろんカギもない。 箱に差し込まれていた「読者の皆様へ」と書かれた通信文を読むと、困っている人が自由になかの金を取って使うことを目指した「地の塩運動」の募金箱らしい。つまり、余裕のある人が、ない人のためにいくばくかの金を寄付し、それを横の穴から勝手に取って使うことを目的として設置されたものな