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terasawat.hatenablog.jp
お断り:この記事は,1年前のほぼ同名記事を,ごく一部に加筆したうえで,再掲したものです。 怪しい英語力ランキングの季節 11月は,英語教育関係者にとって頭が痛いニュースが流れる時期です。 それは,「日本の英語力は世界で××位!また下がった!えらいこっちゃ!」というニュースです。 なぜ11月かといえば,その年の「EF英語能力指数」が発表されるのがこの時期だからです。 今年も,11月13日に2024年版のランキングが発表される予定とのことです。日本の順位は,本記事の本文内には書かないので,ググるなどして調べて下さい。 「EF英語能力指数」と聞くと何やら権威がありそうです。英語で EF English Proficiency Index と書かれるともっと凄そうに聞こえます。しかし,実際の作りは,以下に説明するとおり,かなり雑です。巷には怪しいランキングが溢れていますので「お遊び」でネタにするな
テキストマイニングを分析手法に使った学術論文が増えているけれど,これの学術的評価(具体的には査読)はめちゃくちゃ難しくないですかという話です。 私の業界では,既存のソフトやサービスに突っ込んだだけで自前で細かい下処理・プログラミングを行っていないテキストマイニングが増えています。私の同業者には周知のとおりだと思います。 こういうのが査読に回ってきて,みなさんはいったいどのように評価(質の評価)をしているんでしょうか。ちょっと考えてみたら,かなりの難題だと気づいたので,以下,簡単にメモしておきます。 量的研究? テキストマイニング論文の評価には,統計分析の伝統的な基準(統計学的仮定との適合とか)は使えません。ソフトに突っ込んだ出力結果だけなので。 質的研究? 伝統的な内容分析・質的研究のように,データをどうとったのかという文脈情報を重視して評価するというのも微妙。とくに,便宜抽出アンケートの
お断り:この記事は,1年前のほぼ同名記事を,ごく一部に加筆したうえで,再掲したものです。 怪しい英語力ランキングの季節 11月は,英語教育関係者にとって頭が痛いニュースが流れる時期です。 それは,「日本の英語力は世界で××位!また下がった!えらいこっちゃ!」というニュースです。 なぜ11月かといえば,その年の「EF英語能力指数」が発表されるのがこの時期だからです。 今年も,11月8日に2023年版のランキングが発表される予定とのことです。日本の順位は,本記事の本文内には書かないので,ググるなどして調べて下さい。 「EF英語能力指数」と聞くと何やら権威がありそうです。英語で EF English Proficiency Index と書かれるともっと凄そうに聞こえます。しかし,実際の作りは,以下に説明するとおり,かなり雑です。巷には怪しいランキングが溢れていますので「お遊び」でネタにするなら
追記 この記事は、以下のYahoo!ニュースの記事の下書きです。 ほとんど同じですが、Yahoo!ニュースのほうは、ポイントを1点追記している点、および、Yahoo!ニュースのほうが、全体的にマイルドな表現におさえている点が違います。 news.yahoo.co.jp 「日本の英語オブザイヤー2022」が決定~和製英語部門は「ライバー」、「伝わらない英語」部門はHumishige Naka body~ 「日本の英語オブザイヤー2022」なるものが、「日本の英語を考える会」によって発表されたようです。 タイトルからはわかりづらいですが、日本(人)の英語の誤用で2022年を象徴するものを発表するという趣旨のようです。それにしては、2022年とは関係がなさそうなもの、誰も使って(誤用して)なさそうなもの(Humishige Naka body なんて文字列を本当に見たことあります?)が受賞してい
昨年3月に私が行った「日本人就労者の英語使用調査:第一次調査」から、テーマを絞って統計をご紹介します。 本調査の調査設計・ワーディングの詳細は以下にありますので、省略します。(それほど癖のあるデザインはとっていないと思うので、常識的かつ現実的な手法でデータが取られていると信じていただいていいと思います、、、が気になる方は、以下の文献――とくに1つ目のもので詳細を論じています――を参照して下さい) 寺沢拓敬 2021. 「日本人就労者の英語使用頻度 : ウェブパネル利用の質問紙調査に基づいて」『関西学院大学社会学部紀要』 http://hdl.handle.net/10236/00029843 Terasawa, T. 2021. 'Web Survey Data on the Use of the English Language in the Japanese Workplace', W
お断り:この記事は、2年前のヤフーニュース記事をもとに、一部に加筆修正をしたものです。 怪しい英語力ランキングの季節 11月は、英語教育関係者にとって頭が痛いニュースが流れる時期です。 それは、「日本の英語力は世界で××位!また下がった!えらいこっちゃ!」というニュースです。 なぜ11月かといえば、その年の「EF英語能力指数」が発表されるのがこの時期だからです。 今年も、2022年版のランキングが発表されましたが、ここ(本文内)には順位は書かないので、ググるなどして調べて下さい。 「EF英語能力指数」と聞くと何やら権威がありそうです。英語で EF English Proficiency Index と書かれるともっと凄そうに聞こえます。しかし、実際の作りは、以下に説明するとおり、かなり雑です。巷には怪しいランキングが溢れていますので「お遊び」でネタにするならまだわかりますが、大手メディアが
日本の外国人受け入れ政策に関する論文を枕に Chapple, J. (2014). Japan’s Immigration Intimations and Their Neglected Language Policy Requisites. Asian and Pacific Migration Journal, 23(3), 345-360. https://doi.org/10.1177/011719681402300305 先日のオンライン読書会で、日本の外国人受け入れ政策に関する論文を読んだ。 論文の概要は省略するが、方法論的にいろいろ考えるところがある論文だったので以下にメモする。 思想史的な説明 気になったのは、本論文が、言語政策関係の特定の施策(orプログラム)を、思想史的な傍証を使って説明するというアプローチ(というかレトリック?)を随所に使っている点である。日本の外国人
おことわり この記事の日付は2021年になっていますが、その後にアクセプトされた論文を含めるため2023年2月に加筆しています。 日本人就労者がどれだけ英語を使っているかを推計した論文が出ました。 寺沢拓敬 2021. 「日本人就労者の英語使用頻度 : ウェブパネル利用の質問紙調査に基づいて」『関西学院大学社会学部紀要』 http://hdl.handle.net/10236/00029843 Terasawa, T. 2021. 'Web Survey Data on the Use of the English Language in the Japanese Workplace', World Englishes, 2021 (Online First). → For a final version (the journal's website) → A draft version
シンポジウム「外国語教育研究の再現可能性2021」に登壇しました。 私は、「社会学と『同解釈を導く研究結果が得られる可能性』」というタイトルで自由研究発表をしました。スライドは記事末尾に。 昨日の議論を最初から最後まで聞いていて思いましたが、「科学」という言葉は使うのをやめたほうがいいんじゃないかと思いました。とくに、「科学的知識」と「科学っぽい(でも科学以外でも使われている)客観的な手続き」の話がごっちゃになって議論されていたように感じますので、明確に区別して使ったほうがいいんじゃないかと思います。…というのは上品な言い方で、これを区別しないと議論がほんとうにクソみたいなコミュニケーションになるので、区別せずしゃべるのは絶対やめたほうがいいというのが個人的な気持ちです。 昨日の発表でも話しましたし、以下のスライドにもありますが、外国語教育の再現可能性の是非を論じる文脈で(肯定的にも否定的
国語講師の上村湊さんに、拙記事を(頼んでもいないのにわざわざ私のツイートをリツイートしたうえで)添削して頂きました。 僕が作った論述国語のルーブリックで採点すると「論旨に一貫性がない」で大幅減点されるやつだな… https://twitter.com/minato_uemura/status/1321448631694553089 上記のツイートを目にしたので、減点ポイントおよび改善案について問い合わせをしました。 最初は返信していただけましたが、その後パタリと返事が止まってしまいました 1。 詳しい流れは以下にまとめました。 togetter.com この件、その後、いかがでしょうか? アマチュアに突然質問をぶつけるのは過剰な要求でしょうが、上村さんは論述国語の専門家ということですし、既に自作ルーブリックで評価を下しているわけですので、面倒な問い合わせでもないように思います(すでに「採点
はじめての英語教育研究 −− 押さえておきたいコツとポイント 作者:浦野 研,亘理 陽一,田中 武夫,藤田 卓郎,髙木 亜希子,酒井 英樹発売日: 2016/07/20メディア: 単行本(ソフトカバー) 12月の計4回の授業で、同書の3章・4章・5章・6章をそれぞれ読んでいます。 ゼミ生は夏休みレポートとして、ミニリサーチをしました。研究法について学ばないまま、ぶっつけ本番でのリサーチだったので、多々、課題にぶつかりました。その時の疑問を解消できればよいなと思います。 3章(2017年12月1日) ディスカッショントピック 寺沢のコメント p.39 図書の下位分類 図書の下位分類として和書・洋書・論文集という分け方をしていて、出版プロセスに関する区別としてはわかるが、図書の守備範囲・想定読者の点からさらに次の点は区別したほうが良いように思う:(a) 教科書、(b) 学術書、(c) 大衆向け
という、大げさな名前をつけてしまったが、以前の記事の続き。 この記事 【今日の英語教育用語】 純ジャパ - こにしき(言葉・日本社会・教育) に、「通りすがりです」さんから貴重なコメントをいただいたのでご紹介。 「純ジャパ」という言葉が取り上げられていますが、私の出身大学では1950年代あたりから「ノンジャパ(Non Japanese)」という言葉があったようです。意味は「日本語を第一言語としない人」で、主に海外から来た教員を指す言葉だったようです。 その後、遅くとも1980年代には、「ノンジャパ」以外に「純ジャパ」・「半ジャパ」・「変ジャパ」という言葉がありました。「半ジャパ」は、”日本人と外国人の間に生まれた、いわゆるハーフの人”、「変ジャパ」は”日本人だが海外生活が長かったり留学から帰ってきた後だったりして、日本語と英語が混ざった変な会話をする人”、という意味だったそうです。どちらも
著書に『英語ネイティブ脳みそのつくりかた』をお持ちで、留学斡旋会社タクトピア創業者で、グローバル教育革命家*1の白川寧々さんに「エセ学者」と言われました。 私が、ヤフーニュース個人の記事で、留学会社EFの英語力ランキングがいい加減なデマだと指摘したところ、同じ留学斡旋業者としてよほど気に食わなかったのか、こいつの方こそエセ学者とばかりに誹謗中傷されました。 それが以下のFBのポスト。 https://www.facebook.com/soutarou.isowa/posts/2670284469694720 たしかに、『英語ネイティブ脳みそのつくりかた』の著者でグローバル教育革命家の白川寧々さんは私のことを指してエセ学者と言っています。 しかも「この人は有名なエセ学者なのよ」とのことなので、私のエセ度合いは結構広く知られているようですね! 心外です。こう見えても、私はわりと真面目に研究して
第NNN章 導入の是非――小学校英語論争 第1節 小学校英語論争の分析 論争全体像の理解 論争の構造への注目 第2節 賛成論 賛①「英語力を育成すべし」 賛②・賛③「国際化に対応すべく、異文化理解・会話への積極性を育成すべし」 賛④「会話への積極性を育成すべし」 賛⑤ 英語学習への肯定的態度の育成 賛⑥ 機会均等のために導入すべし 第3節 反対論「効果がない」 「効き目がない」 英語力育成は期待できるのか 経験者・非経験者を比較した実証研究 実証研究による英語熱の冷却 教育条件 論争の空白地帯である「診断」 グローバル化 日本人のメンタリティ 機会均等 「コミュニケーション能力が低い」 効能をめぐる論争 「効果がない型反対論」のまとめ 第4節 反対論「副作用が大きい」型 害①・害② 英語力・英語学習への悪影響 反対論に対する応答 2つの反反論に関する考察 害③・害④・害⑤ 日本語力や学力な
大学院生へのアドバイスシリーズ!(過去記事: 学会発表での不規則質問(大演説)への対処 - こにしき(言葉・日本社会・教育)) 新大学院生(M1)へのアドバイスなるものをよく聞く。 教員との距離のとり方、同期・先輩との人間関係、DCへの応募、メンタル管理などなど。 そんななかで「先輩院生や学会に(そして最近ではSNSに)出没する自称研究者のなかにはひどい虚言癖がいるから気をつけろ」というアドバイスはめったに聞かない。 でも、これはけっこう大事だと思う。実際、分野によってはけっこう被害者は多いはずだよね。 虚言癖の院生、(自称)研究者の特徴 応用系・実務系にいる。基礎研究系にはめったにいない(たぶん) 実在しない史料や研究論文、分析手法、理論について話す 著名な学者と知り合いだと嘘をつく 「君のことをみんな褒めていたよ」「●●先生のことなんてみんな相手にしていない」「××の研究はアメリカでは
2018年5月13日追記 本稿に対し、統計アイドルなどと称する非実名アカウントが、「この論文の分析の問題点を考えるのは統計のツッコミ力を鍛える訓練になる」などと言って、他のアカウントにも「ツッコミ」を呼びかけていた。ただ、詳しく聞いてみたところ、当該アカウントの理解不足(データの制約がわかっていない点、ドメイン知識を持っていない点)に起因するのが大半だということがわかった。 ここの「統計アイドル」のように誤解する人がたまにいるので追記しておく。本研究は二次分析である(「二次分析」がわからない人はググって下さい)。したがって、所与のデータの特性・条件を前提にする必要があったという制約を理解しない批判は無意味である(理解したうえで、それでもなお批判するということであれば問題ない)。 余談。一般論だが、統計アカウントであれば統計アカウントらしく、ドメイン知識に関することは偉そうに講釈をたれず、た
この夏、○○教育学会で学会発表をする院生の皆さん、がんばってください。 質疑応答を含めて万全の体制で臨もうと考えていると思います。 残念ながら、この学会には質疑応答の時間に、あなたの発表内容とまったく関係ない自分語りを始める人がいます。 これは、学問の場に自分のパーソナルな話を持ち込んでいるわけですから学会軽視ですし、そもそもあなたの貴重な発表時間を奪っているわけですから学術倫理に照らせば許されません。このような人がいることは本当に残念なことですが、放置していたのも先輩会員です。先達者の責任です、すみません。 あなたの発表のときに、こんな自己満演説をやられたらきっと大きなトラウマになりかねないと思います。 本来は、このような人を止めるのが司会者の責務ですが、○○学会にはそういう仕事をやりたがらない司会者もいます。そもそも司会者をたてずに、発表者が質疑応答を仕切る学会もあります。 ですから、
「これからの時代、社会に出たら、英語力が絶対必要だ」 最近では、ごくありふれた発言である。この手の発言は、表現に多少の差はあっても、仕事において英語力がいかに重要かを強調するという点で、ビジネス言説である。たとえば『プレジデント』(プレジデント社)や『アエラ』(朝日新聞社)のようなビジネス誌をひらいてみれば、英語に関する特集がことあるごとに組まれている。 しかし、これは、ビジネス言説であると同時に、教育言説でもある。なぜなら、この言説を積極的に「利用」しているのが、教育に携わる人々、つまり英語教育/英語科教育*1の関係者だからだ。 英語(科)教育関係者にとって、この言説が「重宝」するのも当然である。というのも、仕事における英語力の重要性が高まれば高まるほど、英語力育成の役目を担う英語教育の意義は高まるわけで、結果、関係者は利益を得るからである。わかりやすいのは営利企業の場合で、英語の意義が
学会シーズンが近づいてきたので、学会で口頭発表をする先生・院生の皆さんに望むことを書いておきたい。「質疑応答の際は質問に真摯に向き合うべし」云々のような精神論ではなく、ものすごく具体的な話を書く。 こういう話を学会後に書くと、「こ、これは誰々の発表への当てこすりか!?」と勘ぐられる恐れがあるので、シーズンが始まる前に書く。 あと、こういう学術的に問題がある発表を見たら、研究者は「ダメな発表だな」などとSNSで陰口を叩くだけでなく、きちんと批判もしてほしい(まあ、これは別に院生や実務家でもかまわないが)。学会発表のクオリティの低さは、そこの学会会員が今までいかにダメなものを見て見ぬふりをしてきたかのバロメータでもあるはずだから。 1. 無意味なテキストマイニングは禁止 アルゴリズム/機械を経由させれば「科学的」になると思っている人がいるが、テキストマイニングに関しては大間違いである。(そして
以下の記事を枕に 「英語格差」を乗り越えるための新常識〜植えつけられた苦手意識はこう取り除け!(鳥飼 玖美子) | 現代ビジネス | 講談社(1/5) 国際共通語である英語が分からないと重要な情報を理解できず情報弱者になる。東北大震災の時も、英語でインターネットを検索し海外の情報を理解できる人は原発事故の情報をすぐに入手できたが、英語が苦手な人は政府の発表だけで判断することを余儀なくされ不利益を被った。 英語が話せないと、自分を守るために発信できず、結果として社会的弱者になる。たとえば海外で何か起きた際に英語が話せるのと話せないのとではトラブル対応に大きな格差が生まれる。 英語格差をめぐって 僕はイングリッシュディバイドについてそれなりに研究してきたと思う(その割に誰からも引用されないけれど)。そういう自負があるので言わせていただくと、「英語格差=英語へのアクセスで情報強者・弱者が生まれる
友人からこんな文章を教えてもらった。 日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針 http://www.gakkai.ne.jp/jss/about/researchpolicy.php 全文引用したいくらい重要な内容だが*1、長くなるので、特に重要な部分だけを抜粋する。 (2)研究・調査に関する知識の確実な修得と正確な理解 研究対象の特質、問題関心、テーマや人的物的資源に照らして、どの方法が適切か、的確に判断するためには、調査方法の基礎を十分理解しておかなければなりません。自分がどのような情報を求めているのかを自覚するとともに、調査の意図やねらいを対象者に明確に伝えるためにも、先行研究など…の蓄積をふまえることが必要です。このような知識を確実に修得し、理解していることが、専門家としての、また調査者としての責任であることを認識しておきましょう。 (3)社会調査を実施する必要性についての自覚 社
2021-01-18追記 2015年に書いた記事を、大幅に加筆修正のうえ、以下のページに移動しました。 news.yahoo.co.jp
拙著『「日本人と英語」の社会学 −−なぜ英語教育論は誤解だらけなのか』に書評を頂いた。以下のリンクを参照。 STUDIO » 「日本人の1割も英語を必要としていない」は本当か? 評者である「ぷくろう氏」*1のトーンは全体的には批判的である。かなり長い文章だがぷくろう氏の批判のポイントは以下の9点にまとめられるだろう。 ぷくろう氏の批判の骨子を抽出するなら、「寺沢の論証の仕方は多くがストローマン論法だ」となるだろう。なお、ストローマン論法とは、論敵の主張を批判しやすいように歪めたうえで批判する詭弁の一種である。まるで叩きやすいワラ人形 (straw man) をこしらえたように見えることからこの名前がついている。 以下に反論するように、ぷくろう氏の批判点の大部分が、本文ですでに答えが出ている内容である。ぷくろう氏がその箇所を意図的に無視したのか、それとも読解力不足のせいで見落としてしまったの
学会ドヤり系質問という言葉をご存知だろうか。 知らないのも無理はない。私が最近作った言葉だからだ。 「学会ドヤり系質問」とは、簡単にいえば、学会の質疑応答時にフロアから「ドヤ顔」でなされる質問である。つまり、「これは鋭い質問だ!、私は本質をついてるぞ!」ということをしたり顔で言っている質問である。 それだけなら問題はない。 「ドヤ顔」で指摘せざるを得ない問題というのはこの社会にいくらでもある。 しかし、「学会ドヤり系質問」には、さらに2点ほどもっと重要な(そして困った)要素を持っている。それは・・・ (1)きわめて定形化されているため誰でも簡単に言える (2)実際はぜんぜん鋭くない、むしろ残念な質問である という2点である。 学会ドヤり系質問のリスト 私は以前から、こういうくだらない質問群に苦々しい思いを抱いてきた。 そして、それ以上に、こういうくだらない質問で「自分は辛口だ」と思い込んで
英語が公用語として使われていると聞くと、国民の多くが英語を話すというイメージを抱く人も多いだろう。 実際、日本でも2000年に英語の第二公用語化が論じられたことがあり、この議論でも英語公用語化は日本人総バイリンガル化と同一視されていた(「21世紀日本の構想」懇談会最終報告書にはまさに「日本人全員が実用英語を使いこなせるようにする」という文言がある。) 御存知の通り、インドの公用語も英語である。インドの人々とビジネス等で議論したことがある人のなかには、彼ら彼女らの凄まじく流暢な英語に驚いた人も多いだろう。こういった「英語=公用語」および「インド人ビジネスパーソン」のイメージから、インド人は皆(と言わないまでも多くの人が)英語を話せると考える人がいても不思議ではない。 しかしこれは実態とは異なる。2005年に実施されたインド人間開発調査(IHDS-2005)では英語力が尋ねられていたので、その
先日、「小学校英語とエビデンス」という一般向けの記事を書いた。 小学校英語とエビデンス(寺沢拓敬) - 個人 - Yahoo!ニュース その内容をアカデミックなものに大幅に書きなおしたものが以下の論集に掲載されたので紹介したい。 英語教育学における科学的エビデンスとは?:小学校英語教育政策を事例に | Takunori Terasawa - Academia.edu 書誌情報 寺沢拓敬 2015. 「英語教育学における科学的エビデンスとは?――小学校英語教育政策を事例に」『外国語教育メディア学会(LET)中部支部外国語教育基礎研究部会2014年度報告論集』 pp. 15-30. 論文は上記のリンク先からダウンロードできる。なお、当該ファイルを開く際にはウェブサイトに掲載されているパスワードの入力が必要なのでご注意を。 政策科学としての英語教育学 本論文は、啓蒙を目的とした論文である――自分
『総合教育技術』6月号に、私のインタビュー記事が掲載されました。 総合教育技術 2015年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 小学館発売日: 2015/05/15メディア: 雑誌この商品を含むブログ (2件) を見る タイトルは「社会の実態を正確に把握しエビデンスに基づいた教育を」です。B5版で見開き、計4ページ。思いのほか、たっぷり論ずることができました。 小見出しは以下のとおり。 現実と乖離してしまった英語と日本人に関わる言説 「日本の英語教師はだめ」言説は本当に根拠があるのか 英語教育に対する立場の違いはどのようにして生まれるのか 早期英語教育によって英語力は向上するのか 同誌の「政府・教委・管理職寄り」という方向性にもかかわらず、私のような「反政府」的な論者の文章を載せた編集部の方はなかなかの勇気のある判断だったろうと想像します(ナイスフォロー)。以下、インタビューでは喋っ
先日書いた以下の記事の続き。 今年度から英語教育学を志すM1の皆様へのメッセージ - こにしき(言葉、日本社会、教育) 前回の記事ではちょっと「統計びいき」過ぎる記述だったかもしれません。先日の記事で「その問いが統計分析でできるかどうかまず考えるべし。最初から質的研究ありきで進めるなかれ」と言いましたが、なぜそのようなことを言ったかというと、質的研究にも色々難しい事情があるからです。 「なんでわざわざ質的研究やるの?」問題 英語教育学の院生の中にたまに「質的研究ありき」で研究をはじめてしまう人がいます(正確に言うと、欧米の学者の中にもそういう人はいると思います)。そのなかには、傍から見る限り、計量分析でやればもっと簡単に答えがでるのにと思えてしまう研究もすくなくありません。 これは統計分析向きの研究対象を質的研究で検討してしまうという問題だと考えています。つまり、対象と手法のミスマッチです
読了。 Neoliberalism and Applied Linguistics 作者: David Block,John Gray,Marnie Holborow出版社/メーカー: Routledge発売日: 2012/02/09メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る この本、批判がけっこう辛辣で面白い。 ネオリベ者が批判されるのは当然としても、自称マルクス主義者・自称ポストモダニストも批判されている。 どちらかといえば自陣営にいると考えられる学者ですら「政治経済理論に関する理解が浅い」的な感じで批判されている 「私はそうは思わない」的な書き方のほうがまだカドはたたないと思うだけに、人間関係的に大丈夫なんだろうかと少しだけ心配になった。 ネオリベラリズムを分析する意義 応用言語学とネオリベラリズムの組み合わせは ――日本の応用言語学に馴染みが深い限り―― かなり奇妙な取り
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