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今年の「#文学」
caorenqi.hatenablog.com
遊戯の終わり (岩波文庫) 作者: コルタサル,木村榮一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/06/16メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 30回この商品を含むブログ (23件) を見る しかし、それもこれも運がよかっただけの話だ。(「楽団」、138ページ) 運が悪かったら、別世界に取り込まれて帰って来れないということになるわけだ。 18編を収めた初期短編集。どれも短めだしあまり濃い味付けはしていない。犯罪小説を書いてもどこか上品さが漂うので、そこが物足りなく思う人もいるかもしれない。以下、いくつかの短編の感想を。 「誰も悪くない」はセーターを着るのに手間取っている男の話。狭くて暗くて湿気に満ちた場所は異界への入り口、というのは幻想小説の定型だが、なるほど確かにセーターはこの条件に合致している。そう思えばセーターの袖口が異界につながっているとしてもおかしくはない。そうはいっ
岩波文庫赤帯では最もレアな本の一つとして知られ、古書店では五冊ぞろい三万五千円などという値段がつくこともあった。このたびの新装復刊はまことにめでたい。にも関わらずネットの反応がいまいち盛り上がっていないような気がする。もっとみなで祝おうではないか。 断崖(一) (岩波文庫) 作者: ゴンチャロフ,井上満出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/09/17メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 62回この商品を含むブログ (7件) を見る断崖(二) (岩波文庫) 作者: ゴンチャロフ,井上満出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/11/17メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見る ライスキーは芸術家を志していて、才能のかけらも持ち合わせつつ、やれ絵画だ小説だとあちこちに手を出すため大成せずにいる三十男。今は仕事も持たず小説の構想を練
バウドリーノ(上) 作者: ウンベルト・エーコ,Umberto Eco,堤康徳出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/11/11メディア: ハードカバー購入: 6人 クリック: 103回この商品を含むブログ (43件) を見るバウドリーノ(下) 作者: ウンベルト・エーコ,Umberto Eco,堤康徳出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/11/11メディア: ハードカバー購入: 6人 クリック: 20回この商品を含むブログ (31件) を見る 「でもそれは、幻覚を望むことと同じだ」 「でもぼくは、その願望を二度と失いたくなかった。それは、人生を捧げる価値のあるものだったから」(上巻、123ページ) 天性の嘘つきバウドリーノが、ビザンツの史学者ニケタスにその半生を語る。ふとしたことからフリードリヒ赤髯王の養子となったバウドリーノは、パリで学んでは余計な知識と友人を得、皇帝
二つの伝説 (東欧の想像力) 作者: ヨゼフシュクヴォレツキー,Josef Skvoreck´y,石川達夫,平野清美出版社/メーカー: 松籟社発売日: 2010/11/10メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (5件) を見る ナチとその後の共産主義政権下でのジャズについて書かれたエッセイ「レッド・ミュージック」と、「エメケの伝説」「バスサクソフォン」の二つの中篇を収録した本。 「エメケの伝説」は、小さな村のレクリエーションセンターでの、ハンガリー出身の神秘的な未亡人エメケと語り手の愛と、粗野な中年教師の横槍によりそれが挫かれてしまう顛末を描いた作品。エメケより何より教師の下品な言動の描き方がなんとも残酷で、最後の教師への復讐の場面もかなり陰険、というか、いじめだろ、これ。こういうキャラでもって小説を展開させるのは正直好きじゃない。 「バスサクソフォン」は、ナチ支配下
四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫) 作者: G.K.チェスタトン,西崎憲出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/12/10メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 37回この商品を含むブログ (22件) を見る しかし、わたしは言う。庭にはつねに禁断の樹を植えるべきだと。生活のなかに、つねに手を触れてはいけないものを持つべきだということを。それが永遠に若く幸福である秘訣だ。(179ページ) 新聞記者ピニオン氏は、放埓な行状で知られるマリラック伯爵のスキャンダルを追ううちに、伯爵の友人である四人の男と出会う。マリラックと四人の男は『誤解された男のクラブ』を結成していた。四人はかつて誤解を受けた自らの行為について語る。 ……というプロローグと、「穏和な殺人者」「頼もしい藪医者」「不注意な泥棒」「忠義な反逆者」の四つの中篇からなる作品集。 どの話も「誤解された男」たちが為した犯罪と、
http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51586752.html このまとめを見ていて、岩波文庫へのイメージが古いまんまな人が多いように感じたので、90年代以降に出た、比較的とっつきやすそうな岩波文庫を羅列してみる。赤帯オンリー。 というかこういうスレが立つこと自体が岩波文庫ファンとしては悲しい。そもそも初心者向けとか言われるリストが70年代くらいから変わってないのが悪い。もっと新しい時代向けの本(≠新しい本)を見て欲しい。*1 正直このブログを見てる海外文学廃人さんには不要かもしれないと思ったりするけど、書きかけたので書く。 岩波は重版も多いし、この年代のものはそれなりの古本屋へ行けば簡単に手に入る場合も多いので、現時点で品切れしてるものも入れておくよ。 聊斎志異〈上〉 (岩波文庫) 作者: 蒲松齢,立間祥介出版社/メーカー: 岩波書店発
お久しぶり。書き方忘れてしまったよ。 女中たち バルコン (岩波文庫) 作者: ジャン・ジュネ,渡辺守章出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/12/17メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 45回この商品を含むブログ (18件) を見る そうとも、冗談なんか言ってもらっちゃ困るね。声を立てて笑おうものなら、いいえ、にやっとするだけで、何もかも台無しだよ。薄笑いがあるというのは、疑いがある証拠よ、お客様はね、厳粛な儀式を求めている。(「バルコン」、182ページ) 女中姉妹が夜ごと興じる「奥様と女中」ごっことその末路を描いた「女中たち」、売春宿でコスプレにいそしむ連中が外の革命騒ぎに終焉をもたらす「バルコン」の組み合わせ。どちらも作中人物が何かを演じており、それと作中の実際の事象とが話の展開にしたがって関わってくるという複雑なメタ構造を持っている。 「女中たち」は、屋敷の住み込み
ドイツの古典小説を読むのは久しぶり。最近は現代劇ばかり読んでいたからなー。 陽気なヴッツ先生 他一篇 (岩波文庫) 作者: ジャンパウル,Jean Paul,岩田行一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1991/03/18メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 58回この商品を含むブログ (8件) を見る 彼は子供のころすでにいささか子供じみていた。(『陽気なヴッツ先生』、8ページ) この岩波文庫唯一のジャン・パウルの本は、田舎の小学教師のささやかな楽しみに満ちた生涯を語る『陽気なヴッツ先生』と、小心者の牧師が心配ごとに満ちた珍道中を語る『シュメルツレの大用心』の中篇二つを収めている。 作風は『トリストラム・シャンディ』+『失われた時を求めて』、といった感じ。プルーストを思い起こさせる、読点読点でえんえんとつなげられた長い文章をもって、スターンふうに脱線を繰り返しながら物語を語っている
わたしは英国王に給仕した (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集) 作者: ボフミル・フラバル,阿部賢一出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/10/09メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 150回この商品を含むブログ (26件) を見る 彼女は店を出て行き、彼女のあとにはラズベリーの残り香だけが漂っていた。シルクのシャクヤクのドレスを着た彼女が外に出ると、早くも蜂が周りをブンブン舞っていた。支配人は机上の封筒をわたしに押し付けて、「さあ、追いかけるんだ、忘れ物があるだろ」と言った。駆け出していくと、彼女は広場に立っていた。トルコの蜂蜜を売る市場の小店のように、スズメバチとミツバチだらけだったが、彼女がいっこうにおかまいなしといった様子だったので、蜂たちは彼女から甘い液体を集めていた。その液体は彼女の身体にまとわりついていたので、家具に光沢材やラッカーが塗られている
舞姫タイス (白水Uブックス―海外小説の誘惑 (145)) 作者: アナトール・フランス,水野成夫出版社/メーカー: 白水社発売日: 2003/07メディア: 新書購入: 2人 クリック: 47回この商品を含むブログ (6件) を見る 要するに僕はお前を羨ましい人間だと思う。なぜなら、僕たちは、パフニュスも、僕も、自分たちの本性に従って生きながら、全生涯を通じてただ一種類の満足しか追求できなかったのに、かわいいタイスよ、お前は、生涯のうちに、性質のまったく相反した悦楽を味わえるだろう。ひとりで二種類の悦楽を味わえる人などめったにあるものでない。(177ページ) テバイードの砂漠で二十四人の弟子を従え苦行にはげむ修道士パフニュスは、若き頽廃のころに憧れた舞姫・タイスを悔悛させようと思い立ち、久方ぶりにアレクサンドリアを訪れる。かつてキリスト教に触れたことのあるタイスはあっさりと奢侈な生活を捨
帝都最後の恋―占いのための手引き書 (東欧の想像力) 作者: ミロラドパヴィッチ,Milorad Pavic,三谷惠子出版社/メーカー: 松籟社発売日: 2009/05メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 28回この商品を含むブログ (13件) を見る 勝利には子供がおらず、ただ父親があるのみなのだ。(86ページ) タロット占いをモチーフにした作品で、はじめから終わりまでページ順に読んでも良いし、もしくはカードを引いてその結果に従って該当する章を読んでいっても良い、カードを使う場合はその章の内容で読者の運命を占うこともできる、という仕掛け。ストーリーの軸はしっかりしていて、18世紀末から19世紀初めのナポレオンとオーストリア軍の戦争を背景に、ナポレオン側とオーストリア側にそれぞれ立つことになったオプイッチ家とテネツキ家の、セルビア人の二つの家の人々の波乱を描く。 事典形式の小説『ハザ
http://www.toho-shoten.co.jp/toho/readers-ranking.html 東方書店が上記の題で行ったアンケート企画について、id:inmymemory氏がブクマコメで私なら何を選ぶか見たいと言っておられたから、選んでみようと思う。 (実はこのアンケートの案内は私のところにも来ていたのだけれど、応募しようしようと思いつつ後回しにして、結局参加しそびれてしまったのだ)。 とりあえず『三国演義』『水滸伝』『史記』『唐詩選』あるいは魯迅などの当たり前のモノは外す方針で。 まずは古典文学から。 『西遊記』 当たり前のものは外す、とか言っておきながら西遊記とはこれいかに、と言われそうだけれども、きちんと全訳されたものを読んでいる人は少なそうだし、誤解も多そうなので(さすがに三蔵法師が女性だと思っている人なんかはいないだろうけれども)。 特に秀逸なのは取経の旅以前の部
ニール・サイモン〈1〉おかしな二人 (ハヤカワ演劇文庫) 作者: ニールサイモン,Neil Simon,酒井洋子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2006/09/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (15件) を見る 今のおれたちのやり方はどうも間違っているんだ、そうなんだ。二人のひとりもんの男が八つも部屋のある大きなアパートに住んでるのに、そのアパートがおれのおふくろの家よりきれいになるってのが土台おかしいよ。(93ページ) ずぼらな性格で妻と離婚したオスカーと、神経質すぎる性格がもとで妻と離婚手続き中のフィリックス、二人の中年男が同居生活を始める。ところがやがて、当然の成り行きとして、互いの気質が癇に触り出す。 ジャンルとしては性格喜劇かな。風俗劇としての一面もあることはあるが、やはり二人の主人公と、彼らを取り巻く悪友たちの会話が読ませ所だろう。
ハインリヒ・マン短篇集〈第3巻〉後期篇―ハデスからの帰還 作者: ハインリヒマン,Heinrich Mann,三浦淳,杉村涼子,岡本亮子,小川一治,田村久男出版社/メーカー: 松籟社発売日: 2000/07メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (2件) を見る グレートヒェンは起き上がって、彼に手紙を書いた。今日にでもあなたにお会いしたいという気持ちを押さえることができません。あなたはわかってくれますね。<どこで会うことにしよう?>と彼女は考えた。戸外でひと気のないところでなければ。そう、あの場所ほどぴったりなところはないわ。それに美しい記憶をともなう場所でもあるし。彼が話すあの声がまた響いてきた。「お嬢さん、そちらは女性用ではありませんよ」そこで、彼女は書いた。 「また、あの公衆トイレのところで」(「グレートヒェン」、33ページ) ハインリヒ・マンの壮年時代から晩年に
さて、昨年春からちまちまと読んできた、現代ドイツ、オーストリアの作家の戯曲作品を集めた叢書「ドイツ現代戯曲選30」、なんだかんだで全巻読破にこぎつけたのでまとめ感想でも書いておこう。 まずなにより、わりと伝統的なスタイルの性格劇から、青春もの、世情風刺、古典改作、不条理作品、とても戯曲とは思えないような形をしたテクストまで、作品の内容が非常に多彩であることは特筆に価する。逆に言えば、当たり外れが大きく、ついていけない作品も多い。ネットに感想もほとんどあがっていないから、読んでみるまで自分に合うかどうかさっぱり分からない(そこがまた爆弾を扱うみたいでハラハラして楽しい、なんて言ったら失礼か)。 作家の並びを見ると、ハイナー・ミュラー、トーマス・ベルンハルト、エルフリーデ・イェリネクなどの大物が入っている一方、聞いたことのない人も多く、その世代も1914年生まれのタボーリから、1972年生まれ
久しぶりのヴィクトリア朝イギリス小説。 エゴイスト〈上〉 (岩波文庫) 作者: G.メレディス,George Meredith,朱牟田夏雄出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1978/05/16メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 43回この商品を含むブログ (2件) を見るエゴイスト〈下〉 (岩波文庫) 作者: G.メレディス,George Meredith,朱牟田夏雄出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1978/07/17メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 9回この商品を含むブログ (1件) を見る それからもう一つ、病身の紳士の話で、人間性の機微にふれたのを話した。その紳士の細君がたまたま重態になった。と紳士は、病室の外に集まって相談をかわしていた医師たちのもとに行くと、涙を浮かべて、一生のお願いだから何とか私のためにあわれな妻を助けてほしいと哀願してこういった。「妻は
清水義範の『世界文学必勝法』を本屋で立ち読みしたんですがね……。 世界文学必勝法 作者: 清水義範出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/07メディア: 単行本 クリック: 21回この商品を含むブログ (6件) を見る ブックガイドとしては、私にはほとんど役に立たない本だったな。いや、紹介文が下手とかそういうことではなくて、ここに紹介されてる50冊のうち、49冊が知ってる本だったから。 知らなかった1冊は『バーブル・ナーマ』。高校時代の世界史の用語集に載ってたから、知らなかったというよりは忘れてた本だけど(ちなみにその『世界史B用語集』では「初代皇帝バーブルの回想録。トルコ散文学史上の傑作とされる」といたって簡潔に説明されている)。ほとんど役に立たない、と言ったのは、『バーブル・ナーマ』のことを思い出せたのだけは利得だったからで……ふうん、面白いのか。 それ以外の部分では、有名でな
アニオタが非オタの彼女にアニメ世界を軽く紹介するための10本 便乗。ツッコミどころ満載。 まあ、どのくらいの数の世界文学オタがそういう彼女をゲットできるかは別にして、 「オタではまったくないんだが、しかし自分のオタ趣味を肯定的に黙認してくれて、その上で全く知らない文学の世界とはなんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる」 ような、ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、世界文学のことを紹介するために見せるべき10本を選んでみたいのだけれど。 (要は「脱オタクファッションガイド」の正反対版だな。彼女に世界文学を布教するのではなく相互のコミュニケーションの入口として) あくまで「入口」なので、時間的に過大な負担を伴う5分冊、10分冊の作品は避けたい。 できれば1巻本、長くても上中下三巻にとどめたい。 あと、いくら文学的に基礎といっても古びを感じすぎるものは避けたい。 古典好きが『イリアス』は
悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫) 作者: コルタサル,木村栄一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1992/07/16メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 83回この商品を含むブログ (62件) を見る カメラを下げて歩けば、周囲にたえず注意を払い、古い石の上につと照り返す美しい陽射しや、三つ編みにした髪をなびかせ、パンか牛乳びんを抱えて駆けもどって行く少女の姿を見逃してはならない。写真家というのは、カメラが巧妙に押しつけてくるもう一つの目を通して世界を見るべきである。ミシェルはそう考えている。(「悪魔の涎」、61ページ) 日本オリジナル編集による、アルゼンチンの作家コルタサルの小説集。十篇の作品を収める(「追い求める男」が100ページほどの中篇、あとはみな10〜20ページくらいの短篇である)。 3月に復刊されたので読んでみた。コルタサルを読むのはこれ
↓に便乗。 新入生のための海外現代文学リスト ――Pulp Literature 新入生が選ぶ世界現代文学リスト ――世界の果てのクロエの祈り 2年生と書いたけど、別に高校2年生とか大学2年生とか具体的な対象年齢を決めてるわけじゃなくて(そういえば私も修士課程2年生だ)、まだ未熟者だけど、まあモームの『読書案内』に載ってるような本はそれなりに読んだし、そろそろ初心者は脱したかな、という私みたいな読者向けの、ちょっとマイナーな傑作古典リスト。 Pulp Literatureさんとこの現代文学リストに触発されたのと、前々から出版社とか教科書とかがプッシュしがちな古典のセレクトに不満を持っていたので作ってみた。 実際『異邦人』とか『悲しみよこんにちは』とかもういらないでしょ。あんなもの読む暇があったら『涼宮ハルヒの憂鬱』とか『撲殺天使ドクロちゃん』とか読んだほうがずっといいと思う(断っておくけど
転生夢現〈上〉 作者: 莫言,吉田富夫出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/02/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 51回この商品を含むブログ (18件) を見る転生夢現 下 (2) 作者: 莫言,吉田富夫出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/02メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (7件) を見る 「大王さま、揚がりました」 わしは自分がカリカリに揚げられて、ちょっぴりでも叩かれようものなら粉々になるのがわかっておった。高い大殿のまぶしい光の中から、閻魔大王のからかい気味のお訊ねが降ってきた。 「西門鬧よ、まだ文句を言うか?」 じつのところ、その時わしは、一瞬たしかにぐらついた。わしは油だまりの中に焦げ焦げになって這いつくばっておったのじゃぞ。皮膚はパチパチと弾ける音を立てておった。(……)どうとでもなれ、とわ
何度でも言うけど、せっかく復刊したので、この機会をお見逃しなきよう。『オブローモフ』は唯一無二の傑作で、ドストエフスキー、トルストイ、ツルゲーネフらの作品と並べてもまったく遜色がないばかりか、むしろ優れている点も多々あり。『断崖』も復刊しないかなあ……。 オブローモフ〈上〉 (岩波文庫) 作者: ゴンチャロフ,米川正夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1976/02/16メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 184回この商品を含むブログ (17件) を見るオブローモフ〈中〉 (岩波文庫) 作者: ゴンチャロフ,米川正夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1976/06/16メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 15回この商品を含むブログ (9件) を見るオブローモフ〈下〉 (岩波文庫 赤 606-4) 作者: ゴンチャロフ,米川正夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 197
いよいよ年末。年末といえば一年のまとめをするのが世間の通例。しかし年間ベスト10のたぐいは年度末にやるのが私の旧サイト時代からの習慣なので、ここには今年出た新刊に限った、ランク付けなしの紹介記事を書いておこう。 まず1月に出たレム『大失敗』――これは難物だったな。 2月は、岩波文庫リクエスト復刊で赤帯が大量に重版されたのが嬉しい事件だった。フローベール『ブヴァールとペキュシェ』のような奇書から、コロレンコ、レスコーフのような地味めな良作までいろいろな作品が復刊されたけれど、一冊選ぶなら戦後初復刊になるマイエル『聖者』だろう。中世イングランドを舞台にした歴史小説の傑作。 また岩波からはアクーニンも出た。登場人物同士の心理の読みあいが緊迫感を生んでいる『リヴァイアサン号殺人事件』と、破天荒なアクション描写が魅力の『アキレス将軍暗殺事件』、同一シリーズながらまったく方向性が違っており、併せて読む
現代チェコ文学というと、日本ではクンデラの一人勝ち状態だ。古典を含めても、クンデラほど読まれてるのはカフカと、せいぜいチャペックくらいだろう。でもこの三人のほかにも凄いのはいる。たとえばこの人。ボフミル・フラバル。 あまりにも騒がしい孤独 (東欧の想像力 2) 作者: ボフミル・フラバル,石川達夫出版社/メーカー: 松籟社発売日: 2007/12/14メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 103回この商品を含むブログ (49件) を見る でも、誰かがその安全な避難所をばらしてしまい、プロイセン王立図書館の蔵書は戦利品と宣言されて、天金と金文字の付いた革装の本はまたトラックで駅に運ばれ、そこで屋根のない貨車に積み込まれた。雨が降って丸一週間どしゃぶりになり、最後のトラックが最後の本を運んでくると、列車は大雨の中を出発し、無蓋車から煤とインクの混じった金の水が流れ落ちた。そして僕は、街灯
学生時代の友人がすごいことをやりだしたのだけれど、宣伝してほしいと頼まれたので、いまここをチェックしてる人がどれくらいいるかわからないが一応リンクを貼ってみる。 ameblo.jp 1t水槽に閉鎖生態系を作ってどこまで維持できるか、という実験記録ブログ。 このためにわざわざ家まで建てたらしい。水草、ミジンコやヨコエビ等の微小生物、ヌマエビ、スネール類、グッピーなどでまわしていく……はずが、ギンブナやジャンボタニシなどが意図せず混入してしまったり波乱の幕開け。2カ月たって環境は落ち着いているようだけれどもこの先どう展開していくか目が離せない。 人の野心のすばらしさがかいまみえるブログ。 ちなみにわたしのアクア遊びの現状だけれども、プラナリアみたいなサイズから40cmまで育てたタイヤトラックスパイニーイールを、この秋に飛び出し事故がもとで死なせてしまったのでモチベだだ下がり中。スパイニーイール
(!)はおすすめ作品、(☆)はいちおし作品、(漢)は中国語で読んだ作品を示す。また、中国・台湾の作家は日本語音読みに従って並べた。 ワシントン・アーヴィング(アメリカ、1783〜1859) ブレイスブリッジ邸 秋田禎信(日本、1973〜) 閉鎖のシステム キャシー・アッカー(アメリカ、1948〜1997) 血みどろ臓物ハイスクール(!) ヘルベルト・アハターンブッシュ(ドイツ、1938〜) 長靴と靴下 ジャン・アヌイ(フランス、1910〜1987) ひばり(☆) アブー・ヌワース(イラン、757?〜814?) アラブ飲酒詩選 フェデリコ・アラバール(スペイン、1932〜) 戦場のピクニック ペドロ・アントーニオ・デ・アラルコン(スペイン、1833〜1891) 三角帽子 ブラウリオ・アレナス(チリ、1913〜1988) パースの城 レイナルド・アレナス(キューバ、1943〜1990) 夜明け
ハインリヒ・マンはかのトーマス・マンの兄なわけだが、知名度はぐっと下がる。そもそも彼ら兄弟が世に出たときから、トーマスが『ブッテンブローク家の人々』で大ヒットを飛ばしたのに対し、ハインリヒの『ウンラート教授』は好事家の間で話題になるにとどまったようだ。日本語訳も戦前に一種類出たきりだったが、今回70年ぶりに新訳刊行と相成った。さてさて、本当に無名のまま忘れ去られて良い作家かな? ウンラート教授―あるいは、一暴君の末路 作者: ハインリヒマン,Heinrich Mann,今井敦出版社/メーカー: 松籟社発売日: 2007/10/01メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 199回この商品を含むブログ (16件) を見る ウンラートは唖然とした。キーゼラックが奈落に落ちたことを今初めて知ったのだ。それを引き起こしたのは自分なのだ、という不意の喜びに、ウンラートは燃え上がった。自分の例が他の
私家版世界十大小説 ――after game over 先日来流行の「世界十大小説」。はじめは正統派古典中心のラインナップを組んだ方が多かったが、やがてSFの十大小説を選んだ人(十大小説が流行っている……ああ、もう我慢できない! 私もやるぞ! ――万来堂日記2nd)、ミステリで選んだ人(世界十三小説〜異色ミステリ編 ――「エフエフッ」)、ライトノベルで選んだ人(私家版ライトノベル十大小説 ――雲上四季)、現代文学のみで組んだ人(私家版世界十大小説 ――読書その他の悪癖についてって、手前味噌でゴメン)などが現れ、さまざまなジャンルで十大傑作が選ばれたようだ。――うーむ、この関連の記事を見ていると、楽しいし勉強になるし一石二鳥だのう。 でもどうやら、まだ戯曲の十大傑作を選んだ人はいないらしい。ならばひとつ私がやってみよう。 アイスキュロス『アガメムノン』 シェイクスピア『リア王』 カルデロン『
「あわせて読みたい」からid:natume_yoさんの「世界の果てのクロエの祈り」に飛んでみると、世界十大小説に関するエントリが書かれていた。見ると(これまたあわせて読みたいでお馴染みの)id:ryotoさんが20日に世界十大小説についてエントリを書いてから、はてなダイアリー界隈で十大小説を選ぶのがちょっと流行しているらしい。ならば私も便乗してみよう。 すでにモームの十大小説、篠田一士による20世紀十大小説の著作があり、また多くの方が古典中心に十大小説を選んでいるから、出遅れた私は敢えて古典は別にし、戦後に発表された作品に対象を絞って独自性を出してみようと思う。 ジュリアン・グラック『シルトの岸辺』(フランス) レイナルド・アレナス『夜明け前のセレスティーノ』(キューバ) ダニロ・キシュ『砂時計』(セルビア) ミロラド・パヴィチ『ハザール事典』(セルビア) アナトーリイ・キム『リス』(ロシ
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