番組はいろいろ問題のあったことにも触れていて、割に中立的な構成かなとも思いました。ワイドショーだったら、お涙頂戴の悲劇の英雄に仕立てるか、逆に徹底検証して詐欺師っぽく取り上げるかのどちらかでしょうか。ただ、ネットの感想を見ると、私が割と中立的と思った番組でも、やはり予備知識のない人たちがコロリと引っかかっている様子。
最後の挑戦となったエベレスト南西壁ですが、成功する可能性は0% でした。1%すらない。奇跡的にいい条件に恵まれたら登れちゃう、というような可能性のまったくないルートです。
実力がある人がベストの状況で挑戦しても難しいから、今まで単独登攀で成功した人がいない。山の経験ない人でも「神々の頂」とか読んだことあれば、難しさが伝わるんじゃないかと思います。南西壁への挑戦は、乏しいが可能性があった、というレベルではないわけです。
詐欺と言われるのはしかたのない状況だったわけです。たまにスタートアップでも、実現する可能性がまったくない製品やサービスでも、大風呂敷広げて資金集めしちゃうのがいますが、似てるかもしれません。ある程度知識がある人は近寄らないのに、ないがゆえに引き寄せられてしまうというか。
難しいチャレンジだったというのではなく、そもそも実現する可能性のないことで夢を語られても、ちょっと受け止められないというのが、正直なところかと思います。番組中で登山家の花谷さんが通常ルートであれば、と繰り返し言っていたのは、通常ルートであれば可能性はあったので、少なくとも難しいチャレンジといえる範疇に納まり、共感する余地があったからです。
そういう理解もなく、がんばれ今度はできる!とか声を投げていたSNSフォロワーの罪深さも感じた番組でした。がんばっても登れないものをどうがんばれと。ただ、予備知識のない人にはやはりそれは伝わらなかったのかなと。
今までにも何度もエベレストにトライしては降りてきているので、彼的には最初から形だけで登るつもりはなく、非常に困難なことにチャレンジしてして諦めた、という格好がつけばいいという計算があったのかもしれません。ただ、一方で冷静な計算ができないほど、追い詰められてたという見方もできます。
大学の恩師曰く、ギャグ漫画のキャラのような男だった、ということで、違う方面であればただの変なやつで済んでいたのだと思うのですが、たまたま登山方面で承認欲求を満たすことを見つけてしまったので、悲しいことになってしまったんだろうなと思っています。
https://togetter.com/li/1230038
企業をまわってたくさんのスポンサーを集めたり、自分のバックアップチームを作れるくらいの魅力はあったんだから、他のことに活かせばよかったんだよ。