■ 絶版ラノベ配信サイト、ダイナミックプロが開設 〔 I
Tmedia 〕
■ 「出版界、このままでは崩壊する」――ダイナミックプロ、絶版ラノベ・SFを電子書籍化永井豪率いるダイナミックプロがライトノベル・SFの絶版本を電子書籍化して配信する
ダイナミックアークというサイトを立ち上げましたが、これは非常に素晴らしい試みですね。
ラノベも既に20年以上の歴史となっており、それに伴い老舗のスニーカー文庫なんかは絶版タイトルも膨大な数に上っており、私としてもこれは文化的損失であると憂慮しておりまして、オンデマンド配信を開始すべきではないかと考えていたのですが、遂にやってくれるところが出てきましたか!
古本屋巡りをしてもそうそう目的のものが見つかる保証は無く、無いものはなかなか見つからず悔しい思いをする事もしばしばですので、こういうサイトが出てきてくれるとホント助かります。
一度購入すれば後はいつでもどこでもアクセスさえできれば閲覧可能との事ですから、1冊315円という料金体系はかなり良心的だと感じます。 電子書籍化するのにはそれなりに手間も掛かりますしね。
新品で買うよりは明らかに安いですし、閲覧期間が限定されている訳では無く、サイトが存続される限り永久に好きな時に読む事が可能な訳ですから。手軽に手に取っては読めないというデメリットもありますが、反面場所を取らないとか劣化しないというメリットもありますし。読みたいタイトルの配信が開始されたら是非利用したいです。
よくある動画の有料ネット配信は金取るわりに視聴期間を限定していて著しくコストパフォーマンスが悪い為、有料動画配信サイトはビジネス的に成り立っていない様ですが(料金高すぎですよね)、この小説配信は一度料金を払えばサイトが続く限り未来永劫好きな時に読めるという事ですから、ユーザー側はかなり気楽に利用できますので、充分ビジネスとして成り立つと思います。
サイトの成否はいかに配信タイトルを充実させてくれるかに掛かってますね。 配信予定タイトルでは「未来獣ヴァイブ」なんか結構大物ですが、やはりラノベのメインストリームである角川系のタイトルをどれぐらい出せるかがサイト隆盛の鍵と言えるでしょう。
スニーカー文庫も今となっては黎明期の作品で現在も重版されているのは「ガンダム」と「ロードス」ぐらいのものじゃないですかね。今「聖エルザ クルセイダーズ」とか「ルナ・ヴァルガー」とか入手しようとしたら結構大変ですからねぇ。この機会に「ガイア・ギア」はなんとかならんものか……。
ソノラマ文庫も「青の騎士ベルゼルガ物語」とか「クルーズチェイサー・ブラスティー」とかもう新品では手に入らないので、ここら辺を是非配信して貰いたいところです。
なんか第1弾のラインナップの表紙を見るに、今風のイラストのが多いのがちょっと疑問だったのですが、これらは竹書房の「ゼータ文庫」で出ていたやつだったのですね。なんかこのレーベルは近年創刊されたにも拘らず、1年程で速攻で潰れた様で。竹書房は昔一度「ガンマ文庫」で痛い目見ていたというのに、10年経ってもまたしても同じ愚を繰り返すとは……。(苦笑)
同じ様にレーベル自体が消えうせた、大陸書房ネオファンタジー文庫とかログアウト冒険文庫とか小学館スーパークエスト文庫のラインナップなんかも救済してやって欲しいところです。スーパークエスト文庫から出ていたマクロスの小説とか、今出せれば非常にタイムリーなのですが……。
あと本質的な問題として、PCのモニターはあまり長時間小説を読むのに適していないというのがあります。これは将来的にはスタートレックのパッドみたいなデバイスが普及して解決されるのが明白ですが、今は24世紀じゃないですからねぇ。取り敢えずなんらかの方法でニンテンドーDSでの閲覧も可能にして貰いたいところですね。これなら通勤中にも読み易いですし。
「ヤクザに学ぶ交渉術」山平重樹 幻冬舎アウトロー文庫
山平 重樹
幻冬舎 (2002/12)
売り上げランキング: 58,415
現代はネゴシエーションの時代と言われ、ビジネスマンに至っては仕事の大半が交渉事な訳ですが、だったらそれ以上に交渉事、すなわち「掛けあい」を生活の根幹としているヤクザの交渉ノウハウに学ぼう、という実用エッセイ。帯には「現代ビジネスマン必読の一冊」とまで書いてあります。(笑)
本屋でタイトルが目に止まったんで手に取ったところなかなか面白く、結局購入するに至りました。幻冬舎アウトロー文庫の本を買ったのはこれが初めて。どうも結構売れたらしく、平成14年12月25日に初版が出ているのですが、私が所有しているのは平成15年2月25日発行の第6版のものです。また、購入後に文庫のランキングで上位にランクインしているのを見かけました。作者の山平重樹氏は同じく幻冬舎アウトロー文庫で、他にも何冊かヤクザ関連の著作を出してますね。
様々な事例をあげて、ヤクザの交渉術の秘訣が解説されているのですが、不利な立場を覆したりとか、相手の事も考慮して上手く収めるとか、非常に興味深い内容でした。比較的最近の事例に関してはAとかBとかイニシャルで表記されているのですが、もう半ば伝説化している事例に関しては実名で表記されているんで、ヤクザ社会の歴史にある程度詳しくなれます。
一般人の交渉の場合、当然の事ながら生命のやりとりになる事はまず無いですが、ヤクザの場合は掛けあいから抗争に発展する可能性がある為、それだけ交渉も緊迫感が漂ってます。本書によれば、掛けあいの極意は「気合」で、特にカタギからの頼まれ事の場合は「正義は我にあり」という思い込みが最大の武器になるとの事。確かに、気合負けしていてはどうしようもありませんわな……。小生としても、これぐらい強引に打って出るべきかねぇとも思わせられました。また交渉上手たりうるには、話術、人脈、知識の3つの条件が重要との事です。これは一般の社会と同じですね。ちょっと意外だったのは「口下手、必ずしも交渉下手にあらず」という話で、ヤクザの中には普段は喋るのが苦手で口下手でも、いざ掛け合いとなると的確に物を言い相手を圧倒する人がおり、口下手と掛けあいの上手さにはあまり関係が無いと書かれております。これは自分は口下手だけど、交渉は上手くなりたいと考えている人には朗報というべきか。
実際の一般社会の交渉事にどのくらい応用可能かは分かりませんが、「そうか、こういう考え方も世の中にはあるのか」と、私にとっては色々と新鮮でした。血なまぐさい描写とかはあまり無く、純粋に読み物としても面白と思います。「山口組のキッシンジャー」と言われ、ヤクザ引退後にはフィリピンで反政府ゲリラの捕虜になっていた日本人カメラマンを1年以上に渡る交渉の末救出した元組長の話が、特に面白かったですね。
なお、あくまでヤクザの交渉術についての本なんで、ヤクザに絡まれた時の対処法は殆ど書いてませんので、そういうのが必要なら他の本をあたりましょう(^^;)。
最近では同じ作者のヤクザ関連書籍ともども、竹書房からコンビニ売り向けの漫画版が発売されています。
「ソクラテスの弁明 / クリトン」プラトン著 久保 勉訳 岩波文庫
プラトン 久保 勉
岩波書店 (1964/01)
売り上げランキング: 8,123
実は恥ずかしながらプラトンの著作は読んだ事がなかったのだが、機会があったので「ソクラテスの弁明」を読んでみた。今回手にとったのは岩波文庫版であるが(有名な本だから他にもあるのかな?)これには「ソクラテスの弁明」だけでなく、もう一編「クリトン」というものも収録されている(ついクリントン元米大統領を連想してしまった)。
この本は400円とかなりリーズナブルなお値段で購入は容易なのだが(考えてみりゃ訳者はともかく著者には印税払う必要ないしね)、その為かかなり文庫としては薄い本である。文章がどんな具合かと開いてみると、本が薄い理由が判明した。・・・字が小さい(苦笑)。本書のような古典文学物では特に珍しい事ではないが、現在の文庫本の標準よりも文字が小さい。別に読めないなんて事はないのだけれど、正直お年寄りだとちょっと辛い気も。昔はこのぐらいの字の大きさでも全然問題無かったのだろうか? 文庫の文字は現代に至るまで少しづつ大きくなっている様だが、これは日本人の視力がその分低下しているという事なのかしらと思ってみたりもする。一体初版はいつなのかと奥付を見ると1927年と記載されており、伝統と時代を感じさせられた。
ソクラテス関連の本を読んだのもこれが初めてなのだが(学習漫画の人物評等は除く)、いやぁ難しい(汗)。私にとってはなかなか難しい内容で未だ完全に理解するに至っていない気がする。この本に一緒に収録されている「クリトン」の方は対話形式なのでかなり楽だったが、それでも後の方の殆どソクラテスの独白と化している部分はドンドン難解になっていく感じで難儀した。もっとも、当初思っていた程難解な内容ではなかったというのも正直なところだ。
全部読み終えてみると、ソクラテスは信念の人という印象を受ける。ソクラテスの自分の信念を貫き通した姿には、素直に感動した。自らの正しいと思う道を歩んだ姿が、現在まで歴史に残る最大の要因だったのではなかろうか。むろん、優秀な弟子であるプラトンの功績も大であるが。執筆者のプラトンによる誇張があるにしろ、生き生きと描写されている裁判でのソクラテスのやり取りから、古代アテネの裁判の一端を知ることができて興味深い。
タイトルこそ「弁明」となっているが、内容は殆どソクラテスの「説教」に近いものがあると感じる。実際、裁判に列席した人はそう感じて内心閉口したのではなかろうか。自分で自分の事を賢人と言い切ってしまう所が凄い。自分の生死が決定される裁判においいて、ここまで堂々と自論を展開できるのには感服する他ない。やはり自身が正しいと思った道を貫いたからこそ、現在でもここまで名が残っているのであろう。「クリトン」で述べられている様に、脱獄して生き延びた場合、結局はソクラテスは自分の信念を貫き通せなかった事になり、その後のソクラテスの余生は精彩を欠き、現在ここまで歴史に名を留める事にはなっていなかったのではないだろうか。この裁判で死刑になり、その刑を受ける事は彼を歴史上に永遠に留める事に繋がった訳で、その意味で彼の内なる神霊は彼の言う通り非常に予言的であったと言えよう。
この神霊の声が聞こえるという話は、今の目から見るとそれはひょっとして何か電波を受信しているのでは?と不安になってくるが(笑)、当時裁判の場においても宗教は不可分だった様なので、あくまで真面目に議論されていた事は疑いない。やはりなにかと宗教的背景が色濃い点は、現代日本に生きる身としては多少違和感を感じると共に興味深いところである。「ゼウスにかけて~」というセリフが多用されるなど、如何に当時のアテナイ人にとってギリシア神話が共通の価値観として存在していたかが伺える。
ソクラテスが若い頃は戦争に従軍にしていたという事は、本書を読んで初めて知った。考えてみれば当然の事なのだが、普通の歴史教科書等ではそこまで触れられないからなぁ(汗)。学校の授業で習ったソクラテスおよびその時代背景に対する説明が、本書を読む上で非常に役に立った。後書きの解説でも色々と触れられているが、授業等とは異なる切り口であったし。
「クリトン」における「多衆の意見を気にする必要はない」という意見は、ひたすら流行に流されやすくイマイチ個が確立されていない、現在の多くの日本人に聞かせてやりたいところである。ただ、この考え方は下手すれば超然内閣などとんでも無いものに繋がりかねない危険性も孕んでいると感じるので、国政を動かす立場の人間などになるとまた別の論理が必要であろうが。
ソクラテスの衆愚政治への警戒感は、現在の小泉内閣は衆愚政治か?という論議にそのまま繋がる。これは民主主義の永遠の課題とも言えよう。ソクラテスは民主政治には懐疑的だった様だが、かといって彼自身は貧乏な生活を送っていた訳で、貴族政治などを望んでいた訳ではなさそうだ。この裁判において無罪とする票が意外にも多かったという事実は、ソクラテスに対する当時のアテナイ社会の見方の縮図なのかもしれない。
本書を読んで意外に思った事は、「クリトン」においてソクラテスがやたらと国法の遵守に心を砕いている点である。ソクラテスについては「悪法もまた法である」と言って毒杯をあおいだ話のイメージが強く、ここまで国法に対して従順な考え方をしているとは思っておらず、てっきりもっと批判的な考えの持ち主だとばかり思っていた。
ソクラテスにとって一番幸せだったのは、兎にも角にも優秀な弟子を持った事だと思う。弟子のプラトンが書いた著作によりこうして弁護されているし、歴史に名前がしっかりと刻み込まれたのだから。正にペンは剣よりも強しという事を実感する次第である。
「田宮模型の仕事」 田宮俊作 著 文春文庫田宮 俊作
文藝春秋 (2000/05)
売り上げランキング: 23,313
日本人男性で、タミヤという模型メーカーを知らない人間は少ないだろう。大人ならばそれまでの人生でタミヤのプラモデルを一度は目にした事があるだろうし、若者ならば2度のミニ四駆ブームをリアルタイムで体験した人が多いのではなかろうか。
本書はその田宮模型の社長である田宮俊作氏自らの手による、田宮模型についての本である。
1997年に単行本が出版され、2000年に文春文庫に収められており、現在でも容易に入手する事ができる。
本書は俊作氏の幼少期の模型との関わりとタミヤの創業時代の話から始まっており、その後年代順に「田宮模型の仕事」が語られていく。2000年までの田宮模型の歩みがわかるようになっていると共に、会社と歩みを同じくしてきた俊作氏の自伝的な色彩も強い。タミヤは日本の模型メーカーの中でも中心的大手である訳で、読者は読み進めていくうちに俊作社長の視点を通してタミヤだけでなく日本のプラモデルの流れをも知る事となる。
私自身は2度のミニ四駆ブームを体験した人間であり(第一次ブームの時は対象年齢として、第二次の時はブームと技術進歩を観察する形で)、その事からタミヤに親近感があったので書店で本書を手にしたのだが、内容の面白さとタミヤの会社の歴史には驚かされた。
木製模型からプラモデルへの転換、画家の故小松崎茂氏の助け、金型の自社生産、博物館への取材、ホンダF1のキット化。そしてミニ四駆・・・、タミヤの歩みはまさに波乱万丈の連続ではないか。特に、小松崎茂氏の箱絵のパンサー戦車で危機を乗り切ったエピードには非常に感動した。正直NHKの「プロジェクトX」で取り上げられなかったのが不思議なぐらいだ。
私自身プラモデル製作を趣味としているが、その歴史や舞台裏についての知識は殆ど皆無であった為、本書は初めて知る事の連続だった。タミヤが世界的な企業であり、日本のプラモデルがそんなにも世界で受け入れられていたとは! 金型についての話を読めば、誰もが工業製品に対する見方を変える気がする。プラモデル以前の模型の主流であった木製模型についてもしっかり触れられており、何故プラモデルが現在では静岡の特産品になっているのかもわかる。模型メーカーの内幕について詳しく書かれた書籍はあまり無く、それだけに本書の意義は大きい。本書はタミヤだけでなく日本の模型について第一級の参考文献であると言える(ちなみに、「SDガンダム」についても第二次ミニ四駆ブームに関して少しだけ触れられている)。
最初に単行本として刊行された1997年はまだ第2次ミニ四駆ブームの最中であり、当然ミニ四駆についてもかなりのページが割かれている。ミニ四駆ブームは今では過去のものとなっている為、今読んでみると懐かしい気がすると共に、栄枯盛衰の早さを思い知らされた。もっとも、本書の終章で触れられているように、タミヤは必ずや新たなミニ四駆ブームを現出させ、二度ある事は三度ある実践してくれるだろう。
模型について書かれた本となると、専門用語などが多くて難しいのではないかと敬遠される向きもあるかもしれないが、その心配は全くの杞憂である。模型の専門的な部分も解りやすく解説されているので、あまり模型に詳しくない人が読んでも全く問題無い。文章は決して難しくなく、読み進むうちにぐいぐい引き込まれていった。著者の田宮俊作氏はかなり文学的な才能もあるのではないかとさえ思える。例えるなら戦闘機パイロットでかつ文学的才能も持ち合わせていた坂井三郎氏みたいなものか。
非常に面白い内容であり、模型についての本という事で子供も興味を持つ事間違い無いと思うのだが、惜しむらくは通常の文庫本である為に漢字にルビが振ってない事だ。フリガナさえ振ってあれば子供も楽しめる内容だと思うので、次は講談社の「青い鳥文庫」あたりにも収録されれば良いと思うのだけど、どうでしょう。
模型業界についての重要文献であり模型ファンには必携の書と断言できるが、それだけでなく非常に面白い本なので模型ファン以外の方にも強くお薦めしたい一冊である。
童話作家の寺村輝夫さん死去 <
asahi.com>
寺村輝夫 - Wikipedia小学生の頃に読んで好きだった王さまシリーズの作者が亡くなられてしまうとは……。77歳ですから、天寿をまっとうなされたという事なのでしょう。ご冥福をお祈りします。
寺村氏は多数の著作を発表なされて(アマゾンで検索したら凄い数が)色々なシリーズを展開なされていましたが、読んだものどれもが面白かったです。時々、ふと子供の頃に読んだ「ぼくは王さま」等の事を思い出す事があり、いずれは王さまシリーズは全て読破してみたいものだと野望を抱いていたので、今回の訃報はまことに残念です。
それにしても、最近色々と馴染みのある方々の訃報が続くなぁ……。・゚・(つД`)・゚・