でんかいしつ‐ようえき【電解質溶液】
電解液
電解質溶液
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/14 04:06 UTC 版)
イオン性物質(いわゆる塩)は正と負との二つのイオンフラグメントから構成される為、溶質成分のイオン間に静電相互作用に起因する強い束縛力が働く。それ故、イオン性物質の溶液は独特の挙動を示し電解質溶液(でんかいしつようえき、electrolyte solution)と呼ばれる。 溶媒分子が分極することが出来る場合、イオン電荷の周りを分極した溶媒分子が取り囲むことで電荷を分極分子が遮蔽するので、相対的に、静電相互作用の力が弱められる。このような極性溶媒にイオン性物質が陽イオンおよび陰イオンに解離して溶解する現象を電離とよびその結果生じる溶液が電解質溶液である。したがって、電解質溶液は極性が高い溶媒についてのみ生成する。言い換えるとベンゼンなど極性が弱い溶媒はイオン性物質を溶解することができない。 溶液中におけるイオン対の解離定数は以下のようなイオン間の静電気力に基くJ. Bjerrumの理論式で与えられる。ここで A {\displaystyle A} は定数、 N A {\displaystyle N_{A}} はアボガドロ定数、 e {\displaystyle e} は電気素量、 z X {\displaystyle z_{\rm {X}}} はXの電荷、 r X {\displaystyle r_{\rm {X}}} はイオン半径を表し、また解離定数は溶媒の比誘電率 ε {\displaystyle \varepsilon } に著しく影響を受けることになり、一般的に極性が強く比誘電率の高い溶媒ほど電解質を強く解離させ、溶解度が大きくなる。 p K d = A + N A e 2 ln 10 ⋅ R T ⋅ z X z Y r X + r Y ⋅ 1 ε {\displaystyle {\mbox{p}}K_{d}=A+{\frac {N_{A}e^{2}}{\ln 10\cdot RT}}\cdot {\frac {z_{\rm {X}}z_{\rm {Y}}}{r_{\rm {X}}+r_{\rm {Y}}}}\cdot {\frac {1}{\varepsilon }}} イオン電荷の周りに極性溶媒分子が分極により集合した状態は溶媒和(ようばいわ、solvation)と呼ばれる。溶媒和は中心イオンの電荷が多いほど強く作用し、大きさ(直径)が小さいほど強く働く。また、溶媒の分極が大きいほど溶媒和は安定となる。あるいは溶媒分子が嵩高い場合は、十分な数の溶媒が配向することが出来なくなるので溶媒和効果が弱くなる。 このように、正または負のイオンに対する溶媒和効果はイオンの電荷密度に左右される為、必ずしも等価ではない。例えば相間移動触媒のクラウンエーテルは金属カチオンを抱合することで溶媒和と同様な作用を現す。すなわち、二クロム酸カリウムはカリウムイオンがクラウンエーテルに抱合されてベンゼンに溶解すると二クロム酸アニオンもベンゼンに溶け込むようになる。これは二クロム酸アニオンは電荷のわりには分子のサイズが大きい為にベンゼンの弱い分極でも十分に電荷が遮蔽され安定化する為である。
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