電気化学とは? わかりやすく解説

でんき‐かがく〔‐クワガク〕【電気化学】

読み方:でんきかがく

電気的エネルギー物質化学変化との関係を研究する化学一部門。


電気化学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/03 13:45 UTC 版)

アレッサンドロ・ボルタによって16世紀末に発明されたボルタ電池

電気化学(でんきかがく、: electrochemistry)は、物質間の電子の授受と、それに付随する諸現象を扱う化学の分野である。物理化学分析化学化学工業などとの繋がりが深い。

歴史

電気化学の歴史は1781年にイタリア人化学者のルイージ・ガルヴァーニがカエルの脚(筋肉組織)に対する電気刺激の実験中に「動物電気 (animal electricity)」を発見したところから始まる(ガルヴァーニ電気)。電気自体はそれ以前に存在が認識されていたが、電気が化学に関連している可能性を示唆したのは彼の発見である。しかしながら彼は電気がカエルの筋肉に蓄えられており、それが金属に接触して電気が流れたと考えていた(生体自体に発電の仕組みがあると考え、ゆえに動物電気と名付けた)。現在における化学の観点で電気発生のメカニズムを発見したのは同じくイタリア人化学者のアレッサンドロ・ボルタの功績である。1799年、彼はガルヴァーニの実験を基にして史上初の化学電池ガルバニ電池)であるボルタ電池を発明し、電気がイオン化傾向の異なる二つの電極と電解質からなる電池によって生まれることを示した。また、その翌々年にはウィリアム・ニコルソンアンソニー・カーライルが水が電気分解されることを発見した。

電気化学反応が電極の酸化還元の傾向や電解質に関連していることはその後の研究で明らかとなり、数多くの電池が開発された。その中でマイケル・ファラデーにより、ファラデーの電気分解の法則が発見される。この発見で物質量電気量と密接な関係を持つことが明らかとなり、化学反応の理解に大きな寄与を果たした。

19世紀末には、熱力学の発展が電気化学に大きな影響を及ぼした。ヴァルター・ネルンストによるネルンストの式の提唱である。これによって電気化学反応は一般の化学反応と同等に扱うことが出来るようになった。電位ギブズエネルギーを電気量で割ったものであることを示したこの式は、電位差が電気化学反応を推し進める原動力であり、電位差がなければ電気化学反応が起こらないという事実の理論的な裏づけとなったのである。

各論

電気化学では、電解質溶液の性質・電極反応の速度、界面での電気化学的現象などを扱う。これらの現象は1929年にエドワード・グッゲンハイム英語版が提唱した電気化学ポテンシャルを基礎として、相互に関与しあった複雑な理論体系を築いている。

電解質溶液論
電解質溶液の研究は1883年のアレニウス電離説に始まり、コールラウシュの法則オストワルド希釈律ドイツ語版英語版デバイ・ヒュッケルの理論オンサーガーの理論などに基づき、溶液の電気伝導について議論する。溶液化学との関連が強い。
電極反応論
電極表面での反応は、電極から物質への電子移動過程と、反応に関わる物質の拡散過程に分けて考えられる。電子移動過程の反応速度理論は1889年に発表されたアレニウスの式ネルンストの式を出発点とするバトラー・ボルマー式

を基本として、その発展系であるターフェルの式マーカス理論によって議論される。拡散過程はフィックの法則で取り扱われる。

界面現象
電気化学では、電極と溶液の界面、あるいは溶液同士の界面などでの界面化学現象も取り扱う。電極と溶液の界面には電荷分離が起こり、電気二重層が形成される。溶液間の界面にはイオン移動度の差に由来する液間電位が発生し、ネルンスト・プランクの式英語版ゴールドマンの式英語版、ヘンダーソンの式により定量的な取扱いがされる。

応用

電気化学測定

化学物質の性質を電気的に計測する方法を電気化学測定といい、化学物質の濃度や種類、電極上での酸化還元反応の詳細な機構などについての情報が得られる。電極電位を制御するポテンシオスタット英語版や、電流を制御するガルバノスタット英語版が用いられる。

最も基本的なものは溶液の電極電位を測定する電位差滴定(ポテンシオメトリー)であり、ガラス電極の電極電位から水素イオン濃度 (pH) を測定するpHメーターなど、様々なセンサーに応用されている。

その他、代表的な測定方法としては、電圧変化に対する電流応答を測定するボルタンメトリー、一定電圧に対して電流の時間変化を測定するクロノアンペロメトリーやクロノクーロメトリー、交流電源の周波数変化に対するインピーダンスを測定する交流インピーダンス法などがある。

光電気化学

光を照射される事によって表面に電位差が生じて電気化学反応を起こす。(本多-藤嶋効果)全ての半導体でその現象があり、それによってイオン化したり水溶液を電気分解するものもある。実用面では光触媒色素増感太陽電池等が挙げられ、有用な化学原料の合成も試みられる[1][2]

脚注

  1. ^ 太陽光により水と酸素から過酸化水素を合成する革新的光触媒の開発
  2. ^ 光電極を用いた酸化剤と水素の効率的な製造方法を開発

関連項目

外部リンク


電気化学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 03:31 UTC 版)

プレプリント」の記事における「電気化学」の解説

ECSasXivは、電気化学、固体科学固体技術学のための研究リポジトリである。このリポジトリはThe Electrochemistry Societyによって運営されOpen Science Frameworkによって構築ホストされる。

※この「電気化学」の解説は、「プレプリント」の解説の一部です。
「電気化学」を含む「プレプリント」の記事については、「プレプリント」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「電気化学」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

電気化学

出典:『Wiktionary』 (2021/08/22 10:21 UTC 版)

名詞

電気化学でんきかがく

  1. 電子授受伴った化学現象を扱う学問電池腐食などと深い関わりを持つ。

翻訳


「電気化学」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。

Weblioカテゴリー/辞書と一致するものが見つかりました。




電気化学と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

','','','','','','','','','','','','','','','','','',''];function getDictCodeItems(a){return dictCodeList[a]};

すべての辞書の索引

「電気化学」の関連用語





5
98% |||||



8
98% |||||



電気化学のお隣キーワード
検索ランキング
';function getSideRankTable(){return sideRankTable};

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



電気化学のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの電気化学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのプレプリント (改訂履歴)、鈴木三郎助 (改訂履歴)、ヴァルター・ネルンスト (改訂履歴)、塩橋 (改訂履歴)、ニッケル・鉄電池 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの電気化学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS