酸と塩基とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 化学 > 分子化学 > 塩基 > 酸と塩基の意味・解説 

酸と塩基

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/07 09:02 UTC 版)

化学 > 酸塩基化学 > 酸と塩基

化学において、酸と塩基(さんとえんき、英語: acid and base)とは、および塩基の総称である。化学物質分類法の1つ。

酸と塩基は、互いに正反対の性質を持っており、対義語の関係にある。

概要

に溶かすと、酸性水溶液ができる。また、塩基を水に溶かすと、塩基性(あるいはアルカリ性)の水溶液ができる。

酸にも塩基にも分類されない化学物質には、特別な名称は与えられていない。しかしその中でも特に、中和反応(あるいは酸塩基反応)と呼ばれる化学反応に由来する化学物質(すなわち、中和することでその化学物質を生成するような酸と塩基の組が、少なくとも1組存在するもの)については、『』という名称が与えられている。

酸性でも塩基性でもない、両者の中間に相当する水溶液のことを、中性の水溶液という。ただし、『酸にも塩基にも分類されない化学物質』を水に溶かしても、その水溶液が中性になるとは限らない。その代表例が、塩の加水分解である。すなわち、『酸性の水溶液や塩基性の水溶液を作ることができる溶質は、酸や塩基だけではない』という点には注意が必要である。

以上の説明は、との反応を重視しないブレンステッド・ローリーの定義ルイスの定義を用いたものである。しかし、水との反応を重視するアレニウスの定義を用いた場合は、この限りではない。

すなわち、アレニウスの定義を用いた場合は、『酸性の水溶液や塩基性の水溶液を作ることができる溶質は、酸や塩基だけ』である。

定義

現代の化学では、主にアレニウスの定義ブレンステッド・ローリーの定義ルイスの定義ウサノビッチの定義という4つの定義方法が存在する。アレニウスの定義が最も厳しく、この順に、酸あるいは塩基に分類される化学物質の種類が増加していき、酸にも塩基にも分類されない化学物質の種類が減少していく。

そのときそのときの目的に応じて、最も適切な定義を採用することが大切である。

アレニウスの定義

スウェーデン科学者スヴァンテ・アレニウスは、酸と塩基を以下のように定義したMF1(p144)


  • 酸:
    リトマス試験紙
    • を溶かし、その水溶液リトマス試験紙につけると、リトマス試験紙の色が赤色に変色する。逆に、水に塩基を溶かし、その水溶液をリトマス試験紙につけると、リトマス試験紙の色が青色に変色する。
    • 酸性の水溶液はを溶かして水素を生じる。(塩基性では反応なし)
    • 酸性の水溶液には酸味があり、塩基性の水溶液には苦味がある。
    • 塩基性の水溶液が皮膚に付着すると、ヌルヌルとした感触が感じられる。

    強度

    ある溶液の酸性(塩基性)の強弱は、それに溶けている酸(塩基)固有の「強度」と、溶液中のその物質の「濃度」に依存する。例えば、硫酸は物質としては強い酸であるが、もし濃度が低ければ、溶液全体の酸性は弱い。

    それぞれの物質固有の(濃度に依存しない)強度の指標としては、酸解離定数 (pKa) がある。また、濃度を加味した溶液としての性質の指標として水素イオン指数(pH) 、酸度関数 (H0) および規定度がある。これらは場合によって使い分けがされる。酸性度をあらわすために希薄水溶液中では pH を用いるのが一般的であるが、濃厚溶液および非水溶媒中においては酸度関数を用いる。

    また有機溶媒中での反応を議論することの多い有機化学では、反応物の水素イオンの解離の程度を pKa によって議論することが多い。

    物質固有の強度

    水中で電離する化合物の酸性(塩基性)の強弱は、その物質の電離度によっておおまかに分類される。電離度は電解質が溶液中で解離(電離)しているモル比をあらわす値で、電離度がほぼ 1 である酸(塩基)を強酸強塩基)、電離度が小さいものを弱酸弱塩基)と呼ぶ。また、純硫酸よりも強い酸性媒体を超酸ということがある。

    より定量的に酸(塩基)の強さを示す場合は、解離平衡を考え、その平衡定数 Ka対数に負号をつけた酸解離定数 pKa で表すことが多い。塩基に対しては、共役酸の pKa か、特に水中の場合では塩基解離定数 pKb = 14 − pKa が用いられる。

    例えば、酢酸pKa は 4.76 、ギ酸pKa は 3.77 である[1]pKa は定義から数値が小さいほど水素イオンを解離しやすい、すなわち強い酸であることを示す。したがって、同じ弱酸でもギ酸のほうが酢酸より 10 倍強いことが分かる。

    また、この表記法を用いると、有機物など通常電離するとは考えない化合物に対しても酸・塩基の強度すなわちプロトン解離の指標として用いることができる。例えば、水中でのメタンpKa は 48、ベンゼンは 43 であり、ベンゼンの水素の方がはるかに酸性が強い(すなわち、プロトンとして引き抜かれやすい)ことが分かる。[2]

    塩基の強さは共役酸の pKa から判断することができる。例えば、プロトン化されたアンモニア(アンモニウム)のpKa は 9.2、トリエチルアミンは 10.75 である。すなわち、トリエチルアミンに配位したプロトンはアンモニアの場合に比べて 1 桁ほど解離しにくい。このことは、トリエチルアミンがアンモニアに比べて 10 倍強い塩基であることを示している。

    酸解離定数を指標として用いることで、クライゼン縮合など、水素引き抜きが関与する反応に必要な塩基を推量することができる。

    また酸と塩基には、「硬い」「軟らかい」という表現をされる定性的な性質がある。詳しくはHSAB則を参照。

    濃度を含めた強度

    ある物質の溶液の酸・塩基を議論する際には、その物質の濃度も重要な要素となる。濃度を含めた酸・塩基の指標としては、規定度水素イオン指数がある。

    規定度は酸・塩基の価数とモル濃度の積で表される値で、単位 N で示される。ただし、IUPAC [3]ならびに日本の計量法[注釈 3]等では使用が推奨されていない。

    水素イオン指数(pH)は、通常は水溶液中において、水素イオンの濃度を対数で示したものである。水素イオン指数は現実的な酸・塩基の強度にあった指標であるが、単純に酸・塩基の濃度に比例するものではないため、値を知りたい場合には酸塩基指示薬などによって調べる必要がある。また、水溶液以外に適用する場合には、自己解離水平化効果を考える必要がある。

    室温では、pHが7のとき中性、7より小さいとき酸性、7よりも大きいとき塩基性である。

    代表的な酸・塩基

    脚注

    注釈

    1. ^ この物質を構成していた陰イオンが、

「酸と塩基」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



酸と塩基と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

','','','','','','','','','','','','','','','','','',''];function getDictCodeItems(a){return dictCodeList[a]};

すべての辞書の索引

「酸と塩基」の関連用語




4
塩基性塩 デジタル大辞泉
90% |||||


6
72% |||||

7
オストワルト デジタル大辞泉
72% |||||

8
中和熱 デジタル大辞泉
72% |||||

9
酸性塩 デジタル大辞泉
72% |||||

10
酸性酸化物 デジタル大辞泉
72% |||||

酸と塩基のお隣キーワード
検索ランキング
';function getSideRankTable(){return sideRankTable};

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



酸と塩基のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの酸と塩基 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS