印象派
印象主義
【英】:IMPRESSIONNISME
【別称】:印象派
19世紀後半のフランスに起きた最も重要な絵画運動で、その影響は欧米をはじめ日本にまで及ぶ。1874年春にモネ、ピサロ、シスレー、ドガ、ルノワール、セザンヌ等を中心とする画家が官展のサロンに対抗して団体展を開いた際、新聞記者ルロワがモネの「印象−日の出」をもじって彼らを印象派と呼んだ。印象派という名称はこのことに由来し印象主義という用語もそこから派生した。印象主義は写実主義を受継いで特に外光派の戸外制作を重んじ、かつマネに啓発されて明るい色彩を用いて外界の事物を光をあび、空気で包まれた印象として表現した。光の変化に応ずる色調の変化や空気のゆれ動きを効果的に描くために、固有色を否定し、筆触を小さく分割し、色調を原色に還元したことが技法上の特徴とされる。印象主義は必ずしも体系化された理論をともなわず、組織的にはゆるやかな結びつきにとどまったため、1880年代以降各画家の個性の進展と円熟にしたがい、またスーラやゴーガンなど新世代の登場ともあいまって多様化の様相を深めた。
後期印象派
【英】:POST-IMPRESSIONISM
【別称】:印象派
1910年にイギリスの美術批評家ロジャー・フライによって組織され、ロンドンのグラフトン・ギャラリーで開催された「マネと後期印象派展」に由来する語で、セザンヌ、ゴッホ、ゴーガンの3人を指すものである。印象派や新印象派とは異なる大画家で、後世に多大な影響を及ぼした者という意味内容で、特定の美術運動を指すものではない。しかし、近年ではアメリカの美術史家ジョン・リウォルドが、新印象派やルドンを含めて、おもにアンデパンダン系統の画家たちを総括する用語としてこれを使用したりもしている。
新印象主義
【英】:NEO IMPRESSIONNISM
【別称】:印象派
19世紀末のフランスの絵画運動。新印象派、ディヴィジヨニスム(分割主義)ともいう。1886年の最後の印象派展で初めて明瞭な姿を現わし、スーラとシャニックによって代表される。シュヴルールやシャルル・アンリなどの光学理論や色彩論に触発され、印象主義を継承しつつこれをさらに科学的に追求して、画面に一層の明るさと輝きを与えようとした。技法としては、パレットや画布上での混色を避け視覚混合を徹底したことが最大の特色である。スーラの古典的秩序の追求により印象主義がおろそかにしたフォルムを再び絵画の中にとり戻し、造型秩序を画面に構築したことは絵画史上における意義として特筆される。科学性と理論性の追求という特色により、キュビズムや未来派に大きな影響を与えた。
印象派
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/14 03:08 UTC 版)
印象派(いんしょうは)または印象主義(いんしょうしゅぎ)は、19世紀後半のフランスに発した絵画を中心とした芸術運動であり、当時のパリで連続して開催することで、1870年代から1880年代には突出した存在になった。この運動の名前はクロード・モネの作品『印象・日の出』に由来する。この絵がパリの風刺新聞『ル・シャリヴァリ』で批評家ルイ・ルロワの槍玉に挙げられ、皮肉交じりに展覧会の名前として記事の中で取り上げられたことがきっかけとなり、「印象派」という新語が生まれた[1]。
注釈
- ^ 広義の写実主義は西洋美術の伝統であり、アカデミーや新古典派も見えるとおりに描きながら理想的な形へ整えていく写実描写を実践している。ここで言及しているのは、そのような理想化は一切しないで、ありのままに捉えようとする運動としての19世紀の写実主義(レアリスム)のこと。
- ^ ゴーギャンは、出展したが、カタログ作成には間に合わず記載されていない。新関 (2000: 75)。
- ^ モネは、出展を希望しなかったので、カイユボットが借り集めて出展した。新関 (2000: 75-76)。
- ^ マリー・ブラックモン、メアリー・カサット、ベルト・モリゾの女性3名はポスターへの名前掲載を拒否したのでポスター上は15名。新関 (2000: 76)。
出典
- ^ シルヴィ・パタン; 村上伸子訳 『モネ-印象派の誕生』 (1版) 創元社、2010年、42頁。ISBN 978-4-422-21127-5
- ^ 海野 弘『パトロン物語-アートとマネーの不可思議な関係』(初)角川書店、2002年6月10日、62-71頁。ISBN 4-04-704087-8。
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- ^ “テオドール・ジェリコー-メデュース号の筏-(画像・壁紙)” (2008年3月17日). 2014年11月2日閲覧。
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- ^ 「美術検定」実行委員会 2008, p. 67.
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- ^ 「美術検定」実行委員会 2008, p. 68.
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- ^ Nathalia Brodskaya, Impressionism, Parkstone International, 2014, pp. 13-14
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- ^ [The Art Book, 1994 Phaidon Press, page 33, ISBN 91-0-056859-7 http://uk.phaidon.com/store/art/the-art-book-mini-format-9780714836256/]
- ^ Bomford et al. 1990, pp. 21–27
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- ^ Sontag, Susan (1977) On Photography, Penguin, London
- ^ Gary Tinterow, Origins of Impressionism, Metropolitan Museum of Art,1994, page 433
- ^ 新関公子「幕末から明治初期の西洋体験」(東京美術学校物語 西洋と日本の出会いと葛藤―2)岩波書店『図書』2023年2月、42‐47頁、引用は47頁。
- ^ Baumann; Karabelnik, et al. (1994), p. 112.
- ^ 新関 (2000: 74-78)。
印象派
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 15:08 UTC 版)
筆触分割は印象主義運動を特徴づける根本要素となった。通常画家は光の変化が少ないアトリエ内で絵画の制作を行うものであったが、モネやルノワールを始めとする印象派は戸外にて筆を握り、刻々と変化する自然の様子を画面に抑えようとした。印象派が試みたこととは自然に対する観察の主体たる画家たちが主観的、感覚的に捉えた現実をより正確に描写することであった。 存命中優れた色彩画家であったドラクロワから修業時代の印象派の画家らは強い影響を受けるとともに、このロマン派の巨匠が参考にしたシュブルールの色彩理論は、印象主義の理論的基本となった。普通新たな色は絵の具を混ぜることによるのだが、この方法では絵の具の色が原色よりも暗くなるという欠点があり、太陽の光を受けた自然の明るい色彩をそのまま表現するには不足があった。ある瞬間に画家の目に映った光景を自然的な光の効果とともにキャンバスに定着しようと試みる過程で筆触分割という手法が洗練されていった。 印象派の先駆者であるクロード・モネは、 戸外にて絵画を制作する際には、木や家、土地であれなんであれ、君の前に見える対象物を忘れるように努めなさい。単に、ここには四角い青、そこには横長のピンク、ここは黄色い線というように考え、現前する景色に対して純粋な印象をあなたに与えるまで、目に見えた物をそのままの色や形で描くようにするのです。 というように、描く対象の形態に留まらず、それが画家に与える色彩の印象を描くということを語った。時間の流れに伴い絶えず変化する空気や光の効果を瞬時に、そして直接的に彼らの感覚でもって如実に表現することに苦心した。同じく、印象主義の中心人物であるポールセザンヌも、 基本的に私は描く際に何一つ考えない。ただ、色彩を眺める。私は喜びをもってそれらをただ見たままにキャンバスへと運ぶ。 と、対象物を描く際に画家が抱くありのままの直感や感覚の重要性を強調した。このように目の前に広がる風景の一瞬を画面に収めるのに、筆触分割という技法は適していた。
※この「印象派」の解説は、「筆触分割」の解説の一部です。
「印象派」を含む「筆触分割」の記事については、「筆触分割」の概要を参照ください。
「印象派」の例文・使い方・用例・文例
- モネは印象派創始者の一人としてたいへん高く評価されている
- クロード・モネは印象派の画家だった
- 彼はフランス人で印象派と呼ばれる画家だった。
- モネの芸術は印象派を代表している。
- あの絵画は印象派美術の傑作である。
- この画家はフランス印象派の作風の強い影響を受けている.
- 印象派の画家たちはそれまでの美術が単なる写実に堕してしまったと感じた.
- 印象派
- 後期印象派
- 博物館は、お金を工面するために、フランス人の印象派のコレクションを売却した
- 印象派の学校の典型的な絵
- 印象派音楽
- フランスの作曲家で、音楽における印象派を作り上げたといわれる(1862年−1918年)
- フランスの印象派の画家(1834年−1917年)
- フランスの後期印象派の画家で、南太平洋で活躍した(1848-1903)
- 日本人画家で、作品が印象派の画家に影響を与えた(1760年−1849年)
- フランスの画家で、その作品は印象派に影響を与えた(1832年−1883年)
- フランスの印象派の画家(1840年−1926年)
- フランスの印象派画家(1841年−1919年)
- 英国の風景画家で、光と色の取り扱いはフランスの印象派画家に影響した(1775年−1851年)
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