価格調整機能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 22:49 UTC 版)
公開の市場で多種多様な思惑を持った多数の参加者が競り合うことによって売り手と買い手の力関係により価格が決定されるため、理論上その時点での最も公正な価格が決められること。逆に言えば先物取引の取引の衰退は取引対象の上場商品の価格が不透明になることを意味する。 特に商品先物取引の場合、先物価格を指標として生産者が生産調整を行うことがあるため、将来価格が高い場合は生産量が増えて需要が後退することで結果的に価格が下がり、将来価格が低い場合は、逆の現象が生じる。又、先物価格がかなり高い場合は、生産設備の増設などにより、増産に伴う将来の相場の下落の要因となり、先物価格がかなり安い場合は、生産者の倒産や廃業により、過剰な生産設備が整理などがされ、減産による将来の相場の上昇の要因となる。 よって、需給に見合った価格形成ができる(自由経済は価格中心の経済であり、価格の騰落によって、場所的又は時間的に物資の需給が調節される経済である)。このため、商品価格の乱高下が減り、価格の安定化をもたらすと考えられている。 また、非公開の市場内部の出来事に出来ないため生産者等による価格カルテルの実行を困難にする側面もある。ただし、仕手やファンド等の介入で価格が、ある程度乱高下する場合もある。又、売り崩しや買占めについては極力排除されるように制度化されている。銀相場におけるハント兄弟の買い占めが世界的な事象として知られているが、結局、段階的な取引の規制により、彼らは暴落で大損失を被ることになる。 また、国家による、安定基準価格の維持のため、糸価対策と称した事実上の価格操作の例として、事実上の国家統制 (上下の安定帯の幅の中に市場メカニズムを生かしながら過度の価格の変動を防止する制度)により国内外の価格差があり過ぎる場合も問題点が出てくる(国内高、海外安)。 仕手戦で仕手筋、投機筋が生糸価格をずっと高くつり上げ、その後、生糸価格が暴落した時、その仕手筋、投機筋はその生糸を蚕糸砂糖類価格安定事業団(蚕糖事業団)に持ち込み、蚕糖事業団はその生糸を購入をした。その結果、蚕糖事業団の在庫生糸にカビが大量発生してしまった。これは、その制度の盲点と生糸の先物取引を仕手筋がうまく利用して、何も知らない蚕糖事業団が生糸の大量在庫を抱え込み、国庫負担を生み、結局は国民負担(納税者負担)という形で決着した例である。 これは、会計検査院から指摘を受け、結局、多額の欠損金を生んだ。 もっとも、仕手化して、予想外の事態が生じて、意外な相場が出現しても、その仕手戦が終了すれば、異常な相場は訂正され結局は、実勢の相場になる。又、公開された自由な市場においては不自然な高値は売り物を呼び、不自然な安値は、買い物を呼び相場を自然の位置に戻す作用が機能する。したがって、買占めや売崩しは、不成功に成り易い。 また、先物上場によりもたらされた販売マージンの縮小に伴う国内のガソリンや金の小売価格の内の販売マージン分の低下にも寄与した例もあり、消費者にもメリットがある。
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