エロス
エロスとは、ギリシャ神話における愛と美の神であるエロース(Eros)に由来する言葉で、性的な愛や情熱、魅力を指す概念である。エロスは、人間の心や感情に深く関わる要素であり、文学や芸術、哲学など様々な分野で取り上げられている。エロスは、対象に対する魅力や欲望を生み出す力であり、人間関係や社会の構築において重要な役割を果たしている。
エロス
「エロス」とは・「エロス」の意味
エロスとはギリシャ神話では愛を司る神の名前であり、哲学においては愛の形のひとつでもある。ギリシャ神話におけるエロスは、諸説あるが愛と美を司る女神アフロディーテの息子といわれている。背に翼を持ち、恋をもたらす金色の弓矢を携える姿が特徴的だ。絵画などで見られるエロスの姿はふたつの見た目に分かれており、美しい青年であったり幼い幼児の姿をしていることもある。古代から中世時代までは青年の姿のイメージが強く、後の「愛と心の物語」では自らが恋に落ちて伴侶のプシュケーを得る話のモデルになっている。一方、幼児の姿はギリシャより後のローマ神話に登場するクピド(キューピッド)の影響が大きい。クピドにはいたずら好きな性格があるため、中世以降では無邪気さを表すために幼い姿で描かれるようになった。見た目が似ているため、よく天使と混同されることが多い。なおエロスは日本語の読み方で、ギリシャ語では音を伸ばしてエロースと読む。
エロスが司る愛とは恋心と性愛で、とても情熱的なものである。理性を失うほどの衝動的に突き動かされる強い感情だ。エロスが放つ金の矢に射抜かれれば、たとえ神であっても恋心を静めることができない。またエロスにはもうひとつの力として鉛の矢を放つこともあり、これに射抜かれたものは決して恋に落ちることがなく破局をもたらす。つまり、エロスには恋愛の成就と破滅という両極の力があるのだ。
古代ギリシャにおいては哲学が盛んで、愛という感情についても様々な意見交換がされてきた。代表的なのがエロス・フィリア・アガペー・ストルゲーで、それぞれ愛の概念について説かれている。エロスはいわば男女間を結びつける恋愛であり、フィリアは友人間の友愛でストルゲーは親子や兄弟間の家族愛、そしてアガペーは神から人間に向けられる無償の愛だ。特にエロスとアガペーは向けられる愛の方向性の違いから対極の位置にあるといわれている。精神的な繋がりのプラトニックとも違い、エロスがもたらす感情は原始的なものに近い。
哲学界ではエロスも崇高なものとして捉えられているが、日本語として使われる場合はもっと俗物的だ。エロスを和訳すると愛欲となり、愛情という感情よりも性的な意味合いが強くなる。性的な行為や表現をエロティシズムといったり短くエロと略されているため、エロスという単語が恥ずかしいものに感じられるが、本来の意味とは少しずれていることに注意しなくてはならない。
他にも意外な場所にエロスの名前がある。それが宇宙空間であり、古来より天上に神が住む世界があるといわれていることから天体に神々の名前を付けることは珍しくはない。火星の内側に軌道を持つ小惑星433ことエロスは、1898年にウイットによって発見された。火星に関わる小惑星の中では初めて発見されたもので、大きさは20から30キロメートルほどで細長い形をしており、丸いイメージの惑星とはかけ離れている。小惑星433は周期的に地球から2300万キロメートル付近のところまで接近するため、太陽系の距離測定の基準にされている。また、打ち上げられた地球資源観測衛星にもエロスと名ずけられている。
「エロス」の使い方・例文
・ギリシャ神話に登場するエロスは恋愛の神様だ・ギリシャ神話のエロスとローマ神話のキューピッドは同義語である
・エロスは夜のたまごから生まれた
・有名なエロス像はピカデリー・サーカスにあるから見てみたい
・あの人はとてもセクシーでそこかしこからエロスを感じるよ
・艶かしい姿はまさにエロスそのものだ
・好きな人に振り向いて欲しいからエロスにお願いして恋を叶えてもらう
・エロスの伴侶のプシュケーは元々人間である
・もうすぐ探査機が小惑星エロスに到着する
・衛星のエロスが打ち上げ成功だから祝杯だ
エロス【(ギリシャ)Erōs】
読み方:えろす
ギリシャ神話で、愛の神。アフロディテの子。ローマ神話のクピド(キューピッド)またはアモルにあたる。恋の弓矢を持つ幼児の姿で表されることが多い。
エロス【EROS】
エロス Eros
エロース
エロース Ἔρως | |
---|---|
愛の神 | |
エロースの彫像 ナポリ国立考古学博物館所蔵 | |
住処 | オリュムポス |
シンボル | 弓矢 |
配偶神 | プシューケー |
親 | カオス ウーラノス, ガイア アレース, アプロディーテー |
兄弟 | ポボス, デイモス, ハルモニアー, アンテロース |
子供 | ヘードネー(ローマ神話ではウォルプタース) |
ローマ神話 | クピードー, アモル |
ギリシア神話 |
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主な原典 |
イーリアス - オデュッセイア 神統記 - 仕事と日 イソップ寓話 - ギリシア悲劇 ビブリオテーケー - 変身物語 |
主な内容 |
ティーターノマキアー ギガントマキアー アルゴナウタイ テーバイ圏 - トロイア圏 |
オリュンポス十二神 |
ゼウス - ヘーラー アテーナー - アポローン アプロディーテー - アレース アルテミス - デーメーテール ヘーパイストス - ヘルメース ポセイドーン - ヘスティアー (ディオニューソス) |
その他の神々 |
カオス - ガイア - エロース ウーラノス - ティーターン ヘカトンケイル - キュクロープス ギガンテス - タルタロス ハーデース - ペルセポネー ヘーラクレース - プロメーテウス ムーサ - アキレウス |
主な神殿・史跡 |
パルテノン神殿 ディオニューソス劇場 エピダウロス古代劇場 アポロ・エピクリオス神殿 |
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エロース(古希: Ἔρως,Erōs)は、ギリシア神話に登場する愛を司る神である[1]。古代ギリシア語で愛(性愛)や恋を意味する「エロース」という語が神格化された概念である[2]。日本語では長母音を省略してエロスとも呼ぶ[3]。
概説
古代の記述
ヘーシオドスによれば、エロースはガイアと共にカオスより生まれた原初の力である[1]。
後に、軍神アレースと愛の女神アプロディーテーの子であるとされるようになった[1]。アプロディーテーの仲間の内で最も重要な存在だった[4]。
本来は青年に近い姿で描かれていたが、時代が下がるにつれて、背中に翼があり手には弓と矢を持つ幼い少年または子供の姿で描かれる様になった[2]。黄金で出来た矢に射られた者は激しい恋心にとりつかれ、鉛で出来た矢に射られた者は嫌悪の情を抱くようになる[2]。
ある時、アポローンに嘲られたエロースは、復讐としてアポローンを金の矢で、ダプネーを鉛の矢で撃った[3]。アポローンはダプネーへの恋慕のため、彼女を追い回し捕まえそうになるが、彼女は父に頼んでその身を月桂樹に変えた(ダプネー daphne とは古代ギリシア語で「月桂樹」の意[1])[3]。
ローマ神話との対応
ローマ神話では、エロースにはアモル(Amor)またはクピードー(Cupido)を対応させる[1]。クピードーは英語読みでキューピッドと呼ばれた。
「愛と心の物語」
王の末娘プシューケーは絶世の美女であり、その評判はアプロディーテーを凌ぐ程であった[2]。アプロディーテーはこれに怒り、この娘を世界で一番下賤な男と結婚させるようエロースに命じた[2]。だがエロースは誤って金の矢で自身の親指を傷つけてしまい、プシューケーに恋をしてしまう[2]。
プシューケーの結婚相手が見つからないので両親が神託を伺うと、花嫁衣装を着せて山の上に置けということであった[2]。彼女は山から西風によってエロースの宮殿に運ばれる[2]。プシューケーと同居したエロースだが、彼は彼女に対して声を聴かせるのみで決して姿を見せようとしなかった[2]。姉たちに唆されたプシューケーが灯りをエロースに当てると、燭台の蝋が彼の肩に滴り、怒った彼は彼女の元から去ってしまった[2]。
その後、プシューケーは姑アプロディーテーの出す難題を解くため冥界に行ったりなどして、ついにエロースと再会する[2]。この話は、アープレーイウスが『黄金の驢馬』の中に記した挿入譚で、「愛と心」の関係を象徴的に神話にしたものである[2]。プシューケーとは古代ギリシア語で「魂」の意味である[1]。
プシューケーとの間にはウォルプタース(ラテン語で「喜び」の意)という名の女神が生まれた[2]。
脚注
出典
参考文献
関連項目
- 神統記
- アプロディーテー
- カーマ (ヒンドゥー教) - エロースと同じく、矢で射たものに恋情を引き起こす愛の神。
「エロス」の例文・使い方・用例・文例
エロスと同じ種類の言葉
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