探偵・花咲太郎は閃かない [★]
さて、今月から創刊となったメディアワークス文庫であります。
位置的には「ライトノベル」ではなくあくまでも「一般文芸」にあたるので、ラノベの感想と分けても良かったんですが、めんどくさいのでカテゴリーを「文庫感想」でまとめました。
うちのMW文庫感想のトップは入間人間著でいきたいと思います。しかし、入間人間の文章はラノベでも一般文芸でも変わらないな。
探偵・花咲太郎は閃かない (メディアワークス文庫)
ぼくの名前は花咲太郎。探偵だ。浮気調査依頼が大事件となる素晴らしい探偵事務所に務め、日々迷子犬を探す仕事に明け暮れている。
……にもかかわらず、皆さんはぼくの職業が公になるやいなや、期待に目を輝かせて見つめてくる。刹那の閃きで事態を看破する名推理をして、最良の結末を提供してくれるのだろうと。
残念ながらぼくは犬猫専門で、そしてロリコンだ。最愛の美少女・トウキが隣で睨んできてゾクゾクした。悪寒はそれだけじゃない。眼前には、真っ赤に乾いた死体まである。……ぼくに過度な期待は謹んで欲しいんだけどな。これは、『閃かない探偵』ことぼくと、『白桃姫』ことトウキの探偵物語だ。
閃かないロリコン探偵による、当てのない迷推理――!?
みーまー8巻の群像劇にて登場したロリコン探偵ルイージもとい花咲太郎と、その助手であるトウキに焦点が当てられた物語であります。
といってもですね、この物語一応ミステリであるはずなのに、しかも普通に殺人事件とか起こってるのに驚くほど緊張感がありません。皆無といって差し支えありません。~代目とかちゃんと役職を受け継いでいるにもかかわらず、ロリコンのダメ探偵です。トウキを口説くたびに本人からはぞんざいに扱われるけど、でもアパートで同居しているしなんだかんだでトウキは太郎に甘えているところあるんですよね。
しかしこのコンビがどっかに遠出するたびに人が死ぬような事件に遭遇するのは、もう天啓レベルだな。
そんな事件が起こったとしてもトウキが恐ろしく鋭い勘で犯人を当て、太郎がその過程を論証してみせるみたいな推理を期待したんですがとことんダウナーだなこのロリコン。ただしトウキの勘はバカにできないのがすごい。この子にギャンブル教えればウハウハなんじゃないでしょうか。
探偵が探偵なら事務所も事務所ってことで、やはり幾分か危機感の足りないキャラたち。
エリオットはまだいいとして、所長なんかただのレトロな薄汚いおっさんじゃねーか。
どうもこうも全体的にコミカルやシニカル感ばかりが先行して、若干ライト向けに仕上がっているなあ。まあその雰囲気がまたいいし、それが入間人間の文章なんで嫌いってワケではないんだけども。むしろ好んで読んでいる作家の一人だしなあ。
だがあまりにもちょっと内容が薄い。
いわば入間人間慣れした人間が、この作者だけが出せる「空気」を楽しむ作品だったのだと個人的には思います。
つまらなくはないんですが、少し物足りない内容だったかなー。雰囲気は好きなんだけど、そればかりって感じが。