扉の外Ⅲ [★]
あ、れ……? これ、完結って銘打ってあるけど明らかに消化不良な気がががが。
1,2巻はよかったんだけど、もっとも盛り上がるはずの最終巻が投げっぱなし終了だなんて……。
ゲーム内容は今までで最高に容赦のないモノだった分、拍子抜け感が否めませんでした。
扉の外〈3〉 (電撃文庫)
「三つ目の扉をくぐり抜けゴールしたプレイヤーには、外への脱出と、そのほか副賞として豪華特典が与えられます。 こぞって参加いたしましょう」
密室に閉じこめられた二年二組の生徒たちに “人工知能ソフィア” を名乗る存在が、状況を打開する方法として提示したのは “オンラインゲーム” だった。
とにかくやるしかない、とクラスで協力して、その “ゲーム” を進めているうちに……!
“誰” が “なんのため” に生徒たちを隔離したかがついに明らかに。 シリーズ完結編、登場!
猜疑心が生むものは、一つの賭けと銃弾――。
というわけで、シリーズ完結なんですけど、この投げっぱなしエンドはいかがなものかと。
特に今回のゲームのデキがかなり良かったのに対して、結局ゲームの真理については良く分からないってのが残念。他にも「あれは?」「これは?」と突っ込みたいところもあるのですが総スカンをくらったような。こりゃあもう打ち切りエンドとしか思えない尻切れトンボでした。
が、繰り返すようですがゲームの内容は今までの「扉の外」ないし「ツァラトゥストラへの階段」「ラプンツェルの翼」のどのエピソードと比べても最高に酷くて血みどろで救われません(※褒め言葉です)。ぶっちゃけ読んでいて、こんだけ猜疑心や人の悪意を鮮明に描けるのは作家として立派な一つの武器だと思わざるを得ませんでした。
今回の主人公である美鈴はどうしても人を信じきれないタイプの人間。相手へ決して譲歩せず、不利にならぬような駆け引きと逆らうようなら銃をすぐさま突きつける、といった素敵な性格をしていらっしゃる割と容赦のない人間です。クラスメイトだろうが上っ面だけはいい顔して、そのうちは猜疑心がくすぶりまくっております。
私自身は結構美鈴のことを買っていたつもりだったんですけど、まあ普通はこんなやつのやり方にゃあ人は従いはしませんわな。まず、相手クラスとの友好や信頼を築くために人質の交換とかないですよ。美鈴の疑り深い性格で考えるなら、まず優位な立場を確立しておきたいのはそうなんだろうが、客観的に見ればやっぱり「そんなことする必要がない」と思うのは当たり前。そんで仲間だったはずのクラスメイトが哀れんで人質を解放してしまうし、美鈴の怒りはやがて内にも向くようになります。ここまでくるともう人の良心なんてかけらもございません。だけど、クセになりそうな醜悪さたるゲーム性。
指揮を執りつつも、自分の欲望をかなえるだけのクラスメイト達を見下しながら戦場に向かい、やがてそれが「普通」と感じてしまう彼女らの堕ちっぷりがハンパない。ゲームの世界と現実を完全に混同し、もはやそれは中毒言っても差し支えないほど。
そして血みどろの戦闘劇に繰り広げられる陰惨さも際立つってものだ。もう美鈴は戻れないところまで来てしまっていて、しかしそれを厭わずに受け入れてしまう救われなさも惨憺たるや。ああ、面白いなちくしょう。ここで終わってしまうことが本当に悔いだ。ちゃんとバックグラウンドや生徒達が最後はどうなるかまで描いてほしかったなぁ。
あともう一言いうなれば、一度でよかったから愛美視点の話を書いてほしかった。
満足とは行かないけど、ゲーム性は最高の物語でした。これは色々参考になったってものです。
まあ合わない人はとことん合わないと思いますが、土橋作品の中ではもっとも色濃く、そして暗澹な物語でした。オススメ。
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