

アクセル・ワールド2 -紅の暴風姫- [★★★]
今年の電撃大賞受賞作、待望の続編。
どう考えても面白いんだわこれが。でもなんで? って言われるとうまく説明できないんですよねー。元々人に何かを説明するのが下手っぴなんだけど、私の中の「これおもしろいなぁ」という本能がすごいうずくんですよ。川原さんの作品にはそんなのがある気がするんだ。私も加速したいわ。
アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)

黒雪姫との出会いにより、一回り成長したハルユキ。そんな彼のもとに、「お兄ちゃん」と呼ぶ見ず知らずの小学生・トモコが現れる。二人のいちゃいちゃする様子を見た黒雪姫の冷徹な視線がハルユキを貫く中、≪加速世界≫では、謎の事件が勃発していた。
乗っ取られると精神を汚染され、敵味方関係なくデュエルアバターを襲い続けるという呪いの強化外装≪災禍の鎧≫。殺戮を繰り返す狂気のアバターを捕らえることができるのは、唯一の≪飛行アビリティ≫をもつデュエルアバター、≪シルバー・クロウ≫のみ。≪鎧≫討伐ミッションを課されたハルユキの運命とは!?
次世代青春エンタテイメント登場!!
《赤の王》との接触、そして黒雪姫の凄惨な過去――。
醜く卑しい自分を少しでも変えたいため、そして何よりも絶対の憧れである黒雪姫を守るため、ハルユキは「ブレイン・バースト」に挑み続ける。
今回は「親」と「子」の関係や、新キャラを加えて「加速世界」の設定をさらに掘り下げた感じでしたね。
とつじょハルユキの家に転がり込んできた小学生の由仁子が、最初は健気な妹系キャラだと思っていたのに、バーストリンカーとばれると手の平を返したようの偉そうな態度との差が激しかった。基本憎まれ口けども、思ったことをこうやってはっきりと伝えられる由仁子かわいいよ由仁子。
そして《赤の王》でもある由仁子から、殺戮プログラムのような『災禍の鎧』を倒すような協力要請をされるところからお話は始まります。
相変わらず黒雪姫がかわいい。
なんなんだろうねホント。1巻でもSAOのアスナでも思ったけど、川原さんのヒロインはなにかグッとくる。どっちかといえば黒雪姫が特に。
「加速世界」では黒のレギオンのトップを統べるカリスマであり、やはりリアルでもクールで気丈なキャラを気取ってるんだけど、一度崩れると感情的になって本当に脆い存在になってしまうんですよね。そんな場面にそこはかとなく「あ、やっぱまだ中学生なんだなー」と思わされてしまいます。
あとハルユキに対してどこまでも一途なところが窺えます。ハルユキ視点からの黒雪姫はホントかわいい。ハルユキは自分の成長の遅さにいつ見限られるのかを恐れているんだけど、そんなのお構いなしに優しく導いてくれてなおかつ「ゆっくりでいいよ」と励ましてくれるのが素敵すぎる。
今回は「加速世界」でありながらまた別の空間である「無制限中立フィールド」という設定が出ましたが、これが「加速世界」よりもさらにブーストしていまして、こっちの一日がリアルの3年に匹敵するという恐ろしさ。聞こえはものすごく万能に思えますが、人間性を軽く曲げてあまつさえぶち壊す程度には時間間隔が狂いそうですね。
それで11歳の《赤の王》や14歳の黒雪姫がやけに大人びていると思うのはもしかしてこのフィールドの影響なんじゃないかと思ってきた。読んでたら何回もこのフィールドに来ているようだし。しかもこれるのはバーストリンカーでもさらにポテンシャルが高いやつらだけみたいだし。
『災禍の鎧』関連で、《赤の王》を合理的に陥れるために、《黄の王》の卑劣さと狡猾さ溢れる策は驚かされた。
それもあるけれど、今回は「親」と「子」の重要性も絡んでますね。チェリーが『災禍の鎧』に手を出してしまった理由がわかると、すごいやるせなくなった。これは由仁子も辛いなー。
黒雪姫の過去もちょっと明らかとなってきましたが、彼女の裏切り行為にはこんなわけがあったんですね。
そう、誰にしても険しい戦いの中で自分と見つめあい、葛藤して、そこで答えを見つけ、成長する。この過程はもはや王道だけど、だからこそいつまでも続く熱い展開なんだと思う。
背景に人間ドラマあるのとないのとでは、戦いの理由にも雲泥の差が出てくるよね。この作品はそこのところも丁寧に作られているから、面白い。
超面白い。文句のつけようがありません。気になる伏線も張られ、次巻への引きも十分です。
デビューして早くも電撃の人気作家の看板を背負いそうな川原さんですが、この人の作品は終えるところまで追おうと決めました。超オススメ!
→『アクセル・ワールド3 -夕闇の略奪者-』の感想へ
←『アクセル・ワールド1 -黒雪姫の帰還-』の感想へ