レジンキャストミルク [★★]
初めての藤原祐作品。そして暗黒ラノベクラスタ化計画第1弾。
主に「素敵な中二作品」とか言われてものすごく触発されました。そして実際私の琴線に触れまくった結果、ものすごい好みの類の作品だということが分かった。なんでもっと早く手に取らなかったんだ。
というわけで、今後も通称「レジミル」の積読を崩していこうと思う次第です。
レジンキャストミルク (電撃文庫)
「先輩、朝です。 起きてください。 がんがんがんがん」
平凡な高校生・城島晶の朝は、クールな美少女・硝子の叩く中華鍋の音から始まる。
一見、普通の人間に見える硝子――
しかし、その正体は、異世界 “虚軸”(キャスト) から来た特異な存在だった。
ありふれているが、平和で穏やかなふたりの生活。
だが、その日常という脆い皮の下には、奈落の闇が広がっていた……。
空想と妄想の果てに産み出された異世界と現実世界。
その境界線が薄れるとき、“欠落” と引き換えに異能を手にした者たちの物語が幕を開ける!
欠落し、虚軸を得た少年少女たちの、空しき戦いが幕開ける――!
あー、やべえこれ最強に好みなんだけど! オススメしてくれた人ホントありがとうございます!(名指ししていいものか悩んでいる)
最初はやっぱり読みにくかったんですけど、それぞれの二つ名の意味とか知らされたり、人間の劣情からの豹変を見せ付けられたり、そして何よりそれぞれのキャラが何か「こだわり」や「信念」や「美学」を持っているというところにすごい好感。
話は全然明るくなんてなくて暗鬱。ブラックジョークをふんだんに含んだコミカルパートもあるっちゃあるけど、それはさらなる鬱展開への引き立て役にすぎないと思うのです。
というか、やっぱり私はこういう学園異能モノが大好きなんです。熱い物語とは決して言えませんが、各々の信念や目的のために、能力を使って他人を殺してまで成し遂げるところがいいんだと思う。そういうところは、同じく大好きなシリーズの「ムシウタ」と似た空気を感じた。
能力の根本である「虚軸」を得るためには、人間としての何かを欠落しなければなりません。
痛覚と記憶を欠落した主人公の晶。或いは「固定剤(リターダ)」
その記憶を補完し、晶が共生を結ばざるを得なくなった硝子。或いは「全一(オール・イン・ワン)」
味覚、そして人間の識別能力を欠かした里緒。或いは「有識分体(分裂病)」
主に動くのはこの3人でしょうか。あとは「壊れた万華鏡(ディレイドカレイド)」なり「無限回廊(エターナルアイドル)」だったり、この虚軸を持つ人たちは後々背景が明らかになるのかな。里緒もそうだけど。
基本は晶が硝子を自分に「取り付かせた」人物を探しまわるお話……であってるんだよね? それがあの「無限回廊」なんだろうけど。1巻ではまだそこら辺曖昧でしたね。
こういうのって能力の強さと欠落の大きさって比例するもんですけど、やっぱりそうでしたか。能力が失った能力を補う、または担うかたちになったらなったで、それはなかなか皮肉っぽいよね。まず「虚軸」って「~~だったら良かったのに」と強く望むもう一つの世界が自分対象にかかるわけだから、何かを失う代わりに別の大きなものを得るわけだけど、得た「虚軸」ってやっぱり自分を何らかの形で縛りつけるもんだよな。
けれどそうは思えさせないのが巧みな心理描写なんでしょうね。前述したとおり、みんながみんな自分の願望や目的に対して怖いまでに純粋。美学というと言い過ぎ感あるけど、ピタリとはまる言葉でもあると思う。だからこそ「虚軸」を得たってことにもなるんだけど。それでこそ諸刃の剣ってやつか。
……なんか逆説ばっかの感想になってもうしわけないです。
キャラの中だと現時点では硝子が好きです。
ホントに機械みたいな説明と理論じみた話し方するんだけど、真顔であんなブラックジョークとか言ったりするんだろうなとか思うと楽しい。ただ彼女の能力がかなりエグイんだけどね。「全一」ってそういうことか。
里緒はものすごい難儀な状況なんだけど、普通にかわいいとは思える。彼女の境遇はいつ明かさせるんだろう。
ホントもう壊すだの殺すだの犯すだの、人間のマイナス感情がごまんと溢れて混ざってぐちゃぐちゃに溶かしてみました、みたいな作品なんだけどこういう空気大好き。暗い世界観での僅かな希望に縋っていく登場人物たちに期待。
いやー、良かった。やっぱり人を選ぶ作品だと思うけど、これは好きな類の中二です。超オススメ。
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