いつも心に剣を１ [★]
「薔薇のマリア」「ANGEL＋DIVE」の十文字青さんの新刊。
しかしこの作者の作品は読んだことがないので、これがお初。いわゆる「ゼロの使い魔」「聖剣の刀鍛冶」みたいな異世界ファンタジーもの。本作もこれらの作品に負けないくらい面白さを秘めていると思います。続きでどう化けるかが楽しみだ。
いつも心に剣を 1 (MF文庫 J し 5-1)
魔女という存在が恐れられていた時代。兄妹として育てられた少年レーレと少女ユユは、故郷を飛び出し旅をしていた。
「わたしの言うことはぜんぶ聞きなさい！」勝ち気なユユに振り回されつつも、心のどこかで小さな幸せを感じていたレーレ。そんな旅の途中、拾った金の指輪が原因でユユはとある疑いをかけられてしまう。しかし、これは二人が巻き込まれる大きな嵐の小さなはじまりにすぎなかった……。
『薔薇のマリア』（角川スニーカー文庫）の著者が描く、儚くも強い愛と絆の物語。―――「ユユがいないと意味がない。絶対、助けるから」―――
刃を振るう理由は、互いの絆のために――！
この一巻を読んでいるとまだまだ序章だという感じがします。
まあそのための土台というか、主要人物であるレーレとユユの背景や世界観、人間と魔女の対立関係なんかが説明される回だったと思いますね。
剣と魔法、人間と魔女。誰もが何かの作品を通じて一度はお目にかかる設定なのではないでしょうか。その王道ラインを人によってどうアレンジさせるかがミソとなってきますが、この作品はどうやら好きになれそうです。
レーレとユユは義兄妹であり兄のレーレはユユを慕い、妹のユユは尊大な態度でいつもレーレを振り回す。そんなやり取りが日常となりつつある二人が微笑ましたかったのは序盤まで。
魔女の疑いがかけられたユユは幽閉され、レーレはただただ真っ直ぐ彼女を助けたい一心に駆られますが自分の無力さに苦悩。
ユユはレーレを助けるためにわざと突き放すように高圧的な言動で自己犠牲を図り、屈辱と恐怖に耐えながら本心ではレーレに会いたいと願う。
しっかし不思議な兄妹です彼らは。
ユユは常時「バカなレーレ」と鼻につく態度でレーレを小馬鹿にして、行動にもそれが出ているのですが、時折彼女がレーレのことを深く想っているのが窺えます。そもそも旅に出たのがユユの発案でしたしね。
レーレは幼いときからかなり辛辣な態度を浴びせかけられているにもかかわらず、何一つ言い返さずにいつもユユに従順。ユユを常に一番に考えるその想いは信仰なのか、或いは愛なのかは定かではありませんが純粋ではあります。
旅をして初めて離れ離れな状況に陥り、改めて彼らの絆の強さを見せられました。愛とかとはまた違った強い繋がりだと思うんですけどもどう説明したらいいのか分からない。とにかく読んでみてほしい。
魔女達と人間が互いにいがみ合い、果ては殺しあうような場面もありましたけど、両サイドの想いを見せ付けられると一概にどっちが悪いなんて軽はずみは言えませんわな。それぞれの事情があるってこってす。
けれどユユは実際魔女に恩義を感じていたりするのかもしれません。そこんところの動きは次巻以降で露になるのかしら。
異世界ファンタジーとしても全然楽しめる一冊でありました。これは続刊にも期待できますね。
「ANGEL＋DIVE」が化けたという噂を聞いてそっちも興味があるんですが、いつ手に出せるだろうか。とにかくこの作品はオススメです！
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