

とある飛空士への恋歌 [★★]
「とある飛空士への追憶」の続編ではありません。新シリーズです。
なのでこの「恋歌」から読み始めるのもありだと思います。けど「追憶」も是非読んでほしい。それにしても「追憶」との主人公のギャップが激しすぎて最初は「ホントに同じ作者なの?」と疑っちゃいましたよ。
しかしいつになっても大空ロマンというのは素晴らしいよなあ。これは期待のシリーズです!
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「これはきれいに飾り立てられた追放劇だ」数万人もの市民に見送られ、盛大な出帆式典により旅立ちの時をむかえた空飛ぶ島、イスラ。空の果てを見つけるため――その華やかな目的とは裏腹に、これは故郷に戻れる保証のない、あてのない旅。
式典を横目に飛空機エル・アルコンを操縦するカルエルは、6年前の「風の革命」によりすべてを失った元皇子。彼の目線は、イスラ管区長となった「風の革命」の旗印、ニナ・ヴィエントに憎しみを持ってむけられていた……。『とある飛空士への追憶』の世界を舞台に、恋と空戦の物語再び!!
出会ってはいけなかった二人の恋と空戦記――。
6年前の革命により、全てを奪われた皇子・カール。富も名声も愛する母親も失い、人生に絶望した彼に生きる希望を与えたのは――大空だった。その夢を、かつて自分が果たせなかった夢を、彼に託そうと下町に生きる三姉妹の父・ミハエルがカールを拾い、そして6年の月日が流れる――。
まず言っておきますと、この「恋歌」の1巻は盛大な前フリだということです。
主人公の元皇子カールことカルエルがどのような経緯で今の立場になり、また世界観や政治などについても語られています。一人前の飛空士になる夢と、革命を導いたニナへの復讐の二つの想いを内に秘め、「空の果て」を目指す「イスラ(空飛ぶ島)」の飛空科学校に入るというところまでが1巻というところでしょうか。
折込チラシのガ報のインタビューによれば題材が「ロミオとジュリエット」らしく、本来ならば愛し合ってはいけない二人の恋が描かれる模様です。カルエルとクレアの出会いは最高なものだったけど、いやもう最後にはびっくりでした。まさかあんたが――的なね。これは気になります。
カルエルの凄絶な過去編ではアルバス家の温かさに惹かれましたねー。お姉ちゃんズもいいんですけど、特に大黒柱であるミハエルの人情に厚い心意気の良さは温かい。
で、三姉妹の末っ子であり、カルエルの義妹となったアリエルが表面はつーんとしながらもカルエルに密かに想いを抱き始めるところはかわいいなー。彼女の恋の行方はどうなるか分かりませんが、題材的な意味で進めば単なる当て馬ルートにまっしぐら……。不憫でなりませんがただでは終わらないでほしいなあ。
また主人公であるカルエルがへタレでナルシストな上にマザコンという、ダメ要素をフルスロットルに搭載したとんでもなやつでして。テンパるとすぐに「ははうえぇぇ!」と叫んだり、人に頼りきりだったり、さらに自分が悪いとは毛ほども思わないナルちゃんでダメダメな主人公です。でも不思議と嫌悪感は湧かない。むしろ笑わせてくれるからコミカルな主人公だと割り切ってしまえば楽なものです。でも一番好感が持てる理由は過去編で初めて空を飛んだシーンでのアレ。空っていいですよね。私も大好き。
そしてクレアとの運命の出会いですよ。あの雲間を自転車で走るシーンが素敵な演出ですね。でも挿絵はどう見ても「タイタニック」のあれだよね。
しかしまさかクレアがあの人だとは……。お互いの正体もまだ知らないところに運命のいたずらを感じます。これはすごいことになりそうです。
「追憶」みたいに一部完結で「今度はどう感動させてくれるんだ?」とばかり思っていたもんだから、ちょっと拍子抜けしてしまいました。手に汗握るような空戦シーンもほとんどなかったし、まさか続くとは思いませんでしたし。
しかし、これはこれで面白みも出てきたと思います。一巻が土壌を整える壮大な序章だった分、これからの展開に厚みが増すと思いますし、何より続きが気になって仕方ありません。これで次巻がまた来年だったら泣きます。っていうか早めの刊行をホントに頼みますよガガガ編集部さんっ!
カルエルとクレアの正体がいつバレてしまうのかとハラハラしつつも、そんな修羅場展開を期待してしまう私がいます。義妹もたぶんこの二人に割り込んでくるんだろうなー。
面白かった。作者さんの技量に不安はないし、これからの展開に期待を込めて二つ星にしておきます。超オススメ。
しかしお姉ちゃんズの出番はもうないんだろうな……。
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追憶を読んですぐにこの作品を購入・読破しました。
最後は本当に意外でした。
そうなのかな~、という考えすら浮かんでこない流れで、意外性抜群ですね。
今後の展開に期待です。
ですよねー。まさかあの人が……みたいな。
今後の展開も気になりますね。