

ダンタリアンの書架1 [★]
来年アニメ化される『アスラクライン』の作者さんの新シリーズ。
ダークテイストの中世幻書ファンタジーですが、かといって全ての話が暗鬱と言うわけでもない連作短編。
語り手が二組だったり、連作短編なあたりちょっと『キノの旅』を思い出した。あとヒューイのポジションはおいしすぎると思う。
そうそう。幼女に罵られたい人にもオススメ。
![]() | ダンタリアンの書架1 (角川スニーカー文庫) (2008/11/01) 三雲 岳斗 商品詳細を見る |
ヒューイは、かつて所領の半分を1冊の稀覯本と引き替えにしたほどの蒐書狂である祖父から、古ぼけた屋敷とその蔵書の全てを引き継いだ。
条件は一つ、"書架"を引き継げ――と。
遺品整理に屋敷を訪れたヒューイは、本が溢れる地下室で、静かに本を読む少女と出会う。漆黒のドレスに身を包み、胸に大きな錠前をぶら下げた少女ダリアン。
彼女こそ、禁断の"幻書"を納める"ダンタリアンの書架"への入り口、悪魔の叡智への扉だった――。
“鍵”を持つ青年と、“書架”の管理人を務める少女が邂逅し、幕開ける幻書ファンタジー!
面白かった。幻書をめぐる中世風のファンタジー。やや、暗黒テイスト。
人知を超えた悪魔の叡智“幻書”を過去に手に取った人々がそれぞれ、人生を狂わされたり、或いは成功を掴んだり、様々な結末を描く連作短編。
ダークといってもダリアンの可愛さのおかげでそんなに暗鬱としてものでもなくて、難しくなく読める。ヒューイのポジションはおいしいね。是非変わってほしい。ダリアンに罵られたい。
しっかし字面といい展開といい、作者の手腕が感じられますね。一見厳かな感じだったり、かといってそっちに舵を切ったままではなく、適度に空気を緩めてくれるので読むのに疲れない。緩急のつけ方が巧い作者さんだなーと思いました。
今作でもその幻書の力に驕ったり、自分の限界を知ることとなったり、様々な人間性が出てきます。
中でも工場の兄弟の話は特に印象に残ったかな。醜い姿になってでも、どこまでもお人好しな弟さんに乾杯。
しかしその人知を超えた力を宿す幻書を、貸与しているのもダリアンだったんですよねー。
時には人間を不幸にしてしまうその力を平気で貸与する彼女の意志とは。けれど、ダリアン自身はよかれと思ってやっていること……でもないか。こんなことたくさん見てるだろうし。そこら辺がちょっと疑問。
でも全部がダリアンってわけじゃないんですけどね。偶然見つけたり、或いは他にも幻書を貸し出す存在がいるのかもしれません。
そうしたダリアンの行いを「悪」と評し動く、ある焚書官とフランのコンビのエピソードも末に語られています。
見方によってはどちらも善にもなるし、悪にもなる、なんとも不思議な雰囲気な作品でございます。
いつかこの焚書官とダリアンたちが対峙するお話がありますね。そしたらバトルものに早変わりしそうですが。
両サイドから見れる今後のお話も楽しみなところです。
そして、なんといってもダリアンの可愛さはちょっと常軌を逸している。
幼く、ミステリアスな容姿とは裏腹に高圧的な口調。あからさま人を見下しているような態度。
しかし犬が苦手で甘いものには容易に釣られてしまう子供っぽさも相まって、あーもうお持ち帰りしてええ! そしてもっと罵ってえぇ!
もうこのダリアンを眺めているだけでも嬉しくなる一作でした。
というわけで、ちょっぴりダークな幻書ファンタジー第1弾でありました。続刊は早くも今月末。オススメ!
→『ダンタリアンの書架2』の感想へ