電波的な彼女 ~愚か者の選択~ [★★]
電波的な彼女2冊目。かなり救いのない話にできあがっていてちょっと鬱になりそうになった。アレは泣くわ。
そういえば『紅』の裏十三家にも出てくる「斬島」「円堂」姓の女の子が出てきましたね。
それでもやっぱり雨がいいんですけどね私は。そしてなぜかこのシリーズだけ画像が最大表示にならない件。
電波的な彼女―愚か者の選択 (集英社スーパーダッシュ文庫) (2005/03) 片山 憲太郎 商品詳細を見る |
知り合ったばかりの幼い少女が “えぐり魔”の餌食になってしまった。憤りを感じ、犯人を捜し始めるジュウ。
お供には自称ジュウのしもべである雨、ではなく、その友人・雪姫が。彼女もまた雨に劣らず不思議な雰囲気を持ち、ジュウを翻弄していく。
驚愕の事件の真相に、ジュウはどうすることもできないのか?
世を犇かす“えぐり魔”。その解決と、そしてその真実とは――?
「前世からの絆です」と言い切り突然ジュウの下僕となった雨。そんな彼女との日常を楽しむようになったジュウが“えぐり魔”事件を解決することに立ち上がる電波的な彼女第2弾。
“えぐり魔”とは幼児を対象に一時的に誘拐して眼球を抉りぬき、そのまま解放するというかなり悪質なもの。その被害は30件以上をのぼりつつあった。
ジュウがその事件の解決へと立ち上がる動機は、休日に出会った迷子の女の子。そのときは「探してやろうか?」と言っても「一人で平気」と言われたので、子供のプライドを尊重してあげたのかそのまま別れたのですが、ニュースでその女の子が“えぐり魔”に遭ったことを知らされます。
ジュウはそれに責任を感じていざ解決に立ち上がるわけですが、紅香さんには「おまえに何が出来る?」と暴行され、さらには雨にさえも「この件はあまり深く考えてはいけません」と言う。
それでもやっぱりじっとしてはいられずに一人でやるわけですが、そこに協力を申し出たのが雨の友人である斬島雪姫だった。
「斬島」姓の雪姫ですが、やっぱり『紅』の斬彦と同じで刃物を持つと性格ががらりと変わる。
普段陽気で活発な性格なのが、なんというか隙のないクールガイみたいになってました。少女だけど。
「円堂」の姓は円が初めてでしたけど、こちらもかなりのやり手。しかも警察とのパイプがあるみたい。
まあそんなこんなで雪姫や円の助力を得て解決へと向かうわけです。
しかし真実はものすごく残酷だった。これはえぐい。
そもそも“えぐり魔”みたいな通り魔的犯行が30件も目撃者0で成立するわけがないんです。
犯人の人が「これはビジネスなんだよ」と言ったあたりからだいたい想像ついたけど、いざ言葉にされると辛いなぁ。
つまるところ、財産事情が芳しくない家庭を対象とした、両親さえも同意の上での計画的犯行。
子供の意志は一切関係なく、高値で取引される若い眼球を売り飛ばす――裏世界でのビジネスなのだった。
これは……やるやつもやるやつだけど、金欲しさに同意する両親もダメだろう。「一家全員路頭に迷う」か「一人の犠牲で財産は立て直せる」か選ばせるのもかなりエグイ。だからって未来のある子供の意志に関係なくやるってのは……辛いなぁ。
最後に迷子の女の子のお見舞いシーンがあるんですが、かなり痛切だった。
ジュウにすごい感情移入してしまって思わず私も涙してしまいました。あれは泣ける。胸にグサァ! ってくる。
でも最後はオタク少女二人組が癒してくれつつ明るく締めてくれましたよ。雨のメイド姿はかなりグッときたね。
辛くて、無力で、やるせないジュウの気持ちが痛いほど伝わってきた一冊でした。うん、面白かった。
かなりできたお話だったんで評価も上げちゃいます。超オススメです!
っていうか前回同様この内容をアニメにできるのかかなり疑問です。本当にやるの?
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