変態王子と笑わない猫。 [★★]
変態王子と笑わない猫。 (MF文庫J) さがら総 カントク メディアファクトリー 2010-10-21 売り上げランキング : 323 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
横寺陽人は頭の中身が煩悩まみれな高校二年生。ひょんなことで“笑わない猫像”に祈ったら、心で思ったことがいつでもどこでも垂れ流しになってしまった! 人生の大ピンチを救ってくれたのは、クールでキュートな無表情娘、筒隠月子――「頭の先から尻尾の終わりまで撫でまわしたくなる感じの子だなあ」「変態さんですね」「ち、違っ、褒め言葉の一種だよ!?」「裁判沙汰の多そうな変態さんですね」「!!??」とにもかくにも猫像のせいで喪われた本音と建前を奪還しようと、ふたりは協力してアニマル喫茶に行ったり水着を買いに行ったりお嬢様のペットになったり――ん?第6回新人賞<最優秀賞>受賞、爽やか変態×冷ややか少女の青春迷走ラブコメ!
納得の最優秀賞といった感じ。MF文庫はまた新たな武器を手に入れたわけだ。
いやホントおもしろいだけじゃなくて上手いんですよこの作家さん。思わず感心してしまうほど。
建前ばかりの主人公・陽人がその建前を失い、表情豊かだったヒロイン・月子が本音と感情を失い、お互いに欠けてしまったものを補いながらそれを取り戻すというお話。もともとエロ妄想が大好きだった陽人が、本音ダダ漏れとなったおかげで爽やかな変態になるまでは時間はかからず、それを無感情で諌める月子とのやり取りがいい感じ。というか本当にこいつ変態だけど小豆梓の件もあって役得だよなあ。しかしそのリスクとして出番外の女子から害虫扱いされるのは大きいがw まあでも逆に本音が露になったことで、ここまでの行動力を示せるようにもなったのかな。なんだかんだで熱い部分もあって好感的。
それからメインヒロインの月子が無感情になってからも、魅力的に書けてるというのはすごい技量だと思いました。だって怒ったり、笑ったり、泣いたりしないし、それらが表情にも出なくなるので、やたら冷たく感じるセリフからでしかその感情の断片が窺えないのに、「とってもかわいい」と思えるほど全然メインを張れてるヒロインになってる。単に出番が多いってのもあると思うけど、これセリフ回しとか実はすごい考えてるんじゃないかなあ。この無感情さを陽人が緩和させているから、月子の存在もまた映えているのかも。
そしてこのいいコンビなのかそうでないのか曖昧な二人の本音と建前でしか計れなかった関係性が、進退を繰り返しながらいつの間にかかけがえのないものになっているんですよね。そこら辺の心情の変化の機微がとても上手な印象を受けました。この人は今後もキャラ小説と呼べるジャンルに置いて強い気がする。
そして最後は月子の姉ちゃんと月子の確執がなくなる展開で、お姉ちゃんの性癖にびびりました。
いや姉妹仲がいいことにはなにも問題ないんだけど、それでもこんなやつだとは思わなかったw
続きもあるみたいですし、楽しみなシリーズになりそう。おもしろかったです!
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