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映写室ノート

映画を観て、思った事や感じた事を綴って行きます。※ネタバレありです。

【映画】『”それ”がいる森』(2022年) 森の奥深く、見てはならないものがいる―逃げ場のない恐怖が始まる! | ネタバレあらすじと感想

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◆映画『“それ”がいる森』の作品情報

【監督】中田秀夫

【脚本】ブラジリィー・アン・山田、大石哲也

【出演】相葉雅紀、松本穂香、上原剣心、江口のりこ、眞島秀和他

【配給】松竹

【公開】2022年9月

【上映時間】107分

【製作国】日本

【ジャンル】ホラー

【視聴ツール】Netflix

◆キャスト
田中淳一:相葉雅紀
小澤翔太:上原剣心
神崎昭二:江口のりこ
田中昭一:小日向文世
岡本大輔:眞島秀和
田中貴子:野間口徹

◆ネタバレあらすじ
田中淳一(相葉雅紀)は、息子の悠真と離れて暮らしていた。彼は都会での生活に忙殺され、家族との時間を十分に取れないでいたが、ある日突然、元妻が交通事故で亡くなり、彼は悠真を引き取ることになる。久しぶりに父親として向き合うことになった淳一は、彼の育児に不安を抱きながらも、亡くなった母親を失った悲しみを背負う息子との関係を修復しようと努力する。
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悠真を連れて、淳一は田舎にある自分の実家へと戻ることにした。そこは淳一が幼少期を過ごした場所であり、深い森に囲まれた静かな田舎の村だった。村人たちは昔からこの森に「何か」が潜んでいると信じており、森には決して近づかないように言い伝えられていた。しかし、実家に戻って間もなく、悠真がその森に興味を示し、淳一の目を盗んで森の奥深くへと入ってしまう。
悠真を追いかけた淳一は、森の中で奇妙な現象に遭遇する。木々の間から聞こえる不気味な囁き声、突然現れる奇怪な影、そして一瞬だけ目にした何か異形の存在。淳一は急いで悠真を見つけ出し、事なきを得るが、その日以来、家の周りで不可解な出来事が次々と起こり始める。
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悠真は夜中に悪夢にうなされ、何かに追いかけられていると話す。さらには、村の住人たちも次々と姿を消していくのだ。村の噂によると、何十年も前からこの森には正体不明の「それ」が住んでおり、森に近づく者たちを次々に襲っているという。
そんな中、淳一は村の古老・神崎昭二(江口のりこ)から、この森にまつわる忌まわしい過去を聞かされる。昭二の話によると、戦後この地域で行われたある秘密実験が原因で森が汚染され、その影響で得体の知れない怪物が生まれたのだという。その怪物は、姿を変えることができ、人々に恐怖や狂気を植え付け、最終的に彼らを森へと引きずり込むのだ。昭二は「それ」から逃れる方法はないと語り、森に近づくことを厳重に禁じる。
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しかし、状況は次第に悪化していく。悠真はますます「それ」に惹かれるかのように、森の中へと足を向けようとする。淳一もまた、次第に精神的に追い詰められていき、現実と幻覚の境界が曖昧になっていくのを感じ始める。果たして「それ」は実在するのか、それとも全ては自分たちの心の中にある恐怖が作り出した幻想なのか?
ある晩、ついに悠真が行方不明になる。慌てて森へと向かう淳一は、村人たちと共に捜索を開始するが、深い森の中で彼が目撃したのは、自分がこれまで信じていた世界を覆すような異様な光景だった。森の奥深く、闇の中で蠢く「それ」の正体が明らかになった時、淳一は悠真を救い出すために命を懸けた決断を迫られる。
結末に向かって物語はクライマックスを迎え、森に潜む「それ」の真実、そして田中親子の運命が交錯する。森が抱える闇はあまりにも深く、全てが終わった後に残るのは恐怖と絶望だけなのか、それとも希望の光が見えるのか。

◆考察と感想
映画『"それ"がいる森』は、ホラー映画としての恐怖体験だけでなく、人間関係や心の闇を掘り下げた作品であり、その観賞後に様々な考察が浮かび上がります。
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まず、本作は単なるモンスター映画ではなく、人間の内面的な恐怖と密接に結びついています。森に潜む「それ」は、実際には明確な姿を持たない存在として描かれていますが、この曖昧さが観客の想像力を刺激し、より深い不安感を与えるポイントです。「それ」が姿を変える存在であることや、幻覚を引き起こす点は、人々が心の中に抱えている恐れや罪悪感を具現化しているかのようにも解釈できます。
特に父親の淳一に焦点を当てて考察すると、彼が「それ」に直面することで、自分の過去や親としての不安、罪悪感に対峙しているように見えます。息子の悠真と疎遠になっていたこと、そして母親を亡くした悲しみや育児に対する責任感の欠如が、彼の心の中に深い傷を残していました。このような精神的な脆さが、森に潜む「それ」に付け込まれ、次第に追い詰められていく構造は、ただの外部的な脅威ではなく、人間の内面的な葛藤を反映しているのです。
さらに、森自体も考察の余地があります。森はしばしば、神秘的で原始的な力を象徴する場所として描かれますが、本作では森は未知の恐怖と隠された真実を抱える場所です。村の伝承や過去の出来事が絡み合い、森は「それ」によって支配された領域となっています。しかし、この森は単なるホラーの舞台ではなく、淳一と悠真が関係を修復し、自分たちの内なる葛藤に向き合うための象徴的な空間ともいえます。
また、映画を通じて感じるテーマの一つは、親子関係の再生です。淳一は父親として、息子とどう向き合うべきかを悩みながらも、森での恐怖体験を通じて少しずつ成長していきます。彼の過去の失敗や無力感が「それ」によって具現化される一方で、息子を守ろうとする意志も強化されていきます。この点において、『"それ"がいる森』は、ホラー映画としての要素を超えて、家族の再生というテーマを描き出しているのが特徴です。
次に、村の住人や過去の実験にまつわるエピソードについても触れる必要があります。昭二から語られる秘密実験の話は、現代社会の暗い側面、つまり科学技術がもたらす未解明の恐怖や、自然との不調和を象徴しています。この実験の結果として「それ」が生まれたという設定は、自然を操作しようとする人間の過信と、それが引き起こす予期せぬ結果についての警鐘を鳴らしているかのようです。ここでも、「それ」はただの怪物ではなく、人間の行為が招いた代償であり、文明と自然の関係についての批判的な視点が見て取れます。
感想としては、映画はホラーとしての不気味さや驚きに満ちており、特に森の中でのシーンは視覚的にも音響的にも緊張感が高まります。「それ」の存在がはっきりと描かれないことで、逆に想像の余地が広がり、観客にとっての恐怖が一層深まります。また、ホラー映画にありがちな血まみれのショックシーンではなく、心理的な不安や恐怖を中心に据えているため、じわじわと恐怖が染み渡るような体験を提供してくれます。
最後に、映画の終盤で明かされる「それ」の正体や、親子の運命がどのように結びつくのかは、観客の解釈に委ねられています。明確な答えが提示されないことで、この映画は鑑賞後も余韻を残し、自分自身の恐怖や不安について考えさせられる内容となっています。
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『"それ"がいる森』は、単なるホラー映画を超えたテーマ性を持ち、観る者に心理的な恐怖と同時に、深い考察の余地を与える作品です。親子の絆、心の闇、そして自然と文明の対立といった多層的なテーマを通じて、人間の内面に潜む「それ」に向き合う物語として、心に残る一作です。




評価点   72点
お薦め度  70点


2022年  107分  日本製作

 
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