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【映画】『ゲット・アウト』(2017年) 笑顔の裏に潜む恐怖――無意識の差別が黒人を追い詰める衝撃のサスペンス! | ネタバレあらすじと感想

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◆映画『ゲット・アウト』の作品情報

【原題】Get Out

【監督・脚本】ジョーダン・ピール

【出演】ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ他

【配給】ユニバーサル・ピクチャーズ、東宝東和

【公開】2017年2月

【上映時間】103分

【製作国】アメリカ

【ジャンル】

【視聴ツール】U-NEXT、吹替

◆キャスト
クリス・ワシントン:ダニエル・カルーヤ
ローズ・アーミテージ:アリソン・ウィリアムズ
ディーン・アーミテージ:ブラッドリー・ウィットフォード
ミッシー・アーミテージ:キャサリン・キーナー
ジェレミー・アーミテージ:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
ロッド・ウィリアムズ:リル・レル・ハウリー

◆ネタバレあらすじと感想
映画『ゲット・アウト』は、ジョーダン・ピール監督によるスリラー・ホラー映画で、黒人青年クリス・ワシントンが恋人の白人女性ローズ・アーミテージの実家を訪れ、そこで予期せぬ恐怖に巻き込まれる物語です。
クリスは写真家として活動しており、恋人のローズと幸せな日々を送っています。ローズから週末に両親の家へ招待されると、クリスは自分が黒人であることが問題になるのではないかと不安を感じます。しかし、ローズは両親が人種に偏見を持たない進歩的な人物だと主張し、彼を安心させます。
二人は田舎の大邸宅に到着し、ローズの両親であるディーンとミッシーに出迎えられます。ディーンは親しげに振る舞い、ミッシーは冷静で物腰が柔らかい女性ですが、どこか不穏な雰囲気を漂わせます。また、家には黒人の使用人である庭師のウォルターと家政婦のジョージナが住んでいますが、彼らの奇妙な行動にクリスは違和感を覚えます。
滞在中、クリスは徐々にローズの家族が何か隠していることに気付きます。ミッシーは精神科医で、クリスの喫煙をやめさせるために催眠療法を試みますが、その過程でクリスは「沈没」という恐ろしい状態に陥り、自分の意識が無力化されるような感覚を味わいます。彼は夢の中で過去のトラウマに直面し、その後も現実との境目が曖昧になるような不安感を抱き続けます。
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その後、アーミテージ家では毎年恒例の奇妙な集まりが行われ、ローズの両親やその知人たちが集まります。この集まりの参加者たちはクリスに異様な関心を示し、彼の体格や才能について褒め称えますが、その言動はどこか不自然で不気味です。特にクリスがもう一人の黒人男性ロガンと出会った時、ロガンも同様に異常な振る舞いを見せ、クリスは事態の異常さを確信します。
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クリスは友人のロッドに助けを求め、ローズの実家で起きていることに疑念を抱きます。ロッドはこの状況を非常に怪しいと感じ、警察に相談しますが、まともに取り合ってもらえません。クリスは逃げることを決意しますが、そこで衝撃的な事実が明らかになります。アーミテージ家は、黒人の肉体を白人の意識に移し替える「脳移植」の実験を行っており、彼らはクリスを次のターゲットにしていたのです。
ローズの両親と兄ジェレミーは、クリスの身体を奪うために計画を進めており、ローズ自身もその計画の一員であったことが判明します。これまで親しげに接していたローズの態度が一変し、彼女は冷酷な表情を見せます。絶望的な状況に追い込まれたクリスですが、彼はなんとか催眠の影響を振り払って逃走を図ります。
最終的に、クリスはアーミテージ家と対決し、彼らの恐ろしい実験から逃れるために必死で戦います。激しい攻防の末、クリスはローズと彼女の家族を倒し、命からがら脱出します。そこに友人のロッドが駆けつけ、クリスを救出して映画は幕を閉じます。
『ゲット・アウト』は、単なるホラー映画としてだけでなく、人種差別や社会的緊張をテーマにした社会風刺的な要素も持ち合わせています。
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白人の進歩的な態度の裏に潜む無意識の偏見や、黒人の身体が商品化される恐怖を描くことで、現代社会における差別の問題を鋭く批判しています。また、緊張感と不安を巧みに演出することで、観客に強烈な印象を残す作品となっています。

◆考察と感想
映画『ゲット・アウト』は、ジョーダン・ピール監督による斬新なホラー映画でありながら、強い社会的メッセージを内包しています。本作は表面的にはスリラーやホラーの要素を持っていますが、その根底には現代のアメリカにおける人種問題や、人種間の緊張を描いた鋭い風刺があります。
まず注目すべきは、白人と黒人の関係性の描写です。主人公クリスは黒人であり、恋人のローズと彼女の白人家庭を訪れるという設定は、一見シンプルに見えますが、その裏には多くの社会的緊張が潜んでいます。ローズの両親は表向きには「人種差別をしない進歩的な人たち」として描かれています。父親のディーンは、オバマ大統領に2回投票したことを誇りに思い、黒人を「我々と同じだ」と平等に扱っているかのように振る舞います。しかし、これこそが映画の核心的なテーマである「リベラルな人種差別」の描写です。表面的な寛容さが、実際にはどれほど表面的で、無意識のうちに黒人をモノ扱いしているかが物語を通して明らかになります。
アーミテージ家が実際に行っていたのは、黒人の身体を白人の意識で乗っ取るという恐ろしい実験です。これは、黒人の肉体的な強さや外見的特徴が白人にとって「欲しいもの」であることを象徴しており、歴史的に見ても、黒人が物理的な能力や労働力として搾取されてきた背景と重なります。クリスはそのターゲットにされており、彼の身体は彼自身の意識とは無関係に白人に利用されようとしていました。ここで描かれるのは、黒人のアイデンティティが社会的に奪われ、白人によって商品化される恐怖です。
また、映画全体に漂う「不安感」が秀逸です。クリスがアーミテージ家を訪れてから感じる微妙な違和感は、徐々に増幅され、観客も同様の不快感を覚えます。これは、クリスが自分の肌の色によってどのように他者から見られているかを常に意識している状況とリンクしています。特に、アーミテージ家の集会で、白人たちがクリスに対して体格や若さを褒めそやす場面は、まるで彼が展示物のように扱われているかのようで、その不気味さが強調されています。
一方、クリスが友人のロッドに助けを求めるエピソードには、映画全体の緊張感を和らげるユーモアが織り交ぜられています。ロッドはコミカルなキャラクターとして描かれていますが、彼の視点は非常に鋭く、常に状況の本質を見抜いています。彼が警察に相談するシーンでは、黒人であるクリスが直面している危機の深刻さを、当事者であるロッド以外が理解しないという皮肉も描かれています。これは、現実社会で黒人がしばしば直面する無関心や誤解を示唆しており、映画の社会批判の一部として機能しています。
『ゲット・アウト』は単なるホラー映画として楽しむこともできますが、その背後には複雑な人種問題が描かれています。ピール監督は、観客に対して「リベラルであれば差別がないわけではない」という重要なメッセージを伝えており、表面上の善意や平等主義が実際には差別を隠すカモフラージュであることを暴露しています。映画が描く恐怖は、黒人が日常的に感じる違和感や社会的な疎外感そのものです。
最後に、映画の結末について考察すると、クリスが最終的にアーミテージ家から逃げ延びるシーンは、物理的な解放だけでなく、彼自身が精神的にも束縛から解放される瞬間を象徴しています。しかし、それは完全な勝利ではなく、現実世界では依然として人種差別が根強く存在していることを示唆しています。ロッドの登場によって救われるという点も、黒人同士の連帯が必要であることを暗に示しています。
『ゲット・アウト』は、ホラー映画という枠を超え、現代社会に対する強い批判と問いかけを含んだ作品です。観る者に深い考察を促し、単なる娯楽以上の意味を持つ映画として、非常に高く評価されるべき作品です。




評価点   72点
お薦め度  70点


2017年  103分  アメリカ製作

 
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