何気なく見ると別の話と思える話が大変密接な関係をもつことがある。
鉄鋼大手JFEホールディングスと重機大手IHIが11月1日に国内で予定していた造船子会社同士の合併がまた延期になってしまい、事業再編に影響をあたえようとしている。
理由は中国での審査保留だ。日本での合弁に中国がというと異様に聞こえるが、一定規模以上(注)の企業での合弁には中国でも独禁法の認可が必要で、それがないと中国での事業が存続してゆくことができない。これまで、米国企業などでも一部政治問題化したこともある。尖閣問題以降月数件の認可だったものが全くないようだ。
(注)グループ会社での売上を合計して、中国国内での売上が260億円を越える場合
日本では、独占禁止法は特殊な法領域であると理解され、比較的産業界からは軽視(直接の縁がない?)とされることも少なくないが、欧米企業ではひごろから注視し、トップクラスの弁護士団を抱え、ぬかりなく解決にあたる。なぜなら、会社経営を左右することが少なくないからである。
日本では、政治の混乱のなか、独禁法の委員長の空白も1ヶ月をこえ、委員5人のうち3人体制の片肺飛行がつづく。国にとり大事な体制がこんな状態でいいのだろうか。
今回の一連の尖閣諸島問題の報道をBS放送や、インターネットで見ている。日本国内報道は別として、海外での報道が気になる。BBCの報道や、シンガポールのNewsAsiaなどは丁寧に事実をよく追っている。
しかし、それにつけても中国の報道攻勢はすごい。 中国中央电视台は総力をあげて中国の立場の正当性を発信し続けている。そして、海外にゆかれれば気づかれると思うが、海外のホテルでは中国の(国営)放送が通例英語と中国で例外なく入っており、日本語のNHK放送が入っていないホテルが多いのとは雲泥の差だ。
報道のもつ力、国際世論形成の怖さをよく知っているのは中国であり、日本ではない。NHKは予算上、放送受信料からなりったっており、わざわざ海外で英語放送・日本語放送の必要性を考える人は(断定するのも恐縮だが)いないようだ。
英国も長い歴史のなかで、BBCなどに具現されているように、まさに国、議会、国民をあげて、国際社会に訴える「放送」のパワーを知り、したたかに国際世論をリードしている。ロンドン五輪の成功もそんな中にある。
欧州のしたたかさを見る。
それにしてもいつになればNHKが変身することができるのだろうか。正確にいえば、いつになれば誰が(国際的に取り残された)NHKを変身させることができるのだろうか。憂うる。
岩井良之特許庁長官の後任が、枝野幸男経済産業相から発表された。
深野 弘行氏(ふかの・ひろゆき=特許庁長官)79年(昭54年)慶大経卒、通産省へ。商務流通審議官、11年原子力安全・保安院長。神奈川県出身、55歳。
岩井長官退任は、きわめて残念だ。これまでのいろいろな国際的イベントの折に、同長官のシャープな説明や、わかりやすい主張は歴代の長官のなかでは極めて異質で、グローバルな場でも実に堂々とした見識には好感がもてた。
先日のLESアジア年次大会(9月4日)のおりにも、このような国際会議では異例ともいえる発言だったが、USPTO(米国特許商標庁)のREA副長官が、その挨拶の最後で、(日本の知財関係者は)MR.IWAIのような見識のすぐれた人物を長官にもったことを幸いと思ったほうがよいと述べた。 私も個人的にまったく同感である。
日本の特許制度を取り巻く環境がますます難しい舵取りを必要とする時期だけに,(この原子力安全・保安院長へのバトンタッチは)よかったのだろうか。
日経ビジネス5月21日号29ページ。「さよならテレビ-目を覚ませ、家電ニッポン」
「5月上旬、シャープ、パナソニック、ソニーの株価はそろって1980年以来32年振りの安値をつけた。3社の株式時価総額は合計でも3兆円を割り込み、米アップルの10分の1にも満たない水準になった。」
TV産業の絶頂期を識る人からすると、既知の事実かもしれないが、心に響く。
かって米国TV産業が消え、欧州TV産業(とくにドイツ)が消え、長い年数を経て日本TV産業という構図か。
この業界を生きてきた者として重たい話だ。
さる4月20日イタリア大使館で、シズベルジャパンの5周年の記念パーティーを開催することができました。
あっという間の5年間でしたが、200名近くのご来訪をいただき、初代代表としてはよくここまで発展できたと感無量でした。
プレスリリースから。 「シズベルジャパン創立5周年祝賀会開催される
2012年4月26 日 東京発 - 知的財産権管理及び特許権活用の世界的なリーダーであるシズベルは、在日イタリア大使ヴィンチェンツォ ペトローネ氏のご出席もいただき、大使公邸において本日、日本の電気機器メーカーを含む各社の代表をお招きし、日本におけるビジネス展開の戦略的拠点であるシズベル子会社、シズベルジャパン株式会社(東京)の創立5周年を記念して祝賀会を開催しました。ペトローネ イタリア大使は、次のように会の重要性を強調しました「技術革新の強化に多大な関心を持つイタリアと日本両国間においては、知的財産保護のための国際的協力が進展するでしょう。シズベルは、近年、日本で知財分野における評価モデルにまで成長しました。」祝賀会において、シズベルの創業者であるロベルト ディーニは、次のように述べました。「特許権、デザイン、商標等といった無体財産は、国際的なビジネス競争で今後ますますその価値を高めて行くでしょう。近年、シズベルが行った無体財産の有効利用は、イタリアの産業にとって重要な進路であり、新興国との競争を余儀なくされ、大きな困難に立ち向かっている日本を含む先進国の産業にとっても同様に重要な進路です。」
ロベルト ディーニに続き、シズベルグループ最高責任者であるジュスティーノ デ サンクティスは、次のように明言しました。「日本企業は国際的に見ても自社技術の保護に非常に敏感であり、それゆえパテントプールというものの重要性をよく認識している。シズベルジャパンは、権利価値を経済的に正しく評価するためにシズベルグループが培ってきた能力を、日本企業に対し提供することを目指しています。」さらに続いて、シズベルジャパンの表取締役である尾形偉幸が挨拶し「日本企業は世界的に多くの特許保有しながら必ずしもそれらを有効に活用しきれていません。シズベルジャパンは日本企業がそれら特許を活用し、知の創造サイクルを有効かつ速く回せるよう支援して行くという強い意志を持っています。」と語りました。祝賀会の締めの言葉として、ソニー株式会社ソニーユニバーシティ学長の青木昭明様からは、次のようなお言葉をいただきました。「近年、新製品、新システムは、多くの多様な技術から成り立っているものが多くなっています。その要素技術を保有するライセンサーも、あるいは、その技術を使ってビジネスを始めようとするライセンシーも、共に、単独では動くことが困難な時代です。新しい産業、新しい市場をスムースに早期に立ち上げる為には、この多数のライセンサーと多数のライセンシーを、グローバルレベルで結び付けるシズベルグループの役割が、益々重要になってまいります。シズベルグループの今後の一層の発展を祈念いたします。」
毎週火曜に丸の内で開催されている「東京大学知的資産経営研究プロジェクト 新ビジネス塾」(全8回)
知的資産経営研究プロジェクトへのリンクの第2回で「国際標準化、スマートフォン、アジア・世界に広がる特許争奪戦の行方」を話させていただきました。東大先端研 渡部教授のコーディネートのもと、小川紘一様とご一緒でした。知財業界の関係者130名のご出席があり、なかなかの盛況で、お知り合いの方々にも多くお目にかかりました。ありがとうございました。
話の骨子は、デジタル化によって参入障壁の低下が進み、かつ、グローバル化によって伝播するスピードがUPしているなか、目的を明確に持ち、そのための価値ある特許の創出とそれを使う知財人財の育成をどん欲に進めている隣国(韓国、中国)の話や、また、高騰する特許売却事例、アップルVSサムスンの係争の背景などをできるだけ具体例を交えて話させていただきました。また、標準規格の為の特許出願と競合する他社と差別化を図るための特許出願について、出願戦略なども少し付け加えさせていただきました。
日頃経験した話からの話を中心に話させていただきましたが、いろいろな方に新しい知財の潮流についてご関心を持っていただければ幸いでした。