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野田親書受け取り拒否に思う

野田首相の出したイミョンバク大統領あての親書の受け取り拒否がいろいろ話題になっている。

韓国は国際的な評判をきわめて大事にする国で、ロンドン五輪にもトップ外交ででかけるなどして積極外交の国だが、今回の件はあまりに国際外交では異例のことで、いったい韓国がどうしたのかを疑ってしまう。
親書といえば、その国を国民を代表してだされるものである以上、外交で受け取りはして、それに対して返書をするのは当然だからである。

受け取り拒否といえば、イラン戦争の前、当時のブッシュ大統領がフセイン大統領に出したのが、受け取り拒否になったことが有名な事例である。戦争に突入する直前のきわめて深刻な事態のときのことだ。

外交とは比べるべくもないが、たとえ知財の世界でも、きわめて緊張が高まり、当事者の社長が先方の社長に出した親書が受け取り拒否されたといったのでは穏やかではないだろう。

新日鉄vsポスコ 技術流出事件に思う

昨日7月4日の読売新聞(朝刊)に、あの新日鉄VSポスコ事件が、わかりやすくまとめられています。見逃された方は、事件の全貌がよくわかりますのでぜひご一読ください。

事件のあらまし
●登場人物は、日本最大の新日本製鉄、韓国最大のポスコ(かっての浦項総合製鉄)、中国最大の宝鋼集団の三社
●流出した技術は、これからのスマートグリッドの時代にも必須の送電時の電力ロスのすくない「方向性電磁鋼板」。新日鉄が20年以上をかけ開発した門外不出の技術。

事件の発覚にいたる経緯
 2005年ごろから、ポスコが急速に品質をたかめ、宝鋼集団も同様の品質を出し始めたことに新日鉄が気づく。
 2007年韓国でポスコの元研究員による「国家機密の流出」としての刑事事件が発生。同研究員が「国家機密」を宝鋼集団に売ったことが判明し、2008年有罪判決。 ところがこの「国家機密」が、実は(裁判資料になったが)新日鉄の内部資料のリストや、技術をもらした新日鉄OBの名前もあったことが判明。

 2012年4月25日新日鉄はポスコと日本法人と、新日鉄OBを相手取り東京地裁に1000億円の損害賠償で提訴。

以上があらましです。私の感想ですが、同記事では「異例の巨額訴訟」とありますが、それは日本訴訟でのものさしで、国際レベルからすればあまりに小さすぎます。
新日鉄の損害は全世界に及ぶことからすると、東京地裁で何年も何年も争いを続けるより、被告がもっとも嫌がるであろうアメリカで提訴し、アメリカでの該当製品の輸入禁止措置など、もっと実効的な次の手を打てないかを検討すべきと思います。また、訴訟戦略上、次のステップとしてに宝鋼集団との話がでることを今から視野に入れ、着々と準備すべきです。

日本の知財業界の方々をはじめ、関係者の方々は今回の新日鉄の行動(すこし遅すぎたような気もしますが)に強い関心をもち、違法な技術流出問題に目をむけるときではないでしょうか。新日鉄のトップも、業界から「またなんと無駄なことをして」などと批判されるのが日本では常ですので、これらの批判にもひるまずに頑張って欲しいと思います。

いずれにしても丁寧な取材をなさった2人の記者(香取、福森)お疲れ様でした。知財関連の報道はどうも浮ついたり、表面的なものが多いなかで、久々にしっかりとした記事を読ませていただきました。

 

韓国の競争力

 韓国の競争力の強さについて、多くの記事がでていますが、忘れてはならない事実を韓国の東亜日報がふれていましたので、引用します。
東亜日報
一人あたりの年間労働時間がどうどうの世界一位2200時間。今の韓国人は世界一の働き者のようです。日本も似た話を昔々何回も聞かされましたが。

法治国家

 少し固いお話ですみません。
人々の安心して発展してゆける基盤となるのは「法治国家」law-abiding countryであることです。いうまでもなく、約束された当然の「法」を互いに尊重しあって順守することです。たとえば私たちの業界の当然のルールである知的財産であっても、「法治国家」でなければ特段に保護する必要はありません。

 今日(10月24日)の読売新聞1面「地球を読む-日本は国益を守る決意を示せ」にリチャードアーミテージ元米国国務副長官の記事がでており、、日本が公明正大な「法治国家」である以上、船長は裁かれるべきであったとの記事を詳しく書かれていました。この記事を読みながら思いますのは、「法治国家」の概念を自分のものとして咀嚼するには大変努力がいることと、日本の場合、この点が安易ではないかと危惧しています。モラルハザードがひろまることはとても危険なことです。これは日本の常識、世界の非常識の一例かもしれません。

 前原外相は22日の記者会見で「戦略的互恵関係を築くという大局に立って日中関係改善の努力をしたい」と発言し、それを中国外務省は評価するとの談話を発表していますが、戦略的互恵関係のためであれば法治国家という基本を横に置いてもいいというロジックの怖さが見えます。

サムスン 「危機の経営-サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション」

 先日、日本経済新聞に企業比較データがでていました。 見落としされた方のため引用します。

        パナソニック       サムスン電子
 売上     7兆7655億円       9兆7000億円
         (09年3月期)       (08年12月期)
 本国売上   日本 53%         韓国 19%
 
 サムスンは2020年には連結売上高を4倍の4000億ドル(36兆円)に増やし、世界の全産業のトップ10入りを果たす目標を発表しました。

 このような今は躍進のサムスンに、1993年に常務として迎えられ、10年間韓国にあった吉川良三氏の本を読んでいました。「危機の経営-サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション」(講談社)。
サムスン李会長の掲げた3つの改革(パーソナルイノベーション、プロセスイノベーション、そしてプロダクトイノベーションにつき丁寧にかかれています。そう書くとさらっとした印象ですが、実際には1997年アジア通貨危機をトリガーにして韓国を直撃したIMF危機のなか、グループの4割統合整理、16万人から11万5千人への人員縮小のなか、どのように取り組んだかが書かれています。人の気持ちが変わり、ものづくりが徹底的に変わり、そしてその結果商品が変わっていった過程が実にリアルに書かれていました。
 当時の韓国内部での出来事を理解するにはいいかもしれません、ご興味の方は読まれてみてはいかがでしょうか。

 実は私ごとながら、そのころはある日本企業でシンガポールに97年から駐在をしており、サムスンの商品が年を追うごとに進化していった時で、(サムスンの内部変革のことはつゆ知らず)商品の変化から見て、脅威を感じ始め、なにかが起こっていると南国から日本国内にレポートをし始めたのを覚えています。 

知られざるサムスン知財部門

 一般的に企業知財部門は取材されることを嫌いますが、とくにサムスン知財部がメディアにでることは本当にまれです。 今回、朝日新聞の特許特集で登場しています。No Patent No Futureのポスターが強烈なサムスンの思いを示しています。サムスン知財部門
 私もサムスン知財の方々には少なからずお目にかかったことがありますが、この500人の部隊はエリート集団だと思います。
 なお、この朝日新聞のサムスン記事の次のページにはLG知財部門の記事もでていますので、こちらもなかなかよく調べられた記事ですのでご覧になってみてはいかがですか。著名なドクターコーも登場しています。
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toshifutamata

Author:toshifutamata
東京大学政策ビジョンセンター客員研究員。国際知的財産戦略研究。ライセンシング戦略。パテントプール。標準化戦略。中国・韓国知財動向研究。日本知財学会会員。

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