大晦日

大晦日。
今年の漢字は「災」ということで、多くの災害に見舞われた年だった。
そのことはこんなケチなブログに書いてもしかたがないし、自宅から離れてはあまり凝った記事も書けない。
ということで、書きかけて放置していた古いネタから、「災」にかこつけられるものをとりだした。

今年、大学医学部入試で不適正な取り扱いがあったという事件があった。
周知のニュースなので、ここで繰り返してもしかたがないのだけれど、文章にする以上、唐突にならないように少しおさらい。

lif1812140041-p1.jpg 文科省の高官の子弟が優遇されたのではないかという話があったと思ったら、今度は女子受験生や浪人生に不利な扱いをしていたことが相次いで発覚したものだ。
この件について、ある大学が謝罪会見を行ったら、その謝罪(釈明)が、さらに批判の的となった。
その会見での説明が「この年代(受験年齢)では、女子のコミュニケーション能力が高く、それを是正する措置であった」と、性差を正当化しようとしたもの。

私が変な説明だと思ったのは、学業成績は思春期以降、男子が女子を上回る傾向があるように思うから。もちろんそれは一般人口での話で、医大入学を目指す成績上位者というバイアスがある場合にもあたるとは言えないが。

もちろんこれに対しては、能力が高い方を合格させるのが当然とか、そもそも医者は男の仕事という潜在的な差別意識があったのではないか、などの意見を目にする。

そういう点、つまり女性差別意識もあったかもしれないが、多くの大学が同様の女性への不利な取り扱いをしていたことから考えられるのは、報道でも触れられていたと思うけれど、病院勤務医の異常な勤務実態があるなか、女性の医者にはなかなか無理を強いられないとか、女性は外科などを専門にする人が少なくて診療科のバランスが保ちにくいとか、医療現場の事情を踏まえた措置だったということなのだろう。

大学側の説明は措いて、もし性別取扱いについて受験生に知らせていたとしたら、そう一方的に差別的取扱いと指弾されたかどうかは、簡単には言えないかもしれない。
なんといっても、勤務のありかたが一向に改善されないのが最大の問題であることは事実だろう。過労・寝不足、さらにまともな勉強も準備もできていない医師にかかりたいとは、患者側も思わないはずだし。

少し考えれば、へんな説明をしたら批判をあびるぐらいのことは予想できたと思うのだけれど、それでも、そんな説明をしてしまったのは、潜在的差別意識を自覚していないからなのかもしれない。

この事件より前だが、以前、「LGBTは生産性がないから、この人たちに税金を使うのはムダ」という国会議員の発言が問題になったことがあった。(その発言を支持した雑誌が事実上廃刊になった)

この発言のベースにある直接的なLGBTへの無理解や差別意識というのも問題なのだけれど、それだけならまだ好き嫌いの範囲と言って済ませることもできようものだが、問題を深くしてしまったのが「正当化」しようと持ち出してきた変な説明。
この議員の発言を分解すると「LGBTには生産性がない、生産性がない人に税金を使ってはならない、従ってLGBTに税金を使ってはならない」という三段論法になっている。そしてこの「生産性がない人に税金を使ってはならない」ということが正しいのなら、税金を使ってはならない対象には、高齢者も含まれることになる。

子供を産めないメスはさっさと寿命を終えるのが自然という(生物学的に否定されている)理屈を述べ立てた政治家もいた。

この論理には、「障碍者は生きていても役にたたない」として多くの人を殺した人の論理と共通するものがあると思う。

自分の思っていることを変に正当化しようと論理を持ち出すと、こういう大失敗をおかす。
どんな状況でも正しいと受け止められる命題はそうそう多くない。たいていは、ある種の条件や特定の世界の中での命題として正しいにすぎない。下手な論理は身を滅ぼすもとになる。
理屈を言う時は、その理屈が過剰適用されるおそれはないか、少なくとも、聞いた人にどう受け止められるかぐらいの想像力を同時に働かせないとだめでしょう。

今年の漢字「災」との関係?
「口は災いの元」でございます。

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