不十分な公理とキングメーカー問題 その1
- 2015/01/21
- 07:17
唐突ですが、ネットモノポリーでの思い出話をします。
その昔、私は夜な夜なネットモノポリーに耽っていました。勉強もせず毎晩入り浸ってはいたものの、私は極めてカジュアルなモノポリープレイヤーのままで、競技ルールがどうこうなんてことは、あの時までは考えもしませんでした。
そんなある日、私は、一緒にプレイしていた方とちょっとした諍いを起こしてしまいました。
ゲームは終盤。既に1~2人の破産者が出た後で、その時点でゲームに残っていたのは、複数のカラーグループを安定経営している明らかにトップ目な1人と、ただ1色のカラーグループを何とか経営しているのみの暫定2位な1人と、権利書は全部抵当に入りもはや破産を待つだけの私、という3人でした。
私が手番でサイコロを振ったところ、暫定2位プレイヤーの土地に止まり、お金を払えない状況になりました。
「あ、ようやく終わった。でも、暫定2位プレイヤーの土地に止まっての破産で良かったなあ。これで、自分の権利書が暫定2位プレイヤーのものになって、わずかでも暫定2位プレイヤーに逆転の芽が出て面白いもんね。」
なんて思っていたところ、トップ目のプレイヤーから
「破産ですね。救済交渉します。足りない分のお金と、電気水道の権利書を差し上げる代わりに、全部の権利書を抵当に入ったままで引き取りますよ。」
との交渉のお声がけが。
モノポリーをされない方のために簡単にその意味を説明しますと。その交渉は、単なる延命措置でしかありません。その交渉を受けて一時的に破産を免れたとしても、どのみち残りの2人のいずれかの経営する土地にはまって破産することになるのは間違いありません。そこから逆転して1位になることなどあり得ないんですね。
ですから、まあ言ってみればその交渉は、
「運が良ければ、暫定2位プレイヤーが先に破産するまで生き残れるんだから、頑張ってプレイを続けてね」
という程度のメッセージなわけです。
その取引内容を聞いて、当時の私は「そんな交渉は受けずに、私の持っていた権利書が暫定2位プレイヤーに渡った方が、暫定2位プレイヤーにとっても、見ている私にとってもゲームの展開が面白くなってイイじゃん。私が交渉を受ける意味あるの?」と思いました。
で、交渉を断りました。
そうしたら、トップ目のプレイヤーは「えっ?なんで交渉を受けないの?」という反応。
いえ、今ならその反応の意味もよく分かりますし、少なくともあの場では、救済交渉を断るというプレイはあり得なかったと自分でも反省してるんですが。でも、競技モノポリーを解しない当時の私は、そんな反応をされたことが心外で、なんか怒っちゃったんですよね。ホント申し訳ないことをしたと思ってます。
引き続き、モノポリーをカジュアルに楽しんでいる皆さんにご説明を加えさせていただきますと。
競技モノポリーでは、1位(つまり破産せずに最後まで残ったプレイヤー)以外にも、より長く生き残ったプレイヤーを上位とし、制限時間内に全員が破産しなかった場合は、終了時点で資産が多い順に上位とする、という明確なルールが設けられています。そして、競技モノポリーの大会は通常1ゲームでは終わらずに、数ゲームの合計順位から総合順位を決めることになるので、1位にはなれなくても、少しでも上位になることにはとても重要な意味があります。
つまり、1位になれなくても、少しでも長くゲームに留まることや、少しでも資産が多い状態になることに、ゲームのルールの側から明確なインセンティブが与えられているんですね。
ですから、先の私に向けられたトップ目プレイヤーからの救済交渉は、交渉を持ちかけた当人からすれば「あなたに、より上位になる可能性を与えますから、頑張って下さい」という応援でもあったわけです。
でも、そもそも競技モノポリーのそうした規定を解さない私には、そんなポジティブな意味は全く理解できるわけもなく。釈然としないまま、その日は終わったように思います。
で。後になってから、そういった競技モノポリーのルールを調べ、「まあ、みんなそういう考えに則ってプレイしてるなら、少なくともこのネットモノポリーの場では、自分もそれに従ってプレイしてみようか。」と考えを改めました。そして、実際にそうしてみると、競技モノポリーには競技モノポリーなりのカジュアルにモノポリーを楽しむのとは違った面白さがあることが分かりまして、先の私の振る舞いを猛烈に反省したわけでありますけれども。
それはそれとして、しかし。この手の話って、私だけが偶然体験した特別なことではないと思うんです。もっと一般的な、ボードゲームが抱える問題に結びつく、とても示唆的なものではないかなあ、と思うんですね。キングメーカー問題とか。
ということを思ったわけでありますが、長くなったので、続きはまた今度!
それではご機嫌よう。(←結局題名に掲げた問題に全く触れてない投げやりっぷり
その昔、私は夜な夜なネットモノポリーに耽っていました。勉強もせず毎晩入り浸ってはいたものの、私は極めてカジュアルなモノポリープレイヤーのままで、競技ルールがどうこうなんてことは、あの時までは考えもしませんでした。
そんなある日、私は、一緒にプレイしていた方とちょっとした諍いを起こしてしまいました。
ゲームは終盤。既に1~2人の破産者が出た後で、その時点でゲームに残っていたのは、複数のカラーグループを安定経営している明らかにトップ目な1人と、ただ1色のカラーグループを何とか経営しているのみの暫定2位な1人と、権利書は全部抵当に入りもはや破産を待つだけの私、という3人でした。
私が手番でサイコロを振ったところ、暫定2位プレイヤーの土地に止まり、お金を払えない状況になりました。
「あ、ようやく終わった。でも、暫定2位プレイヤーの土地に止まっての破産で良かったなあ。これで、自分の権利書が暫定2位プレイヤーのものになって、わずかでも暫定2位プレイヤーに逆転の芽が出て面白いもんね。」
なんて思っていたところ、トップ目のプレイヤーから
「破産ですね。救済交渉します。足りない分のお金と、電気水道の権利書を差し上げる代わりに、全部の権利書を抵当に入ったままで引き取りますよ。」
との交渉のお声がけが。
モノポリーをされない方のために簡単にその意味を説明しますと。その交渉は、単なる延命措置でしかありません。その交渉を受けて一時的に破産を免れたとしても、どのみち残りの2人のいずれかの経営する土地にはまって破産することになるのは間違いありません。そこから逆転して1位になることなどあり得ないんですね。
ですから、まあ言ってみればその交渉は、
「運が良ければ、暫定2位プレイヤーが先に破産するまで生き残れるんだから、頑張ってプレイを続けてね」
という程度のメッセージなわけです。
その取引内容を聞いて、当時の私は「そんな交渉は受けずに、私の持っていた権利書が暫定2位プレイヤーに渡った方が、暫定2位プレイヤーにとっても、見ている私にとってもゲームの展開が面白くなってイイじゃん。私が交渉を受ける意味あるの?」と思いました。
で、交渉を断りました。
そうしたら、トップ目のプレイヤーは「えっ?なんで交渉を受けないの?」という反応。
いえ、今ならその反応の意味もよく分かりますし、少なくともあの場では、救済交渉を断るというプレイはあり得なかったと自分でも反省してるんですが。でも、競技モノポリーを解しない当時の私は、そんな反応をされたことが心外で、なんか怒っちゃったんですよね。ホント申し訳ないことをしたと思ってます。
引き続き、モノポリーをカジュアルに楽しんでいる皆さんにご説明を加えさせていただきますと。
競技モノポリーでは、1位(つまり破産せずに最後まで残ったプレイヤー)以外にも、より長く生き残ったプレイヤーを上位とし、制限時間内に全員が破産しなかった場合は、終了時点で資産が多い順に上位とする、という明確なルールが設けられています。そして、競技モノポリーの大会は通常1ゲームでは終わらずに、数ゲームの合計順位から総合順位を決めることになるので、1位にはなれなくても、少しでも上位になることにはとても重要な意味があります。
つまり、1位になれなくても、少しでも長くゲームに留まることや、少しでも資産が多い状態になることに、ゲームのルールの側から明確なインセンティブが与えられているんですね。
ですから、先の私に向けられたトップ目プレイヤーからの救済交渉は、交渉を持ちかけた当人からすれば「あなたに、より上位になる可能性を与えますから、頑張って下さい」という応援でもあったわけです。
でも、そもそも競技モノポリーのそうした規定を解さない私には、そんなポジティブな意味は全く理解できるわけもなく。釈然としないまま、その日は終わったように思います。
で。後になってから、そういった競技モノポリーのルールを調べ、「まあ、みんなそういう考えに則ってプレイしてるなら、少なくともこのネットモノポリーの場では、自分もそれに従ってプレイしてみようか。」と考えを改めました。そして、実際にそうしてみると、競技モノポリーには競技モノポリーなりのカジュアルにモノポリーを楽しむのとは違った面白さがあることが分かりまして、先の私の振る舞いを猛烈に反省したわけでありますけれども。
それはそれとして、しかし。この手の話って、私だけが偶然体験した特別なことではないと思うんです。もっと一般的な、ボードゲームが抱える問題に結びつく、とても示唆的なものではないかなあ、と思うんですね。キングメーカー問題とか。
ということを思ったわけでありますが、長くなったので、続きはまた今度!
それではご機嫌よう。(←結局題名に掲げた問題に全く触れてない投げやりっぷり