派遣標準から見る池江璃花子
日本水連は、競泳の日本選手権(4月13~16日・名古屋市ガイシプラザ)のエントリーを公開した。
今年の日本選手権は、世界選手権(7月・ブダペスト)の代表選考会を兼ねているほか、萩野公介、瀬戸大也は大学を卒業し新たな所属で、東京五輪に向けてのスタートとなる。
また、高校2年になる池江璃花子の泳ぎも注目される。
池江璃花子を初めて見たのは2年前の日本選手権だった。
当時は14歳の中学3年生。
最初の種目の100mバタフライでは予選敗退。
200m自由形では、1分58秒77の中学新記録で3位だったが、4位までがリレーの派遣標準を切り、ロシアのカザンで行われた世界水泳の800mリレーの代表に選ばれた。
50m自由形は3位 25秒28=中学新
100m自由形も3位 54秒76=中学新
50mバタフライでは26秒49で優勝(予選で26秒41の中学新)するも、いずれも派遣標準を超えることはできず、世界水泳7大会ぶりの中学生代表はリレーのみだった。
昨年の日本選手権に池江は、
50m自由形、100m自由形、200m自由形
100mバラフライに出場。
100m自由形は内田美希に次いでの2位だったが、他の3種目は優勝する。
しかし、リオ五輪派遣標準を突破したのは100mバタフライのみだった。
昨年の日本選手権で、男女の自由形の50mから1500m(女子は800m)の5種目で、派遣標準記録を破ったのは、男子200mの萩野公介のただ一人。
日本水連が五輪に際し、派遣標準記録を設定するようになって以来、女子の自由形で一人も破れなかったのは初めてだった。
が、現実にはリオ五輪で50m、100m、200m自由形のいずれにも池江璃花子は出場した。
ところが、その3種目共に日本選手権で自らが出した記録を超えることなく敗退。
リオデジャネイロ五輪で、自己ベストを出したのは100mバタフライのみに終わった。
*下記グラフ参照
ここから見えてくるのは、
派遣標準記録を突破していないにもかかわらず、自由形に出場させたのは間違っていた。
もしくは、特に自由形に関しては派遣標準記録が厳し過ぎたのではないのか。
現在、池江は50mバタフライを含めて、長水路で5種目の日本記録を持つ。
一度に5種目の日本記録を持つのは、先に亡くなった山中毅氏と緒方茂生氏についで史上3人目の快挙だ。
特に、リオ五輪で失敗した自由形3種目は、いずれも五輪後に書き換えた。
しかも、その記録は、リオ五輪でも決勝進出相当、悪くても準決勝進出相当の記録である。
これだけのポテンシャルのある選手は、なかなか出て来ないだろう。
東京五輪に向けて、派遣標準記録をどう考えるべきだろうか。
スポーツライターの生島淳氏が以下のようなことを言ったそうだ。
選考会で2位ながらオリンピックで金メダルを獲得した岩崎恭子は、もし当時、派遣標準記録が定められていたら代表に選ばれなかっただろう。中高校生は数か月で飛躍的に記録を伸ばす可能性がある為、派遣標準記録を重視する姿勢はそういった可能性の芽を摘んでしまっている。(中略)
競泳全体の強化という視点から見れば、完璧なシステムには思えない、もっと柔軟な対応をしてもいいのではないか。