スコットランド独立? アンディ・マリーはどうなっちゃう
●アラン・ウェルズ モスクワ五輪陸上男子100m金メダリスト
●デビッド・ウィルキー モントリオール五輪男子200m平泳ぎ金メダリスト
●クリス・ホイ アテネ・北京・ロンドン五輪の自転車で金メダル6個
●アンディ・マリー ロンドン五輪テニス男子シングル金メダリスト
●アレックス・ファーガソン 前マンチェスター・ユナイテッド監督
上記の5人はいずれも英国を代表するスポーツ選手(指導者)だが、彼らに共通するのは何だ?
この問題に回答できるひとは相当な英国通だろう。
答えは、
スコットランド人
2014年9月18日 スコットランドの独立の是非を問う住民投票が実施される予定で、直近の世論調査ではその賛成反対は、ほぼ拮抗している。
英国は連合王国であり、4つの国から成り立つ。
が、その仕組みは日本人からは判りにくい。
英国選手と一様に見ていたアスリートが実はスコットランド人だったり、ウェールズ人だったりする。
ロンドン五輪のテーマは、その「多様性」だった。
英国発展の軌跡が壮大なスペクタクルとして世界に披露され、様々な出身の人々が協力して英国を作ってきたことが示された。
開会式で英国選手団の旗手を務めたのは自転車のクリス・ホイ。
アテネ・北京五輪で金メダルを4個獲った自転車界の英雄はスコットランド人。
長い英国の五輪史の中でイングランド人以外が旗手を務めたのは1972年以来40年ぶりだった。
自他ともに認める英国スポーツ界の顔だった。
アンディ・マリー。
地元開催の五輪では男子シングルで金メダルを、また、ローラ・ロブソンとのペアで出場した混合ダブルスでは銀メダルを獲得した。
そして、2013年にはウィンブルドンで、英国人選手として77年ぶりとなるシングルスのチャンピオンにもなっている。
英国はロンドン五輪で史上最多となる金メダル29個を含む65個のメダルを獲得した。
▲ロンドン五輪英国選手団メダル内訳
が、英国選手団総勢541人には、スコットランド人選手が55人いた。
そして彼らはスコットランド史上最高の金メダル7個を含む12のメダルを獲った。
スコットランドは金メダルだけなら、日本選手団と同数だったのだ。
ついでに言うならば、ウェールズは金メダル3個を含む7個のメダルを。
北アイルランドは金メダルはなかったものの、5個のメダルを獲った。
ロンドン五輪は成功だった。
世界中に英国の現状を知らしめ、イングランド人以外の英国人は、五輪を機会に少し英国人としてのアイデンティティが強まった、と思われた。
だから、今回のスコットランド独立派の増加は予想外でもある。
もし、スコットランドが独立するならば、その時期は2016年3月。
この年に行われるリオデジャネイロ五輪には間に合わない。
冬季五輪に英国はほとんど選手を送り込まないから(英国カーリングチームは実はスコットランド代表だが)
2020年の東京五輪こそがスコットランド選手団のデビューになる。
現在英国代表を務めるスコットランド人選手は、英国かスコットランドを選択することになるだろう。
が、BOA英国五輪委員会やUKスポーツから援助を受けている選手、英国のナショナルスポーツセンターでトレーニングを続けてきた選手は、スコットランド代表を選びにくくなるのではないか。
面積こそ英国の1/3を占めるスコットランドだが、人口、GDPは英国の1/10しかない。
独立後のスコットランドが金メダル7個を維持できる環境にないことは明らかだ。
*注意 北アイルランドの場合
ベルファスト合意を受けて2001年に制定されたアイルランド共和国の国籍法の条項により、2005年以前に北アイルランドに産まれた全ての住民は、アイルランド共和国の市民権も自動的に与えられていた。
言わば、英国とアイルランド両国が北アイルランドの全ての住民にアイルランド人または英国人となる権利を与えられている。
上の表の北アイルランドのメダル数のうち、銅メダルの2個はアイルランド代表として選手が獲った銅メダルだが、この2人の選手は先に行われた英連邦大会(グラスゴー)には、北アイルランド代表として参加している。
追記
表題のアンディ・マリーは、独立問題などについて「自分の考えを公表することは避ける」とコメントしていたが、直近のインタビューでは 「独立すればスコットランドのためにプレーするだろう」と答えている。
が、投票はスコットランド内に住んでいる16歳以上の英国人(イングランド人もOK)が資格を得るが、マリーは現在スコットランドに住んでいないため、投票の資格がない。