私はこれまでも、米国において五輪離れが起きていると指摘してきた。
北京冬季五輪のゴールデンタイムの報道は、NBCのテレビプラットフォーム全体で平均1,070万人の視聴者であり、テレビ以外のプラットフォームのストリーミング視聴者数を含めて1,140万人だった。
これは、夏季・冬季の五輪のゴールデンタイムの報道の中で最も低い数字だ。
これまでの最小値は、昨年の東京五輪の1560万人であり、平昌、東京、北京と3大会連続してワーストが続いている。
冬季五輪だけ見ても北京は平昌(1980万人)から42%、平昌も2014年のソチ(2130万人)から46%減少した。現在、世界的に見たら判らないが、米国内での視聴者数は減少は続いている。
フィギュアスケートは、冬季五輪の華であり、どの大会でも高い視聴率を稼いできた。
特にナンシー・ケリガンとトーニャ・ハーディングの米国人選手が争った1994年のリレハンメル五輪の女子フィギュアは、米国テレビ史に残る高視聴率を上げている。
私も現場にいた長野五輪の女子フリーは、当時16歳だった荒川静香が13位。米国のタラ・リピンスキーの金メダルが決まったのが日付の変わる少し前の23時30分。1998年2月20日金曜日のことだ。
これは米国東海岸の朝9時30分にあたり、米国の熱心なフィギュアファンは金曜日の朝にリピンスキーを応援し、15.8%のまずますの視聴率を取っている。
長野五輪では、同じく米国のミシェル・クワンも銀メダルを獲ったが、この大会以降、米国女子はメダル争いに絡めなくなり、視聴率も芳しくなくなる。
そこで、4年前の平昌五輪は、米国の視聴者に合わせ、韓国時間の昼に行われた。そういえば、羽生結弦やザギトワの演技を、昼休みを延長して観たという人も多いのではないか。
今回の北京五輪は、男子フリーは米国時間に合わせて行われたが、女子は中国の視聴者に合わせた時刻に行われた。
とはいうものの、ドーピング検査で陽性となり、女子シングル4位に終わったフィギュアスケートのカミラ・ワリエワ(ROC)が、世界的な話題となり、視聴率に好影響をもたらすとの見方もあったが、結果は低い数字だった。
北京五輪の放映権は、NBCユニバーサルが2014年に6大会一括で契約した最初の大会だった。
総額は77.5億ドル、つまり1大会あたり13億ドルと言う巨額になり、2032年のブリスベーン夏季五輪まで契約は続く。
が、巨額を支払うNBCは、強気を崩さない。
NBCオリンピックのメディアパートナーは数百万人に達したと胸を張る。
Facebook、Twitter、Instagram、TikTokのNBCオリンピックのコンテンツは10億回以上のインプレッションがあり、平昌五輪と比べて、すべてのソーシャルプラットフォームでの動画再生回数は、69%増加した。
特に、北京から開始されたTikTokでは、2億2950万回の動画が再生され、五輪期間中にTikTokの NBC五輪アカウントは、37万人以上の新規フォロワーがあったという。
]]>下記の画像は20年前の長野五輪の閉会式の模様だ。
サマランチIOC会長(当時・故人)の着ているジャケットの胸には「MIZUNO」のロゴが見える。
ミズノは1995年から2012年までIOCの公式サプライヤーを務めた。
そのため、主に冬季五輪においてIOC委員に防寒のジャケットが必要な際は、必ずミズノのジャケットが用いられた。
東京の2020年の夏季五輪の招致運動中に、招致委員会の中に、活動の中核を担うNPO法人格の理事会を発足させた。
竹田恒和JOC会長が理事長に、事務総長をミズノの会長だった水野正人氏が務めることになった。
このとき、ミズノとIOCの関係が余りに密であったため、敢えて水野正人氏は、ミズノの会長を退任、ミズノもIOCの公式サプライヤーの座を降りることになった。
ご承知の通り、2013年9月のブエノスアイレスのIOC総会で、東京がイスタンブールとマドリードを破り、2020年五輪招致を決めたが、水野正人氏は五輪招致成功の〝陰の立て役者〟と言われている。
▲2010年バンクーバー五輪のロゲ会長 MIZUNOを着ている。
一方、ミズノが退いたあとの公式サプライヤーは2013~2016年までNIKEが務めた。
画像はソチ五輪のバッハ会長。
2018年2月、平昌五輪の開会式で、バッハ会長。
見慣れないロゴのジャケットを着ている。
よく見ると、ANTAとある。
ANTA(安踏)は1991年に創業された中国のスポーツウエアメーカーだ。
中国のスポーツウエアメーカーといえば李寧(Lining)や361°などが知られているが、このブランドのことはあまり知られていない。
が、売り上げ規模でNike、adidasに次いで世界3位にあると言う。
平昌五輪では、次の冬季五輪開催国ながら、ほとんど存在感を示せなかった中国。
だが、裏方ではしっかりと世界のスポーツマフィアに食い込んでいたということらしい。
2019年にIOCと公式サプライヤーの契約をし、2022年まで続くと言う。
一方、世界35か国200団体が支援する世界最大のウイグル人権支援団体が、新疆綿を使用し続けると宣言したANTAの北京五輪公式ウェアについて強制労働の関与が無かったか、IOCへ調査依頼をした。
これに対して、バッハ会長率いるIOCは「強制労働は無かった」と回答。
この言葉を信じる人がどれだけいるのだろうか。
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