高速道路無料化について反対だったのですが、この本を読み、賛成に変わりました。
地方から大都市を見る、世界から日本を見る、現在から将来を見るに見方を変えると、高速道路無料化も悪くないことがわかります。
さらに、デフレで衰退激しい「東京以外の日本」を、ある意味ぱっと明るくするには、目に見える変化が必要です。その変化のためには、高速道路無料化が欠かせないのかもしれません。
著者は、ゴールドマン・サックス投信の社長などを歴任し、自らシンクタンクを設立した人で、
民主党のマニフェストにも影響を与える人物です。
今回、この本を読み勉強になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。
・高速道路の無料化はとても大事なテーマ。なぜなら、それによって、日本の「
国のかたち」が変わるから
・高速道路を無料にして、出入口を今の3倍の2000カ所に増やせば、どこからでも、誰でも行き来できるようになる。人が集まるので、
新たな経済拠点が生まれ、雇用が生まれる
・高速道路はアメリカ、イギリス、ドイツでも、原則無料。しかし、日本の高速道路は有料でバカ高い。通行料金は
1km当り25円。1時間で100km走ると2500円。時給2500円の仕事などほとんどない。ユーザーは法外な料金を取られている
・自動車ユーザーが負担している税金の合計は8兆円
(
車を取得する段階)
「自動車取得税」2533億円「車体課税分の消費税」6500億円
(
車を所有している段階)
「自動車税」1兆6470億円「軽自動車税」1743億円「自動車重量税」9690億円
(
車を走行させる段階)
「ガソリン税」2兆6280億円「地方揮発油税」2812億円「軽油引取税」9277億円「石油ガス税」260億円「燃料課税分の消費税」4374億円
・高速道路ユーザーが負担している税金は、自動車ユーザーが負担している税金8兆円の15%程度の1兆円あまり。この税金を使えば、年間1兆3000億円の
高速道路無料化の財源のほとんどが確保できる
・アウトバーンを持つドイツは、1年間に2兆5000億円しか道路にお金を使っていない。その額は日本の3分の1ほどで、その財源で一般道路も高速道路もまかなっている。膨大なお金を注ぎ込んでいるのに、日本の道路は不便で、高速道路は高い
・大都市以外の高速道路を無料化すれば、交通事故やCO2が減る。日本は自動車が
交通依存度の78%を占める。8割以上の国土の自動車依存度は90%以上。全国的には渋滞する一般道路から高速道路への乗り換えが起こり、渋滞は減少する
・高速道路が無料になれば、物流コストが下がるだけでなく、地方が便利になる。いままで使われなかった地方の国土が使われ、日本の立地コストが下がり、
経済の地方分散がやっと始まる。人や企業が地方に移れるようになり、新しい産業やサービスが生まれる
・
日本衰退の最大原因は、過去の繁栄の方程式にしがみついて、東京中心の経済から、地方が自力で成長する経済に転換していないこと。世界の変化に適応して、国土の利用を変えないから、国力の低下に歯止めがかからない
・これだけ経済の空洞化が進んでいるのに、日本経済は、いまだに既存の大企業と東京を頼り続けている。日本の時価総額で上位50社の企業のうち、38社が東京に本社がある。そのうち、過去30年以内に生まれたのは、ソフトバンク1社だけ
・欧米では、地方で新しい成長が始まった。アメリカのダウ平均30社のうち、ニューヨークに本社を置くのは6社。GE、GM、コカコーラなどニューヨークを出ていき、マイクロソフト、グーグル、ウォルマートの新興大企業はニューヨーク以外から生まれた
・東京都での自動車交通への依存度は30%程度しかない。だから、東京人の多くは、道路やガソリン税の問題といってもピンとこない。自動車交通依存度が90%以上なのは、全国の35道県に上り、圧倒的に多い。これらの地域ではマイカーなしで生活できない
・日本で
自動車交通依存度が低いのは、東京31%、大阪50%、神奈川64%、京都75%、兵庫76%、千葉78%くらいで、平均すると、日本の交通の8割が自動車
・東京の平均通勤時間は片道1時間。ドイツのベルリンの通勤時間は20分。空間と時間にゆとりがないのが、日本の大都会の生活。日本の狭い国土のわずか3%に8200万人の人が住む結果となり、他の地域は過疎地域になっている
・並行する一般道は混雑しているにもかかわらず、比較的余裕がある高速道路の区間は、全国の約65%。約8000kmの65%にあたる5200kmは高速料金が高いために活用されていない
・日本の平均
インターチェンジ間隔(約10km)は、欧米の約2倍。そのため、高速道路の出入りが不便で、料金所の渋滞が多く、時間とガソリンのムダになっている。高速道路が無料だと、一つ10億円以上かかる料金所や出入り口は必要ない
・余っていることが明らかなガソリン税などの道路財源を使って、高速道路の借金を返せばいい。そうすれば、高速道路は無料にできる
・通行料金が無料になれば、料金所も四つ葉のクローバーのような
巨大インターチェンジも要らなくなる。簡単な出入り口をいっぱい作って、一般道路との接続をよくすれば、いまよりはるかに便利になる
・ガソリンが1ℓ25円安いほうがいいと思うかもしれないが、本当にお得なのは高速道路無料化のほう。なぜなら
高速道路は1km25円だから。50km離れたところの高速料金が無料になれば、25円×50km=1250円お得
・
アイゼンハワーの功績は、有料にしろという意見を退け、ドイツと同じ、
全国無料の高速道路網を作ったこと。それ以後、カリフォルニアやテキサスなど、鉄道網が発達していなかった地域で、生活圏とビジネス圏が一気に広がり、アメリカ経済の黄金時代が始まる
・かつて一億総中流と言われた日本社会で、正社員と非正規雇用者、団塊の世代と若者、東京の人と地方の人、こうした格差が広がり固定されるようになった。大人の格差は、家庭の格差を通じて
子供の格差に繋がっている
・東京は、持家の比率が全国で最も低く、一人暮らしの人の割合が最も高い。
借家で一人暮らしの老人が具合悪くなったとき、公的な施設で世話することが義務となる。老人が増えたとき、東京が全国のお荷物になる
・高速道路無料化が実現したとき、最初に大発展するのは、高速道路を使えば大都市にすぐに行けるのに、いままで通行料金が高くて利用できなかった地域。その代表が東京アクアラインの木更津から南の地域。明石大橋の淡路島や徳島県
・少子高齢化で日本経済が完全に成熟期に入っているのに、
東京一極集中の国土をそのままにしているから衰退が加速している
・中国は、毛沢東の時代、強い国家統制をしき、地方政府には自由度もやる気もなかった。それが1979年の小平時代になって、農村や地方政府からの思い切った自由化が成長を生んだ
・アメリカは、1970年代に国の財政が破綻の一歩手前までいき、連邦政府が州など地方へ補助金を減らしたところから、
地方主体の経済運営が加速した。金融、通信、航空の規制緩和によって、一気に、全国どこにでもビジネスの拠点が作れる国土を作った
・日本の教育は、人が作った問題に、人が考えた答えを出す訓練ばかりされ、自ら問題を見つける戦略思考の基礎となる訓練を破壊している。金融や情報や経営戦略は、付和雷同すれば負ける世界。
物事の本質を見抜くことにしのぎを削るのが世界のルール
著者は、高速道路無料化の向こうに見えるものを考えて、意見しています。その「向こうに見えるもの」とは、新しい日本のかたちです。
衰退、減速の著しい日本を、何とか変えていくために、高速道路無料化を起爆剤にしたいと考えているのではないでしょうか。
変化が目に見える形で現われる、高速道路無料化は、日本の経済や生活に計り知れない効果をもたらすと感じました。