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「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『独身者は損をしている』アメリカ価値研究所

独身者は損をしている―財産を築き、健康を維持し、子供の非行を防ぐ「家族」という仕組み独身者は損をしている―財産を築き、健康を維持し、子供の非行を防ぐ「家族」という仕組み
(2007/10)
不明

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結婚すると、得なのか損なのか。子供がいると、得なのか損なのか。

金銭的価値だけで測れば、結婚や子供は、得にならないと一般的に思われています。

この考えに異を唱え、結婚することが、「自分のため」だけでなく、「世のため人のため」にも役立っていることを証明するのが、この本です。

具体的には、健康、寿命、社会資産などの側面から、「結婚は個人的に得する」「結婚制度が社会に得を与える」ことを検証する内容です。

この本を読み、勉強になった箇所が15ほどありました、「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・結婚は「社会的善」。大人だけでなく、子供にも肯定的な影響をもたらす。また、結婚は「公共的善」。経済、健康、教育及び安全面において、地域、州、政府に利益をもたらし、貧困層、少数民族にも利益をもたらす

・既婚の男性は、未婚や離婚した男性に比べ、男性ホルモン値が低い。男性ホルモン値の高さは、「攻撃的行動」「興奮を追い求める行動」「種々の反社会的行動」に関連している

・両親揃った婚姻家族の下で育たなかった思春期の女の子は、生理が始まるのが早く、早すぎる性行動に走り、10代で妊娠することが多い

・同じ学歴、職歴であっても、結婚している男性は、独身男性よりも所得が高い。結婚そのものが男性の経済力を24%上げる

・片親だけの家庭で育った男の子は、「自殺」「事故」「依存症」等の原因で死亡する率が、両親揃った家庭よりも50%高い

・ほとんどの先進国において、中年男性「独身者」「離婚者」「妻に先立たれた者」の死亡率は、妻帯者の約2倍。非婚の女性の場合は、既婚の女性の約1.5倍

・この半世紀の間に、10代や若年成人層の自殺率は3倍になったが、これを説明する最も重要な要素は「離婚した親と暮らしている若者の増加」である

若年犯罪常習者に対する調査研究から、結婚し良好な結婚生活を築いた者の犯罪率は、未婚あるいは良好な婚姻関係が築けなかった者に比べ、3分の2に減る

・母親のストレスや緊張ばかりが強調される一般議論とは全く反して、「母親としての人生の満足感」は、「とても満足」が81%、「ある程度満足」が16%。満足度は、母親の収入と学歴に比例して高くなる傾向

・92%以上の母親は、「母親になった後は、自分の子供だけでなく、すべての子供の健全な成長が気になる」という考えに同意

・87%の母親が、広告、宣伝、さらにはマスメディア全体が子供に与える影響に懸念を示している。88%の母親は「お金が自分たちの生活を支配し過ぎている」という質問に同意

・72%の母親が「アメリカ社会で権力のある地位にいる母親は、もっと母親や子供の生活を改善する努力をするべきである」という質問に同意

・「幸せな結婚」と「結婚に対する高い社会的評価」という重要な関係性を認識し、結婚に対する評価を高めることは、皆がその恩恵に浴する価値あることである



この本を読んで、興味深かったのは、「結婚が社会全体に得を与えている」という記述です。健全な家庭の営みが、世のため人のために、社会的貢献をしているということです。

少子高齢化や出生率の低下が叫ばれる今日、結婚して子供を育てている人たちを尊敬し、社会的、経済的に、もっと優遇しないといけないように思います。
[ 2010/09/30 07:24 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『お金に愛される生き方』邱永漢

お金に愛される生き方 (学びやぶっく)お金に愛される生き方 (学びやぶっく)
(2009/04)
邱 永漢

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邱永漢さんと言えば、過去に多くのお金に関する本を書かれてきています。お金の神様とも称せられています。また、お金を生む商売にも鋭い目を持っておられます。

この本は、著者が出版された数多くの本の中から、お金に関する記述を抜粋したものです。少し、断片的で、大意をつかめない部分もありますが、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・お金は使わなければ残っていくけれども、時間は使わないとそのまま消えていく。それだけに、時間の使い方は大切

・貯蓄は余裕のある人が豊かな収入の中から貯め込んだものではなくて、なけなしの収入の中から克己心を発揮して捻出するもの

・買いたいと思った品物で、それがなくては生活できないものなどあまりない。一度目は買わずに、もう一度、考えてから買いに行く。そうすると、たいていは二度は行かない。行ったとしてもまずは買わない

・若いときに節約の習慣を身につけておくと、お金が自然に貯まってくるから、そのうちに節約をしなくてもよいようになる

・貯蓄額は収入に比例するものではない。不安の大きさに比例している

・バブルで貧乏クジを引いたと思っている人が多いが、「貧乏クジを引かなかったのは誰か」と言えば、それは「貧乏な人」。ある程度お金を持っていて、貯めよう、増やそうと思う人は、つねに貧乏クジを引かされる危険にさらされている

・人生で成功した人とたくさん会ってきたが、高慢な人は一人もいない。成功した人は自分の主義主張や物の見方には固執するが、他人に対して威張りちらすことはない

・消費が美徳の世であろうと、金持ちになるための基本姿勢は、お金の値打ちを知り、倹約することに変わりはない

・多くの金儲けのチャンピオンが、一生かかっても使いきれないだけの財産をつくっても、なお金儲けをやめないのは、金儲けに麻雀をやるようなスリルを伴った楽しみがあるから

・経済の発展と人口の大都市集中とインフレがある限り、地価を押し上げるエネルギーは蓄積され、ある時点に達したら、またまた爆発する

・虎に食われないですむ方法を考えて、うまく虎を避けて宝の山に近づける人は、百人か千人に一人かもしれない。それでも必ずそういう人は現われる。宝の山はそれを探し当てる人を待っている

・不況とは漁場が変わることだから、新しい漁場に移ればいい。新しい漁場は聡明な人が発見するが、その人の隣で釣りをする手もあるし、その人が釣った魚を売る手伝いをすることもできる

・いつの時代でも、お金を借りて、ちゃんと金利を払ってきた人が、金利を受け取った人よりもお金持ちになっている

・金持ちというのは、いくら貯めたかではなく、一生の間にいくら使ったかで決まる。お金は使い終わってはじめて完成品になる

・お金のある人は、お金そのものが人をこき使う性質を持っているので、よほど気をつけないと、いつの間にか、お金にこき使われて一生を台無しにしてしまう



邱永漢さんは、実際に、お金を稼いで、お金を貯めて、お金持ちになって、お金持ちの心理がよくわかっている作家です。

邱永漢さんのお金に関する記述の中で、一番面白いのは「お金の使い方」です。お金持ちになって、実際にお金を上手に使った経験がなければ書けないように思います。

そういう意味で、この本は、お金持ちになりたい人もお金持ちになった人も両方楽しめるのではないでしょうか。
[ 2010/09/28 06:34 ] お金の本 | TB(0) | CM(2)

『法華義疏(抄)・十七条憲法』聖徳太子

法華義疏(抄)・十七条憲法 (中公クラシックス)法華義疏(抄)・十七条憲法 (中公クラシックス)
(2007/05)
聖徳太子

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聖徳太子と言えば、昔の1万円札、5千円札であり、「日出づる処の天子」「和を以て貴しと為す」といった言葉が有名です。

以前より、聖徳太子は十七条憲法で何を決めたのか、何を言いたかったのかを知りたかったので、現代語訳のある、この本を読みました。

法華義疏(抄)は、かなり専門的なので、十七条憲法だけに絞って読みました。面白かった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人にはそれぞれ党派心があり、大局を見通している者は少ない。だから、争いを起こすようになる。しかし、上も下も和らぎ睦まじく話し合いができるならば、おのずから道理にかない、何事も成し遂げることができる(第一条)

・真心をこめて三宝を敬うこと。三宝とは、「悟れる仏」と「理法」と「人々の集い」である。三宝にたよらなければ、邪な心や行いを正しくすることはできない(第二条)

・官吏が礼を保っていれば、社会秩序が乱れない。人民が礼を保っていれば、国家はおのずから治まる(第四条)

・役人たちは飲み食いの貪りをやめ、物質的な欲を捨てること。このごろ、訴訟を取り扱う役人たちは私利私欲を図るのが当たり前となり、賄賂を取って当事者の言い分をきき、裁きをつけている。貧乏人は何をたよりにしていいのか(第五条)

おもねり媚びる者は、上の人に対しては好んで目下の人の過失を告げ口し、また部下に出会うと上役の過失をそしるのが常である。このような人は、主君に忠心がなく、人民に仁徳がない。これは世の中が大いに乱れる根本なのである(第六条)

・世の中には、生まれながらにして聡明な者は少ない。よく道理に心がけるならば、聖者のようになる(第七条)

・官吏は、朝早く役所に出勤し、夕は遅く退出しなさい。公の仕事は、うっかりしている暇はない(第八条)

・まこと(信)は人の道(義)の根本である。何事をなすにあたっても、真心をもってすべきである。善いことも悪いことも、成功するのも失敗するのも、必ず、この真心があるかどうかにかかっている(第九条)

・心の中で恨みに思うな。目に角をたてて怒るな。他人が自分にさからったからとて激怒せぬようにせよ。人にはみなそれぞれ思うところがあり、その心は自分のことを正しいと考える執着がある(第十条)

・他人が自分に対して怒ることがあっても、むしろ自分に過失がなかったかどうかを反省せよ。また自分の考えが道理にあっていると思っても、多くの人々の意見を尊重して、同じように行動せよ(第十条)

・功績のある者に賞を与えず、罪のない者を罰することがある。国の政務を司る官吏は、賞罰を明らかにして、間違いのないようにしなければならない(第十一条)

・官吏は他人を嫉妬してはならない。自分が他人を嫉めば、他人もまた自分を嫉む(第十四条)

・私心があるならば、必ず他人のほうに怨恨の気持ちが起こる。怨恨の気持ちがあると、必ず心を同じにして行動することができない。心を同じに行動しなければ、私情のために公の政務を妨げることになる(第十五条)

・重大な事柄は一人で決定してはならない。必ず多くの人々と共に論議すべきである。多くの人々と共に論じ是非を弁えていくならば、その事柄が道理にかなうようになる(第十七条)



この十七条憲法を読むと、1400年前も今も、日本人のすることはほとんど変わっていないことがわかります。その変わらない性質に対する戒めも、ほとんど変わっていません。

この十七条憲法は、記録上に残る日本最古の道徳かもしれません。初めて道徳を説いて残した聖徳太子は、やっぱり偉い人だったのではないでしょうか。
[ 2010/09/27 07:01 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『侏儒の言葉・文芸的な、余りに文芸的な』芥川竜之介

侏儒の言葉・文芸的な、余りに文芸的な (岩波文庫)侏儒の言葉・文芸的な、余りに文芸的な (岩波文庫)
(2003/02)
芥川 竜之介

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この本は、芥川竜之介が死ぬまでの4年間に書き綴った箴言集です。芥川竜之介と言えば短編小説が有名ですが、この箴言形式に彼の理性と思想が、もっとも表れているように感じます。

大正末期の時代の鋭い社会観察と人間観察、それと彼の人生観が組み合わさった読み応えのある書です。

この箴言集の中で、共感した箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・強者は道徳を蹂躙するであろう。弱者はまた道徳に愛撫されるであろう。道徳の迫害を受けるものは常に強弱の中間者である

・軍人の誇りとするものは必ず小児のおもちゃに似ている。緋縅の鎧や鍬形の兜は成人の趣味にかなったものではない。勲章も。わたしには実際不思議である

・正義は武器に似たものである。武器は金を出しさえすれば、敵にも味方にも買われるであろう。正義も理屈をつけさえすれば、敵にも味方にも買われるものである

政治的天才とは彼自身の意志を民衆の意志であるかのように信ぜしめるものを言う。このゆえ政治的天才は俳優的天才を伴うらしい

・人間性そのものを変えないとすれば、完全なるユウトピアの生まれるはずはない

・弱者とは友人を恐れぬ代わりに、敵を恐れるものである。このゆえにまた至るところに架空の敵ばかり発見するものである

・古来いかにおおぜいの親はこういう言葉を繰り返したであろう。「わたしは失敗者だった。しかし、この子だけは成功させなければ」

・大作を傑作と混合するものは鑑賞上の物質主義である。大作は手間賃の問題にすぎない

・われわれはいかなる場合にも、われわれの利益を擁護せぬものに「清き一票」を投ずるはずはない。この「われわれの利益」の代わりに「天下の利益」を置き換えるのはうそである

・言行一致の美名を得るためにはまず自己弁護に長じなければならぬ

・熱烈なる国家主義者はたいてい亡国の民であるように、熱烈なる芸術至上主義者はたいてい芸術上の去勢者である。われわれは誰でもわれわれ自身の持っているものをほしがるものではない

・最も賢い処世術は社会的因襲を軽蔑しながら、社会的因襲と矛盾せぬ生活をすることである

・運命は偶然よりも必然である。「運命は性格の中にある」という言葉は決して等閑に生まれたものではない

・われわれに武器を執らせるものはいつも敵に対する恐怖である。しかもしばしば実在しない架空の敵に対する恐怖である

遺伝境遇偶然、われわれの運命をつかさどるのはこの三者である。自ら喜ぶものは喜んでよい。しかし他を云々するのは僭越である



80年以上前、軍部が権力を握っていた世の中で、すべてを見通すことができる芥川の鋭い眼光は、自身を生きづらくしたのかもしれません。

天才は、日本社会と日本人をどう考えていたか。そして、その実態は今も変わらないことを知ることができる貴重な1冊です。

[ 2010/09/24 07:08 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『フィンランド豊かさのメソッド』堀内都喜子

フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453))フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453))
(2008/07/17)
堀内 都喜子

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フィンランドに関する本は、「教育立国フィンランド流教師の育て方」に続き2冊目です。今まで、フィンランド、スウェーデン、デンマークと北欧諸国の本を何冊も取り上げてきました。

何回読んでも、参考になることだらけです。今回も参考になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・フィンランドの国際競争力ランキングは、2001年から4年連続世界一。その後も6位以内

・フィンランド人は真面目だが、労働時間は7時間半、残業しない。完全週休二日制なので、あまり働かない。おまけに、夏休みを4週間以上とるのが当たり前

・フィンランド人は、日本の「夜9時まで残業」「夏休みは5日間だけ」というのを不思議に見ている

・フィンランドにいて、景気がいいと感じたことはない。競争力1位は意外。2008年、失業率は6.4%。日本よりかなり高く、近年は「中国現象」といって、モノ作りを人件費の安い中国などで行うことが多く、そのあおりでリストラが多い

・1990年代のはじめ、フィンランドは経済危機に襲われた。失業率は20%にまで上がって、金利が14%にもなった。しかし、政府の積極的な対処で、大不況から立ち直った

・大不況に陥った政府は「銀行の改革再生」を行い、次に「IT産業への投資」を促進した。その次に、「変化や改革を担う人材」を教育するため、教育制度改革が行われた

・大学は授業料を学生からとらないため、スポンサーの援助がなければ研究もできない。教育が産業と結びつき過ぎているが、企業は自分たちで研究する手間が省け、学生は報酬がもらえて研究ができるのでうれしい話

・インターネット利用者の84%がネットバンキングを利用。銀行の支店数がここ10年で半減

無駄な労働力を省き、効率向上にフィンランドは積極的。人口8万人の都市でも、国際課で働く人は1人、広報課は3人だけ

・フィンランドの企業や学校での会議も効率が良い。単刀直入に本題に入り、各自の考えや意見をストレートに述べて、その場で決定、解散となる

・フィンランドには部活動がない。スポーツや趣味は地域単位のもの。その方が、違う学校の生徒とも友達になれる

・中学、高校に制服もなく、校則もないに等しい。公立学校の授業時間数は、OECDの調査国中もっとも少ない。日本に比べ年間100~200時間少ない。高校進学率は日本に比べて低く、男子の半分以上は、職業専門学校を選ぶ

・フィンランドが学力調査で常にトップレベルの主な要因は、「質の高い教師」「偏差値、能力別クラスがない」「クラスで特殊教育」「少人数制」「平等な義務教育」「教師の社会的地位が高い」「経済格差が少ない」「地域差があまりない」

・フィンランドの試験には、日本でよくある穴埋め式や選択式はなく、基本的には論述式

・1クラスの平均人数は25人以下。科目によってはアシスタントやボランティアがつく。フィンランドが好成績なのは、できない子がそれほど多くなく、底上げされた結果

・フィンランド人は読書好き。図書館の利用率は世界一。80%が図書館に足を運び、年平均12回本を借り、1年に借りる本は1人あたり平均20冊

・小学校2、3年生から英語を学び、6年生になると日常会話ができる。英語以外にもスウェーデン語もできる。フィンランド語は、文法が複雑で変化が多く、単語も英語やドイツ語とかなり違うので、外国語を覚えるのは難しい

・フィンランドで大学に入学する学生の平均年齢は23歳。私立大学がない。授業料がない。年1万円の学生費を払えば、学内の医療が無料、食事が半額、他にもさまざまなサービス。国から学生には生活援助金が月6万円支払われる。返済義務なし

・フィンランドではどこで何を勉強したかというのがとても重要視される。「専門的な勉強をした」=「資格あり」とみなされる。職場では即戦力を求められるので、大学の名前よりも、専攻や経験がものをいう

・税率は20%、少し給料が増えれば30%。フィンランド国民は、税金はたしかに高いと思っているが、不満の声は聞こえてこない。「高いのは嫌だけど、その税の恩恵を受けて生活しているので、しょうがない」というのが、みんなの意見

・子供が17歳になるまで、子供一人につき養育手当が月12000円。乳児の医療費は無料。子供の歯の治療費も無料。出産時に子育てセット(ベビー服、育児用品、おもちゃなど)ももらえる。現在出生率は1.8.少子化の危機は過ぎて、落ち着いている

・フィンランドは女性大統領女性首相。女性の活躍だけでなく、若手の活躍もめざましい。26歳で銀行の支店長をはじめ、30代40代の社長も多く見られる。年齢にこだわらない風潮で、上下関係はあまりない

・フィンランドは、性別、年齢、過去、私生活にこだわらないおおらかさが内在している国。それが強い女性たちを生みだし、家族のあり方を変え、いろいろな意味での平等を築いている

・フィンランド人の特徴は、「誰よりもスウェーデン嫌い」「家でもなんでも自分で作る」「普通の人でも別荘ライフを楽しむ」「恥ずかしがり屋」「がんばるという表現がない」



なかなか日本人には理解できない部分も数多くあると思います。理解云々はともかく、頭が良く、皆平等に豊かに暮らしているということは事実です。

つまり、国民全体の知的レベルが高いので、政治のレベルが高くなった。国民の政治レベルが高いと、そのお返しに、国民全体の生活レベルが高くなった(豊かになった)ということではないでしょうか。
[ 2010/09/21 08:44 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)

『転職哲学-気分良くはたらくための考え方』山崎元

転職哲学―気分良くはたらくための考え方転職哲学―気分良くはたらくための考え方
(2004/12)
山崎 元

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著者は転職を10回以上繰り返した転職のプロです。この繰り返された転職を通じて、転職について、さまざまなことを学んでいます。

いい転職とは何か、得する転職とは何か、経験を通じて語られる言葉には深いものがあります。私も、転職したことがあるので、頷ける部分が多くありました。

この本の中で、共感でき、役に立つと思えた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。

ちなみに、著者は、以前「超簡単お金の運用術」で紹介した山崎元氏です。



・新入社員のころに会社から得るものの中心は、お金ではなくて、仕事の経験、知識、スキルであることが多い。これらが身につかない会社は就職先としては損

・転職は「時間」「お金」「自由」の比率を大きく変えるイベントになる。次の転職が「時間」「お金」「自由」のどれを目指すものかを明確に意識しよう

・ドラッカーは「仕事の哲学」の中で、
「今日の問題は、選択肢の少なさではなく、逆にその多さにある」
「何をしたらよいかではなく、自分を使って何をしたいかである」
「最初の仕事はくじ引きである。最初から適した仕事につく確率は高くない」
と言っている

・ドラッカーは辞めることが正しい時として、「組織が腐っているとき」「自分がところを得ていないとき」「成果が認められないとき」をあげている

・転職とは、「主な取引先の変更」である。現在の主要取引先(勤務先)との取引を打ち切って、別の取引先と取引すること

・若い人の場合、「明らかに自分に合わない」という仕事に長くとどまることは得策ではない

事業を興すことは以前よりも随分容易になっている。サービス・情報産業が中心になり、資金調達もかつてより容易になっている

28歳までに、自分の職を決めるという目途がある。これを超えたら、自分がこれまでやってきた仕事の経験を活かすということ

35歳までに、自分にはこの仕事ができるという仕事を確立することが理想。自分の能力、専門分野を持ち、他人と比較されない自分独自の「商品」を持つこと

・自分が変わるか、会社を変えるか、会社を変わる

・ヘッドハンターと付き合うことの最大のメリットは、転職市場の様子や、自分の人材価値、あるいは人材価値を上げる方法などに関わる情報をもたらしてくれること

・仕事をする都度、自分の仕事の内容を主にパソコンのファイルの形で会社と家の両方に持つこと

・転職相談者は、初対面を含めて、ほとんどが好感の持てるいい人たち。わざわざエネルギーを使って転職したいと考えるからには、仕事に真面目に取り組みたいと思っている人が大半

・嫌な感じの転職志望者のパターンは、大別すると、「自分が見えていない人」(プライドの塊のような性格の人)と「他人が見えていない人」(ホラ吹き、ウソつき、約束を守らない、意思決定できない、甘える)の二つに分かれる

・転職をすることのメリットは、転職が勉強のきっかけになること。転職が仕事のスキル上のマイナスに働くことはない

有効な時間の判定基準は、「1.直接お金を稼いでいる時間」「2.物事を決断するために必要な調査の時間」「3.スキルが身についている時間」「4.それ自体が娯楽のように楽しい時間」これ以外の時間は無駄

・これは時間の無駄と思ったら、たとえば会議でも、付き合い残業でも、その場からいなくなることを考える

・1人でも、時間がバラバラでも、平気でランチを食べることができる人は外資系の適性がある

・建前だけで年功制を表面だけ世知辛くした「陰気な成果主義」もあれば、社員に儲けてもらうために、儲けに応じたお金を払う「陽気な成果主義」もある。前者はニセモノの成果主義なので注意が必要

・「価値観に反する仕事をしない」「自分のお金はこだわるが、他人のお金は気にしない」「会社を取引先、同僚をお客様と思う」と働くのが楽しくなる



転職することは「得策でない」と考えている人が多いと思います。

しかし、ヘッドハンティングされるくらいの力をつけ、条件次第で、いつ転職してもいいよう、転職体制をつくっておくことは「良策」ではないでしょうか。

この本は、転職を考える時、貴重な転職指南書になると思います。
[ 2010/09/20 06:05 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)

『人生をたのしむ才能-幸福のヒント350』河盛好蔵

人生をたのしむ才能―幸福のヒント350人生をたのしむ才能―幸福のヒント350
(1997/08)
河盛 好蔵

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大学時代に、著者のロングセラーである「人とつき合う法」を読みました。そのときは、まだ青二才で何もわかっていなくて、記憶にほとんど残っていません。

河盛好蔵氏は、10年前に97歳で亡くなられましたが、生前は、フランス文学者として活躍されていました。文化勲章受章者でもあります。

図書館で別の本を探していたら、たまたま著者の名を目にして、借りて読みました。「幸福のヒント」がサブタイトルで、氏の今までのエッセイの中から、抽出した言葉が350も記載されています。

その中で、なるほどと頷けた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人間の幸福は、人によって予めその分量が一定している。それを小銭にくずし、ささやかな幸福に時々ありつき満足する人と、一度大きな幸福にありつき満足という人の二種類いる。若い時は、ささやかな幸福に心を煩わされないで、大きな幸福を狙うようにしたい

・真の幸福は自己に非ざるものとの間の熱烈な交流のうちに存在する

・自分はいま幸福だが、自分の代わりに不幸になっている人がいると考えることによって、いつも謙虚でいることができる。反対に、自分が不幸な目にあったとき、自分の代わりに幸福になっている人がいると考えることによって、不幸に耐えることができる

我を忘れて遊ぶことのできない者は、同時に我を忘れて勉強することのできない者。つまり、何事をしている場合にも、邪念に妨げられて、気持ちが純粋になれない

・強く憎むことのできる人は、烈しく愛することができる人

・恋愛に成功しても失敗しても、ただそれだけで人生の幸不幸は決まらない。それをどんなふうに自分の人生に役立てるかで、その人の値打ちが決まる

・一度ゼロまで自分を引き下げてしまうと、勇気が出てくる。これが自分のギリギリの限界だと思うと、つまらない自惚れや虚栄心をもつことがばかばかしくなる。そうなると、あとは新しく出直すだけ

・女性の偉さとは、男の持つ、埋もれた、まだ磨かれていない長所を発見して、それを光り輝く玉にすることであると信じている

・何事も約束しない生活、それが一番の理想である。そして、その理想に近づくには、まずこちらで人に約束を無理強いしないことが第一である

・われわれは人間であるかぎり、特別に好きな人や、どうしても好きになれない人ができてくるのは当然。大切なことは、自分の好きな人が、優れた人、立派な人であること

・人とつき合うには、自分を殺すこと。しかし、全部殺してしまえば、自分というものは存在しなくなる。それでは、人とつき合うことにならないので、自分の一部を生かさなくてはならない。その一部の生かし方が難しい

・悪口が誤解されないで相手に通じるような交友こそ、最も望ましい。友情のこもった悪口は、お世辞より難しい。悪口の才能のない人は、黙って笑っているほうが無難

・心に不平不満のあるとき、他人の幸福だけが目に映るとき、私たちの耳に囁かれる他人の悪口は、私たちをとりこにするだけでなく、進んでその悪口の伝播者にする

・人から聞いた話よりも、自分で体験した話の方が、聞き手を感動させる。本当に話の面白い人は、耳学問でたくさんの珍しい話を知っている人ではなくて、体験の豊富な人である

・自分の親友しか本当の悪口を言ってはいけない。もしくは、どんな悪口を言っても、誤解されず、傷つけられない親友を持たなくてはならない

・われわれが孤独を求めるのは、演技から免れたいから。仮面を外したいから

・真の読書家になる修業は、よい本を自分の勘で見つけ、つまらない本を手にしないことを学ぶことにある。しかし、そうなるまでには、たくさんのつまらない本を読んで失望しなければならない



著者はフランス文学に詳しいだけあって、大人の熟練したつき合い方、人生の楽しみ方が詳しく述べられているように思います。

素敵に齢を重ねたい方には、おすすめです。本当の意味での社交術を教えてくれる書です。
[ 2010/09/17 08:33 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『株式投資・長期投資で成功するための完全ガイド』ジェレミー・シーゲル

株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド
(2006/07/13)
ジェレミー・シーゲル石川 由美子

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この本のサブタイトルは、「長期投資で成功するための完全ガイド」です。私も長期投資家のようなスタンスをとっているので、読みました。

この本は、プロの投資家、ファンドマネジャー、金融コンサルタントに愛読されている書です。改定を重ねているロングセラーで、400ページに及ぶ専門書です。

この本の中で、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・株式や債券は、その資産を買おうとする買手が現われて初めて、その売却が吸収される。ベビーブーマーが保有する莫大な株式と債券を現在価値で購入できる次の世代がいない。これは、やがて上昇するであろう金利の上昇や株価の暴落を暗示する

・世界規模で投資すること自体が、一つの成長産業と言っていい。卓越した成長産業とは、国際分散投資のことである

・外国株にまで投資対象を広げる理由は、外国株の利回りがより優れているからではない。海外投資がポートフォリオの分散化をより徹底させ、リスクを軽減させることができるからである

・長期的に見ると、為替レートは主にその国の物価変動によって決まる。株式は、物価変動で投資家が被るロスを埋め合わせることができる実物資産の最たるものである

・景気が山に至る一定期間前に、株式から短期国債に投資対象を移し、景気の谷の一定期間前に、短期国債から株式に戻すことによって利回り(スイッチング・リターン)を得る。超過利回りとは、スイッチング・リターンから長期保有利回りを差し引いたもの

・実質的な経済活動の分析によって株式投資を成功させるのは非常に困難。経済学者ですら、これに必要な洞察力を持ちあわせていない。景気の転換点は、数カ月先まで判断できない場合が多く、株式市場で行動を起こすにはすでに遅すぎる

・ほとんどのファンドが課する手数料は、投資家が優れた利回りを達成し、富を蓄積する上で大きな障害になる。ファンドの成功には幸運が重要な役割を果たすので、優秀なファンドマネジャーを識別するのは非常に困難

・長期投資家は、流動性の恩恵は重要でない。インデックス投資の傾向に敏感にあるべき

・長期投資家が、ポートフォリオにおける株式の比率を低下させたいときには、新しい物価連動国債を選ぶべき

株式ポートフォリオの大部分を、コストが低く分散の効いたミューチュアルファンド(オープン型投資信託)、上場投資信託(ETF)、あるいはインデックスファンドに投資すべき

・どんな国も、すべての市場を支配することはなく、産業界のリーダーは世界のどこからでも台頭する可能性がある。したがって、米国(自国)株だけに執着することは、長期投資家にとってはリスクのある戦略である

・ほとんどの投資家が弱気のときに株式への投資を増やし、強気のときに株式への投資を減らすという逆張り戦略は、長期利回りを改善する

・過去50年において、FRB(米連邦準備制度理事会)が短期金利を低めに誘導しているときの投資は、FRBが短期金利を高めに誘導しているときに投資するよりも、大幅に高い利回りを生みだしている

・分散しないホットな銘柄を追いかける、あるいは市場のタイミングを計るというのは、下手な投資戦略



この本での著者の一貫した主張は、
「1.コストが低い、インデックス(平均株価)ファンドへの投資が基本」
「2.リスク分散のために、海外投資も組み入れておくこと」
「3.景気の谷底の状況で、インデックスファンドを短期国債に逃避させること」
以上のように、まとめられます。

一攫千金を狙わず、物価より少し多めの利回りを安定して追う、長期投資家にとっては、参考になる本だと思います。

プロの運用者を否定する本が、プロの運用者から愛読されているというのは、皮肉ですが、これが投資の真実ではないでしょうか。
[ 2010/09/16 07:03 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『「落とし」の技術-いかにして、相手の本心を見破るか』北芝健

「落とし」の技術―いかにして、相手の本心を見破るか「落とし」の技術―いかにして、相手の本心を見破るか
(2004/07)
北芝 健

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被疑者の拘留時間は、逮捕から48時間以内と決まっています。2泊3日の留置場拘留で取り調べをすまし、自白をとらなければいけません。

当然、被疑者はパニック状態にあり、その中で、供述させるには、相当な心理テクニックが必要になります。

この現場を経験された著者が、実際の事例を交えて、短期間に心を打ち明けさせる方法を、この本で公開しています。この「本音を聞き出す技術」は実社会においても、仕事においても役に立ちます。

今回、この本を読み、勉強になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ロンドン警視庁と意見交換したとき、彼らは、「被疑者を取り調べる場合には、天気の話題から入っていくのが、もっとも自供率が高い」と指摘した。日本の警察でも、何気ない話題から相手の反応を見るのが一般的なやり方である

・「絶対にしゃべらない=ノー」という意識をもっていても、その意識が届かない別の小さなイエスを積み上げることで、固い決意を軟化させる

・「落とし」の極意は、「相手の尊厳をいっさい傷つけない」ことに尽きる。そのためには、相手を蔑視したり、軽視したりしない姿勢を身につけなければならない

・被疑者は所轄署に連行されると、取調室に直行する。そして「弁明録取書」という、被疑者本人の言い分をそのまま書き留める捜査書類を作成する。ほとんどが、自己弁護、自己正当化のオンパレード。頭をフル回転させて「尋問回避術」を作り上げる

・話題はもちろんだが、話し方も相手に合わせることが大事。ヤクザにはヤクザなりの言葉遣い、インテリにはそれなりの口調というように使い分ける

・取調室でよく使われるのが「世の中、不公平」というテーマ。これがもっとも被疑者から共感を得やすい

・年金や税金が、捜査で一番「小さなイエス」を得られるテーマなのだから使わない手はない

・地方出身者が都会で生活する際には、常に「なめられてたまるか」という気負いをもっている。背伸びして生きている人間にとって、故郷のネタは効果的。「ふるさと自慢」を話させると、どんな被疑者も止まらなくなる

・体つきは貧弱。顔つきもブ男。そんなときは被疑者の「根性」をほめる。「自分は強い」という被疑者の自意識を刺激し、心に小さな緩みを生じさせることができる

・いかにも冷徹そうな捜査官の口から発せられる「ほめ言葉」は、効果絶大

・政治活動家やカルト宗教の教祖などは、意外と権威に弱い。彼らがもつボキャブラリーを上回る言葉をいきなりぶつけることによって、情緒で落とすことができる

・女性被疑者に接するときに気を付けることは、「清潔でいること」と頼りない男を演じて、「母性本能をくすぐる」ことの二つ

・男性被疑者には「男気」がある。後輩や仲間の面倒を見るのが好きで、「兄貴、兄貴」と慕われると、人が嫌がる仕事でも平気でこなす。この「男気」をほめてあげる

・はじめて取調室に入ったときに、上目づかい見下ろす形で捜査官を見る被疑者は、心の奥に何かしらもっている

・「上を向く」のはウソの思案中、「横を向く」のは完全拒否

・グレーの服の被疑者は「一見、同調性はあるものの、内実は違う」。赤い服は「本当は自信がないが、自己主張は強い」。スウェットの上下やジャージの服は、「自分度が高く、ワガママ」

服装に金をかける人は虚栄心が強いのは当然だが、「実は、借金が多くて首が回っていない」可能性。思わぬところで、罪を犯す土壌がある

・ひげをきちんと剃っていない被疑者で、業界人を気取る人間ほど、相手への礼儀が希薄。自尊心が強くて人を見下すタイプ

・犯罪研究において、「分不相応な服装」「早食い」などの特徴のある人間は、罪を犯す確率が高いので、注意を払う必要がある

・お昼ご飯を食べた後は、脳に向かう血液が少なくなるため、真実の隠ぺいや策略を企む脳の働きが止まってしまい、駆け引きできなくなり、「どうでもいいや」という気持ちが芽生える。進んで自供することが多い時間帯

・女性の捜査では「5Kをしない」こと。5Kというのは「暗い」「汚い」「こわい」「固い」「臭い」のこと

・「タバコ」や「甘いもの」は使い方を間違わなければ、決定的な情報を引き出す大事な小道具になり得る

・いよいよ落ちる段階まできたら、「今を逃すと刑が重くなる」ことを強調する。ここで「今だ今だ」と言いながら、スッと引く。「三進一退」の精神で臨むことで、被疑者はこれまで以上に自白を考える

・自己中心的で、他人のことなどお構いなしという犯罪者でも、自宅で飼っているペットのことを告げると、みるみる顔色が代わり、涙を流して、全面自供となることがある



落としの技術は、営業するとき、異性を口説くとき、人を動かすときなど、さまざまな対人関係において有効です。

「北風と太陽」で言えば、取り調べも太陽の時代です。頑なな人を48時間内で柔らかくする心理技術は流石です。面白くてためになる本だと思いました。
[ 2010/09/14 08:22 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『クリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンス』ビル・タンサー

クリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンスクリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンス
(2009/10/29)
ビル・タンサー

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この本には、「ネットユーザーが、どういう行動をとっているのか?」「ネットユーザーが何を望んでいるのか?」「それから予測できることは何か?」「それに対して企業はどう対応したらいいのか?」といったことが書かれています。

検索連動型が広告の主流となった欧米では、クリックが日本以上に意味あるものに変わってきています。

日本も、いずれネットユーザーたちの「ポチッ」が世の中を動かしてくるものと思われます。

この本はアメリカの実例が書かれたものですが、今後の日本のマーケティングにも役に立ってくるのではないでしょうか。

この本の中で、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・欧米では株主の力が強いため、広告支出についても、その費用対効果をきちんと説明できないといけない。そのため、検索連動型広告への予算シフトが加速した。インターネット広告費に占める検索連動型広告シェアは、英国59%、米国45%、日本23%

・検索エンジンのサーチ数がSNSからのトラフィックを抜いた後に、ヒットが生まれる。つまり、SNS上で口コミが広まり、評判が有力ブログや評論サイトにも伝わって、ヒットが生まれる

・ネットユーザーの90%がネット上のコミュニティーに「アクセスはするが関わろうとはしない」(潜伏者)で、9%が「時々関わる」ユーザー、「積極的に関わる」のはネットユーザーの1%。ブログの場合、積極的に関わるネットユーザーは0.1%以下

・アップロード作業が容易になったにもかかわらず、1対9対90の比率が変わらなければ、その割合は、積極的に関わろうとする「欲求」のあらわれである

・消費者主導のコンテンツに新しく必要になってくるものは、種々雑多な情報を「情報を寄せた人自身の評判、評価基準、正確性によって分別整理する手法」である

3語以上の検索は、全検索数の23%にまで増加。検索ユーザーも、時間の経過とともに、検索キーワードを絞り込めることに気がつき始めた

・アダルトサイトへのアクセス数は急激に落ち込んでいるが、金曜日の夜だけは、わいせつな習慣が残っている

・写真や動画のアダルトサイトとは別に、活字で表現した「エロ文学」のアダルト向けサイトは、女性のアクセス数が66%。その年齢層も18歳から24歳の占める割合が55%と若く、この分野ではかなり特異な構成になっている

・「スポーツギャンブル」の検索はアメリカンフットボールとバスケットボールのシーズンにピークを迎え、反対にその時期、「オンラインポーカー」の検索は減少する

ポーカー愛好家で目立つのは、年収6万ドルから10万ドルの層。これに対して、スポーツシーズンがオフのときだけポーカーに走るのは、それより低い3万ドルから6万ドルの所得層

・所得の低い世帯の22%がコードカッター(携帯電話だけの世帯)であり、富裕層の数のほぼ2倍。固定電話の世帯を対象にした無作為調査は、調査結果が信頼できなくなってきている

・ネットユーザーのダイエットへの関心は、毎年同じパターンで変動している。新年最初の4日間、減量とフィットネスに対する関心は急上昇する。アメリカ国民の40~45%が、毎年、新年に何かを誓う

・誓いが破られるたびに、自分には人生を変える力があるはずだという思いは強まり、また新たな誓いを立て、それもまた失敗に終わる。こうした人々の心理は「虚偽期待症候群」と呼ばれる

・インターネットの普及を背景に、テレビ番組やコマーシャルを見た後で、それらに関する詳しい情報を見つけようと、人々がコンピューターに向かう傾向がますます強まっている

・ハウツー検索の中で、もっとも人気のキーワードは「どうすればより早く減量できるか」である。体脂肪を「溶けるように」落してくれる魔法の薬のような、手っ取り早い解決法を探している

・「ダイエット」「禁煙」「エクササイズ」「規則正しい生活」の他に「妊娠」も代表的な新年の決意

・「より良い自分」を追及しようとする際に、その興味が持続する時間は極めて短くなっている。欲しいものは今すぐ欲しい。手に入らなければ別のものを探す。到達したい目標にはすぐに到達したい。それがだめならあきらめるといった具合である



人々の本音は、「クリック」に表れます。人々のニーズの最先端は、指先にあるのかもしれません。

この指先を制するものが、マーケティングを制する時代になってきています。検索語句は、まだまだ解明されていないことだらけです。

広告業界及び広告に携わっている方は、今後とも、人々の指先を凝視し続けないといけないのかもしれません。
[ 2010/09/13 08:16 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(1)

『プロ・ヘッドハンターが教えるデキる人の引き抜き方』古賀辰男

プロ・ヘッドハンターが教えるデキる人の引き抜き方―ビジネス超魔術 人材編 (アスカビジネス)プロ・ヘッドハンターが教えるデキる人の引き抜き方―ビジネス超魔術 人材編 (アスカビジネス)
(2007/06)
古賀 辰男

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日本で10社程度と言われる、ヘッドハンティング専門の会社の社長が書いた本です。

どういう人をヘッドハンティングするのか。ヘッドハンティングをどう進めていくのかなど具体的な記述がいっぱい載っています。機密保持契約書まで載っているのは驚きです。

ヘッドハンティングする人より、ヘッドハンティングされることを望んでいる人に読んでほしい本です。

今回、この本を読み、大変勉強になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・真に優秀な人は、あなたの会社が出した「求人に応募してきた」中にはいない。「転職をしていない」「希望していない」人の中にこそいる

・ライバル会社のエースで4番バッターを、年収の3倍を条件にして引き抜く。こうした割り切りができる会社が生き残る

・まず人事に一番優秀な人を持ってくること。そして、ヘッドハントで外から優秀な人材を入れること。人事は未来を形づくる部署である

・求人広告を出す(=応募を待つ)のは、海に網を投げて魚がかかるのを待つ手法。自ら採用したい候補者を探し、1対1で進めていくヘッドハントこそ攻めの手法。本当に必要な人材は、採りに行く。これがいい人材を採る唯一の答え

・日本企業の求人には「年収400~500万円で若い人」という条件が多い。これでは、人材に何を求めるのかという明確なポリシーがない。この採用ポリシーがない企業が実に多い。具体的なイメージを持ってターゲットを絞り込むことが重要

・キャリア人材の採用は、入社したその瞬間に利益を生み出す人でなければならない。キャリア採用には費用対効果が求められることを、いま一度認識しておくべき

採用ツールの違い
「転職サイト等の媒体」(最低月30~50万円、第二新卒、シニア採用向き)
「人材紹介会社」(年収の30%の成功報酬、問題を抱える求職者が多い)
「ヘッドハント会社」(前金制、年収の45~65%、ミドル、エグゼクティブ採用向き)

・ヘッドハントは通常の採用ではない。「商談」である。「採用してやる」ではなく、「入社してもらう」である。「採用してやるぞ」の態度では、話が一発で終わってしまう。謙虚になること

・「君を守る」「一生を預かる」「家族を大切にする」など、経営者は「心に響くワンフレーズ」を用意しておくこと

・ヘッドハンターに向く人は、相手を安心させられる紳士的な雰囲気を持っている人間がいい。適任者が思い当たらない場合は、社内で一番優秀な営業マンを担当者にしてみるのも手

・会ってダメだと思ったら、相手から話を断らせるように仕向ける。こちらから断ると、後々禍根を残すことになりかねない。相手に断らせるには、条件で無理を言うのが一番無難な方法

・デキる、デキないとは別に、自分から最初に労働条件を主張する人は、採用してはいけない。それなりのキャリアを積み、人間性もまずまずであれば、まずは己が果たさなければならない義務を考えるもの

・デキそうに見えて、本当はデキない人を見分けるには、「自分より優れている人材」かどうか。相手が自分より優秀であるかどうかは直感でわかる

・目を伏せて、顔をそむけていたら脈がない。あごが前に出ていたら、話くらいは聞こうとしている。視線が合い、顔の半分だけかすかに笑っていれば、条件に乗りかかっている。お互いの顔が向き合い、顔の両側に笑顔が広がっていれば商談は成立している

・たとえば、「残業、嫌ですよね」といったネガティブな質問に同調しやすいように投げかけ、苦笑い程度ならまあ良し。ここぞとばかりに同調してくるのは要注意

・食べ物、旅行、車、世界情勢など幅広く一般知識を持っていればいい人材という気がするが、これは全く逆。今の仕事に集中していない証拠

・最初から年収がある一定レベルを超えている候補者にとっては、年収はあまりバリューがない。年収1000万円未満の場合、年収アップのバリューは高い

支度金とは、入社してからの給与とは別に支払うもので、プロ野球でいう契約金のようなもの。支度金をどれくらい用意するかは採用戦略の一つ。現実問題、年収の3倍出せば、人は必ず動く

・相手の背中を一押しする一言をぶつける。「あなたしかいない」「何が何でも欲しい人材」(最後の一押しに有効)。「あなたへの社長の評価がものすごく高い」「トップが期待している」(一番偉い人から認められている)。「ご英断を」(男気に訴える)



こんなに手の内を明かすのはいかがなものかと思うくらい、具体的記述が満載の面白い本でした。

この本を読めば、ヘッドハンティングされることを目標にして、働くのも悪くないように思いました。

いつでも、ヘッドハンターがくるように、自分の価値を高めることが、これからのサラリーマン社会で生きていく最適な方法なのかもしれません。
[ 2010/09/12 10:24 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『三十一文字に学ぶビジネスと人生の極意』山本健治

三十一文字に学ぶビジネスと人生の極意三十一文字に学ぶビジネスと人生の極意
(1997/03)
山本 健治

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この本は、古歌道歌をもとに処世のヒントを示すユニークな書です。57577の短歌形式で250以上の歌が詠まれています。

著者は、元市会議員で、関西でテレビのコメンテーターも務められる、マルチな才能の方です。それぞれの歌に、著者の深い教養に基づく解説もあります。読み応えのある本です。

参考になった歌が20ほどありました。「歌の一部」ですが、紹介したいと思います。



・大黒のつちは金出す槌でなし おごる頭をくらわさる槌

・言う人の尊き賤しき選ばずに 良き言の葉は我が事とせよ

・人の事我に向うて言う人は さこそ我が事人に言うらむ

・金欲しや地獄の沙汰も金しだい 金で行けぬは極楽の道

・偏屈な人には味のあるものぞ へつらう人には味なきもの

・悟りとは眉毛の先のつるしもの あまり近くて見る人もなし

・丸くとも一角あれや人心 あまり円きはころび易きぞ

・可愛ゆくば二つ叱って三つほめ 五つ教えてよき人にせよ

・果てしなき欲の重荷をせおいつつ あえぎあえぎて世を渡るかな

・下見れば我に勝りし者もなし 笠取りて見よ天の高さを

・欲深き人の心と降る雪は 積もるにつけて道を忘るる

・掃けば散り払えばまたも塵積もる 人の心も庭の落葉も

・恐るべし槍先よりも舌の先 果てぬ我が身を突きくずすなり

・稽古とは一より習い十を知り 十より帰るもとのその一(千利休)

・世の中は心ひとつのおきどころ 楽も苦となり苦も楽となる

・吾れ善きに人の悪しきはなきものを 人の悪しきは吾悪しきなり

・雑巾を当て字で書けば蔵と金 あちら拭く拭くこちら福福

・世の人に欲を捨てよとすすめつつ あとより拾う寺の住職



三十一字という制限された字数の中で表現する、洒脱で粋な人生訓はなかなかのものです。

人生の応援歌でもあり、心の栄養歌でもある道歌の数々は、ビジネスで疲れた気持ちを励まし、癒してくれるのではないでしょうか。
[ 2010/09/10 08:51 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『吉田松陰・誇りを持って生きる!』森友幸照

吉田松陰 誇りを持って生きる!―信念と志をまっとうした男の行動力吉田松陰 誇りを持って生きる!―信念と志をまっとうした男の行動力
(1997/10)
森友 幸照

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幕末の長州藩の中で、好きな人物は、吉田松陰、大村益次郎、高杉晋作の3人です。この人たちに共通するのは、常識にとらわれない天才型ということです。

明治維新後、秀才型のリーダーが実権を握りますが、明治維新の礎をつくったのは、これらの天才型の人たちだったと思います。

その中でも、特に異彩を放つのが、吉田松陰です。黙っていたら、処刑されずにすんだのに、幕府に非を悟らせるために、自ら信ずるところを述べ、自らの意思で処刑されてしまいました。

松下村塾では、短期間に人を育て、その死後も塾生たちに大きな影響を与えました。

吉田松陰は、松下村塾で何を教え、どういう態度で塾生に接したのか、どういう性格の人だったのか、知りたいことは山のようにあります。

この本を読み、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・武士だけが農工商のような業がないのに、その上にいるのはなぜか。国を治めるという役割があるからである

・行動に現わさない知識は真の知識ではないし、知識をないがしろにした行動は真の行動とは言えない。知識と実践は二つにして一つであり、先後助け合って、真の知識、行動となるのである

・聖人や賢人の言行だからといって、おもねらないことである。無批判に鵜呑みにし、少しでもおもねる気があると、かえって害になる

・歴史書を読んで、古人の実践活動を見れば、自分の志を励ますことができる

・心はもともと生きている。生きているから、なにか物事に接すると触発される。触発されると、心は感じ、考え始める。そのようにして啓発されるのが、旅の有益な点である

・計画どおりにいかなければいかないほど、志はますます堅くなる。天が我に試練を与えているのである。なんの悩むことがあろうか

・とらわれの身となり、牢内で過ごしているが、書物を読み、道理を考えていると、落ち着いて自分を見つめることができて、牢屋暮らしを苦しいと思う暇もない

・井戸は湧き出る水が多いか少ないかが大事であって、掘ることが浅いか深いかが問題ではない。同様に、学問にあっては、道が得られるかどうかが重要であって、努めたことが厚いか薄いかは、問題にならない

・一緒に勉強しようではないか。お互い、それぞれ得意とするもので、師匠になろうではないか

・人と生まれて、人の道を知らないでは、恥ずかしい限りである。この恥じるという気持ちがあるなら、書を読み、道を学ぶ以外にない。そして道理を知れば、心は充実してくる。功利は抜きにして学ぼう

・人には人の心があり、自分には自分の心がある。おのおのがその心を大事にして交際するのが、心友というものである。もし、自分の心を曲げて相手の心に合わせるなら、心友とは言えない

・志のある者が、同じ時代を生き、同じような道を求めているのは喜ばしい。しかし、自分の心を曲げて相手に合わせてはいけない。また、相手の心を無理に自分に合わせようとしてもいけない。お互いに力の限り論じ合おう

・心の底から、そうしようとして言うのではなく、ただ非憤慷慨して正義感ぶるのは、世俗的な功名心にすぎない。この種の意見を吐く人をもっとも憎む

・事を論ずる時は、自分が置かれている立場、自分自身のことから、意見や見解を始めるべきだ。それが着実というものだ

・死して不朽の見込みあらば、いつでも死ぬべし。生きて大業の見込みあらば、いつでも生くべし

天下の大変革は、些事にこだわり、小手先でやっても成就しない。ただただ公明正大を旨とし、白昼の大道を堂々と行くように行動すべきだ。それで天命に叶えば成就するし、叶わなければ敗れるまでだ

・私には守り札がある。孟子が「至誠を貫いて感じない者はいない」と言っている。この至誠をもって、事にあたるのみ



吉田松陰は本当に純粋な人だったことがわかります。その純粋さが、人を動かしたのに違いありません。

私心がないからこそ、伝えたいことが短期間に、多くの塾生に伝わったように思います。

その純粋さは、「生まれついた性質なのか」「親の教育によるものか」「学問で身につけたものか」。その辺のところは、よくわからなかったので、もう少し、吉田松陰について調べようと考えています。
[ 2010/09/09 07:13 ] 吉田松陰・本 | TB(0) | CM(0)

『なぜこの店で買ってしまうのか-ショッピングの科学』パコ・アンダーヒル

なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学
(2001/02/22)
パコ アンダーヒル

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この本は、2001年に発売されたものです。全米で大ベストセラーになった書です。最近、改訂された新書版も出ています。

客の行動を追跡し、それをもとに、具体的な改善策を企業に提案するコンサルタントが、微妙に動く、客の購買心理事例を記載した内容です。

この微妙な心理が、大きな売上や利益につながるので、この本が売れたのだと思います。今、読んでも新鮮な内容です。

面白くてためになった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・購入者の滞店時間は、非購入者の3倍から4倍。買い物時間の長さに、膨大な意味が含まれている

・駐車場に面したウインドウのメッセージは、大きく、太く、短く、シンプルに。でなければ邪魔なだけ

・見本市などで、入口近くのブースはかなり悪い場所。会場に入ってくる客はそのまま素通りするし、入口で待ち合わせする人々に埋もれる

買物カゴは店内全体に、買物客が必要としそうな場所に分散させておくこと

・読むのに12秒かかる案内文を、客が4秒で通り過ぎる場所に掲示しても仕方がない

・用事をすませる前の客に何か言おうとするのは間違い

・顧客が2週間ごとに来店するなら、ウインドウやディスプレイもその頻度で変える必要がある

・世界中のほとんどの店が、椅子を一脚おけばすぐに店の売上が伸びる。椅子一脚の空間をつくるためなら、素敵なディスプレイを除去すべき。備品をこわし、マネキンも外してしまおう

・女性は86%が買物するときに値札を見る。男性は72%。必然的に男性は高価なものを買いがちで、提案に弱い

・スーパーマーケットは衝動買いが起こりやすい場所。そこで買うものの60~70%が計画外の商品。目を引くディスプレイが有効

・女性が二人で買物するときは、一人だけのときよりも多くの時間とお金をかける。賢明な小売店なら、「お友達と一緒なら~割引」や、試着室の外に椅子を置いて、試着批評が気軽にできるようにする

・女性は腰より下に陳列された商品を見るのを嫌がる。女性が腰をかがめて不快にならないのは一瞬だけ

・ドラッグストアの購入者の91%がパッケージの前面を読み、42%が裏面を読み、8%が側面を読んだ。読むことと買うことは明らかなつながりがある。読むには時間と空間が必要だ

教養の高い客ほど(言い換えれば金持ちほど)ラベルや箱、瓶の表示で買うか買わないかを判断する

・高齢者は高齢者に教えてほしい。若い人や上昇志向の強いおせっかいな新入社員では不向き

・衣料品だけでなく、すべての児童書、ビデオ、ゲームに対象年齢を明記すること。孫へのプレゼントを買い与えるのに必要

・ティーンエイジャーは何を買うかでアイデンティティーを確立する。イメージに弱いため、宣伝、マスコミ、流行、うたい文句などの誘惑に弱い。ブランド名はステータスシンボル

・鏡の前では、客の歩調が鈍る。これは近くの売場にとって大きなメリット

・カップルや友人同士やグループに人気の店は、たいてい繁盛している。グループのおしゃべりや電話を歓迎する店づくりをすれば、おのずと売上も伸びる

・食料品の9割近くが売行不振。これは消費者に嫌われたからではなく、食べたことがないから。新製品の広告に大金をつぎこんでも、消費者に試食させない限り、売り込みに全力を尽くしているとは言えない

・待たされた時間が90秒までなら、その人の時間感覚は正確である。だが、90秒を過ぎると、その感覚は歪んでくる。客の処理に2分は勝者に、3分なら敗者になってしまう

・従業員が対応を開始したあとの待ち時間は、それ以前の待ち時間よりも短く感じる。単純に待っていることを従業員に気づいてもらえば、そして何とか言い繕ってもらえれば、時間の不安はおのずと解消する

・文字を読んでいると待ち時間が短く感じられることは、調査ですでに明らか

・文字は6m離れたところからでも読めるだろうか。ディスプレイが、客がへばりついているときにしか効果を発揮しないのなら、半分しか仕事をしていないのと同じ

・美しいディスプレイは買う意欲をそぐ。少しだけ乱暴な感じにして、手にとっていいことを客に伝えること

・スーパーマーケットの大きな問題は、客が広大な店内に目新しさも刺激も感じないと思い始めたこと。仕切りもない、だだっ広い空間だったところを小規模な専門店に切り替えた



このような考え方を応用すれば、改善できる店や営業所がかなりあると思います。

ほとんどの店は、まだまだこのレベルまで進んでいないように思います。是非、客を追跡して(客のストーカー?になって)、綿密な調査すれば、改善点が見えてくるのではないでしょうか。

店や営業所のレイアウト変更や改装を考えている人は、この本を読むと参考になる点が多いと思います。
[ 2010/09/07 08:09 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『高速道路無料化・新しい日本のつくり方』山崎養世

高速道路無料化 新しい日本のつくり方 (朝日文庫)高速道路無料化 新しい日本のつくり方 (朝日文庫)
(2009/11/06)
山崎 養世

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高速道路無料化について反対だったのですが、この本を読み、賛成に変わりました。

地方から大都市を見る、世界から日本を見る、現在から将来を見るに見方を変えると、高速道路無料化も悪くないことがわかります。

さらに、デフレで衰退激しい「東京以外の日本」を、ある意味ぱっと明るくするには、目に見える変化が必要です。その変化のためには、高速道路無料化が欠かせないのかもしれません。

著者は、ゴールドマン・サックス投信の社長などを歴任し、自らシンクタンクを設立した人で、民主党のマニフェストにも影響を与える人物です。

今回、この本を読み勉強になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・高速道路の無料化はとても大事なテーマ。なぜなら、それによって、日本の「国のかたち」が変わるから

・高速道路を無料にして、出入口を今の3倍の2000カ所に増やせば、どこからでも、誰でも行き来できるようになる。人が集まるので、新たな経済拠点が生まれ、雇用が生まれる

・高速道路はアメリカ、イギリス、ドイツでも、原則無料。しかし、日本の高速道路は有料でバカ高い。通行料金は1km当り25円。1時間で100km走ると2500円。時給2500円の仕事などほとんどない。ユーザーは法外な料金を取られている

・自動車ユーザーが負担している税金の合計は8兆円
車を取得する段階)
「自動車取得税」2533億円「車体課税分の消費税」6500億円
車を所有している段階)
「自動車税」1兆6470億円「軽自動車税」1743億円「自動車重量税」9690億円
車を走行させる段階)
「ガソリン税」2兆6280億円「地方揮発油税」2812億円「軽油引取税」9277億円「石油ガス税」260億円「燃料課税分の消費税」4374億円

・高速道路ユーザーが負担している税金は、自動車ユーザーが負担している税金8兆円の15%程度の1兆円あまり。この税金を使えば、年間1兆3000億円の高速道路無料化の財源のほとんどが確保できる

・アウトバーンを持つドイツは、1年間に2兆5000億円しか道路にお金を使っていない。その額は日本の3分の1ほどで、その財源で一般道路も高速道路もまかなっている。膨大なお金を注ぎ込んでいるのに、日本の道路は不便で、高速道路は高い

・大都市以外の高速道路を無料化すれば、交通事故やCO2が減る。日本は自動車が交通依存度の78%を占める。8割以上の国土の自動車依存度は90%以上。全国的には渋滞する一般道路から高速道路への乗り換えが起こり、渋滞は減少する

・高速道路が無料になれば、物流コストが下がるだけでなく、地方が便利になる。いままで使われなかった地方の国土が使われ、日本の立地コストが下がり、経済の地方分散がやっと始まる。人や企業が地方に移れるようになり、新しい産業やサービスが生まれる

日本衰退の最大原因は、過去の繁栄の方程式にしがみついて、東京中心の経済から、地方が自力で成長する経済に転換していないこと。世界の変化に適応して、国土の利用を変えないから、国力の低下に歯止めがかからない

・これだけ経済の空洞化が進んでいるのに、日本経済は、いまだに既存の大企業と東京を頼り続けている。日本の時価総額で上位50社の企業のうち、38社が東京に本社がある。そのうち、過去30年以内に生まれたのは、ソフトバンク1社だけ

・欧米では、地方で新しい成長が始まった。アメリカのダウ平均30社のうち、ニューヨークに本社を置くのは6社。GE、GM、コカコーラなどニューヨークを出ていき、マイクロソフト、グーグル、ウォルマートの新興大企業はニューヨーク以外から生まれた

・東京都での自動車交通への依存度は30%程度しかない。だから、東京人の多くは、道路やガソリン税の問題といってもピンとこない。自動車交通依存度が90%以上なのは、全国の35道県に上り、圧倒的に多い。これらの地域ではマイカーなしで生活できない

・日本で自動車交通依存度が低いのは、東京31%、大阪50%、神奈川64%、京都75%、兵庫76%、千葉78%くらいで、平均すると、日本の交通の8割が自動車

・東京の平均通勤時間は片道1時間。ドイツのベルリンの通勤時間は20分。空間と時間にゆとりがないのが、日本の大都会の生活。日本の狭い国土のわずか3%に8200万人の人が住む結果となり、他の地域は過疎地域になっている

・並行する一般道は混雑しているにもかかわらず、比較的余裕がある高速道路の区間は、全国の約65%。約8000kmの65%にあたる5200kmは高速料金が高いために活用されていない

・日本の平均インターチェンジ間隔(約10km)は、欧米の約2倍。そのため、高速道路の出入りが不便で、料金所の渋滞が多く、時間とガソリンのムダになっている。高速道路が無料だと、一つ10億円以上かかる料金所や出入り口は必要ない

・余っていることが明らかなガソリン税などの道路財源を使って、高速道路の借金を返せばいい。そうすれば、高速道路は無料にできる

・通行料金が無料になれば、料金所も四つ葉のクローバーのような巨大インターチェンジも要らなくなる。簡単な出入り口をいっぱい作って、一般道路との接続をよくすれば、いまよりはるかに便利になる

・ガソリンが1ℓ25円安いほうがいいと思うかもしれないが、本当にお得なのは高速道路無料化のほう。なぜなら高速道路は1km25円だから。50km離れたところの高速料金が無料になれば、25円×50km=1250円お得

アイゼンハワーの功績は、有料にしろという意見を退け、ドイツと同じ、全国無料の高速道路網を作ったこと。それ以後、カリフォルニアやテキサスなど、鉄道網が発達していなかった地域で、生活圏とビジネス圏が一気に広がり、アメリカ経済の黄金時代が始まる

・かつて一億総中流と言われた日本社会で、正社員と非正規雇用者、団塊の世代と若者、東京の人と地方の人、こうした格差が広がり固定されるようになった。大人の格差は、家庭の格差を通じて子供の格差に繋がっている

・東京は、持家の比率が全国で最も低く、一人暮らしの人の割合が最も高い。借家で一人暮らしの老人が具合悪くなったとき、公的な施設で世話することが義務となる。老人が増えたとき、東京が全国のお荷物になる

・高速道路無料化が実現したとき、最初に大発展するのは、高速道路を使えば大都市にすぐに行けるのに、いままで通行料金が高くて利用できなかった地域。その代表が東京アクアラインの木更津から南の地域。明石大橋の淡路島や徳島県

・少子高齢化で日本経済が完全に成熟期に入っているのに、東京一極集中の国土をそのままにしているから衰退が加速している

・中国は、毛沢東の時代、強い国家統制をしき、地方政府には自由度もやる気もなかった。それが1979年の小平時代になって、農村や地方政府からの思い切った自由化が成長を生んだ

・アメリカは、1970年代に国の財政が破綻の一歩手前までいき、連邦政府が州など地方へ補助金を減らしたところから、地方主体の経済運営が加速した。金融、通信、航空の規制緩和によって、一気に、全国どこにでもビジネスの拠点が作れる国土を作った

・日本の教育は、人が作った問題に、人が考えた答えを出す訓練ばかりされ、自ら問題を見つける戦略思考の基礎となる訓練を破壊している。金融や情報や経営戦略は、付和雷同すれば負ける世界。物事の本質を見抜くことにしのぎを削るのが世界のルール



著者は、高速道路無料化の向こうに見えるものを考えて、意見しています。その「向こうに見えるもの」とは、新しい日本のかたちです。

衰退、減速の著しい日本を、何とか変えていくために、高速道路無料化を起爆剤にしたいと考えているのではないでしょうか。

変化が目に見える形で現われる、高速道路無料化は、日本の経済や生活に計り知れない効果をもたらすと感じました。
[ 2010/09/06 08:46 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『心魂にひびく言葉-森信三語録』寺田清一

心魂にひびく言葉―森信三語録 (活学叢書)心魂にひびく言葉―森信三語録 (活学叢書)
(1995/01)
寺田 清一

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森信三氏は、神戸大学教育学部教授などを歴任し、平成4年に97歳で亡くなられた「教育哲学者」です。宇宙の哲理と人間の生き方を探求する「全一学」という学問を提唱し、全国各地で講演を行いました。

氏が講演したものが、「森信三語録」として遺されています。人間の生き方についての言及は、参考になるところが大いにあると思います。

「心魂にひびく言葉」は、13年前に読んで、本棚の隅にずっと置かれていたものですが、今回、久しぶりに読み直しました。

改めて参考になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・死の絶壁にボールを投げつけ、その跳ね返る力を根源的エネルギーとし、日々真剣に生き抜く

・死は人生の総決算である。肉体の朽ち果てた後に、なお残るものは、ただ、肉体が動いている間に為した真実のみ

・幸福とは求めるものではなく、与えられるもの。自己の為すべきことをした人に対し、天からこの世において与えられるもの

金の苦労を知らない人は、その人柄が良くても、どこか喰い足りぬところがある。人の苦しみの察しがつかぬからである

・書物に書かれた真理を平面的とすれば、「師」を通して学びえた真理は立体的

・自己に与えられた条件をギリギリまで生かす事が、人生の最大最深の秘訣

・金についての親の苦労が分りかけて、初めて稚気を脱する。それまでは結局、幼稚園の延長に過ぎない

・「わが身にふりかかることは、すべて天意なり」「この世に両方いい事はない」。この二つの真理によって解決できないことはない。これは、宗教と哲学が一如に溶解した境である

・人間は自伝を書くべきである。それは二度とない「生」を恵まれた以上、自分が生涯たどった歩みを、直接に血を伝えた子孫に書き残す義務があるからである

・教育とは流水に文字を書くように、はかない業である。だがそれを巌壁に刻むような真剣さで取り組まねばならない

・縦横無尽に受けた人生の切り創を通してつかまれた真理でなければ、真の力とはなり難い

・優れた人の特徴は、その徹底性持続性にある。少なくともこの二つを欠いては、真に優れた人とは言えない

・人は異質的両極に立つ思想を切り結ばせることによって、初めて生きた真理をうる

・野の思想家と呼べるのは、生涯定収がないにもかかわらず、しかも死の間際まで道を求めてやまなかった人

・人間形成の三大要因「1.遺伝的な先天的素質」「2.師教ないし先達による啓発」「3.逆境による人間的試練

・大事なことは、「見通しが利く」ことと「肚がすわっている」こと。この両者は関連は深いが、常に一致するとは限らない

・人間は才知が進むほど、善悪両面への可能性が多くなる。故に才あるものは才を殺して徳に転ずる努力が大切である

・人間の真価と現世的果報は、短い眼で見れば合致せずと見えるが、時を長くしてみれば、福徳一致は古今東西の鉄則である

キレイごとの好きな人は、とかく実践力に欠けやすい。実践とは、どこか野暮ったくて、時には泥臭いところを免れぬもの

・根本的原罪は唯一つ、「我性」。すなわち自己中心性である。そして原罪の派生根は三つ。「1.性欲」「2.嫉妬」「3.搾取



この本を読めば、何だか、心がピュアになっていきます。教育は、技術云々より、先生自身が良き見本にならない限り、生徒はついてきません。このピュアこそが、良き見本の代表なのかもしれません。

森信三氏の文章には、教育の実践者としての誇りを感じます。現在、何らかで教育する立場におられる方は、先生の先生と言われた、氏の文章に触れてみるのも悪くはないのではないでしょうか。
[ 2010/09/05 08:16 ] 森信三・本 | TB(0) | CM(1)

『ギャンブル依存とたたかう』帚木蓬生

ギャンブル依存とたたかう (新潮選書)ギャンブル依存とたたかう (新潮選書)
(2004/11/17)
帚木 蓬生

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著者の帚木蓬生氏は、精神科医で作家です。文学賞も多数受賞されています。この本は、医学的見地に文学的見地が混ざり、学術書なのに読みやすい内容になっています。

人間、大小の違いはあれど、皆ギャンブル好きです。人類の歴史において、ギャンブル好きの精神が功を奏したのか、ギャンブル好きになるDNAがしっかり刻まれているように思います。

この本では、その中でも特にギャンブル好きで、人口の1~2%いると言われる「ギャンブル依存症」の人について詳しく記述されています。

ギャンブル好きの精神について参考になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが紹介したいと思います。



・ドストエフスキー夫人の日記によると、ギャンブルに負けて、すっからかんになったときこそ、夫の創作活動は旺盛になったという。ドストエフスキーの作家活動は、ギャンブルの代償行為だった

・007シリーズを書いた作家のイアン・フレミングの遺した言葉は、全く真実を言い得て妙。「ギャンブルに絶対勝つ方法はただひとつ、イカサマをすることである」

病的賭博者は、いくら負けても、勝つことを信じて、最後まで賭け続ける

・日本で7世紀に禁止令まで出た双六賭博は、その後も息長く存続し、今でも命脈を保っている

動物を使ったギャンブルでは、競馬や闘鶏などの一部を除き、地域差に富んでいる。コオロギ賭博、ゴキブリ賭博、闘ラクダ、闘蛇、ネズミレース、亀レース、ドッグレース、蟹レースなど地域差が濃厚

・近年になって出現したのは、ナンバーゲーム、宝くじ、スロットマシン、競馬、競艇、オートレース、花札賭博、賭け麻雀、パチンコなど。そして将来重要になってくるのは、株取引のデイ・トレードやネットギャンブル

・日本のギャンブルの最大の特徴はパチンコの存在。大抵のギャンブルが法律によってその場所や実施方法が限定されているのに対し、パチンコ店にはその制約がない。カジノが日本全土に満遍なく散りばめられて設置されているのと同じ

プロのギャンブラーはギャンブルによって生計を立てている人。これに対してギャンブル依存症はギャンブルによって身上をつぶす人。プロのギャンブラーがギャンブル依存症にかかることはなく、ギャンブル依存症がプロのギャンブラーになることもない

・ギャンブル依存症の第一の特徴は「耐性」。小さな賭け金本命狙いでは満足しなくなる。第二の特徴は「硬直思考」。データやクセを無視する。加えて「反省」。失敗の原因を探らず、傲慢な思考で口惜しがる

ギャンブル依存者の血縁には、ギャンブル好きや大酒家が散見する。米国の調査では、ギャンブル依存者の親で2割から3割、兄弟姉妹で14%が問題賭博者やギャンブル依存者。また親で4割から5割、同胞で36%がアルコール依存か薬物依存

・ギャンブル依存者の脳内ではドーパミンとノルアドレナリンが大いに生成され、セロトニンの感受性が低くなっている。つまり、新奇なものに敏感で、報酬があればその行動を続け、損害があってもそこから逃げ出さないという性格

・ギャンブル依存症は懐具合とは無関係で、金持ちと貧乏人とを問わず、平等に襲ってくる病気

買物依存症は一般人口の1~6%が悩んでいるという疫学統計がある。クレジットカードが普及し、現金支払機や消費者金融も至るところにあり、ネットでの買物も可能になっている現代では、依存者は増えるばかり。買物依存症の8割から9割は女性

摂食障害のうちギャンブル依存症に合併するのは、過食がほとんど。不安が生じると大食し、そのあと自己嫌悪の抑うつ・不安気分に襲われる。そして、また大食してしまう悪循環が生じる

・ギャンブル依存症の独身率は、通常の男性と比較しても高い。何年もつき合ったあとの恋愛結婚はごく稀。見合いから短期のつき合いを経てゴールインする例が多い。このとき依存者は、自分をかばってくれる、忍耐強い、保護的で献身的な母性愛溢れる女性を選ぶ

・ギャンブル依存者は、自己破算に陥るまでに、種々の手を使って金策に奔走する。眼中に金のことしかない視野狭窄の中では、良識も常識も法律も存在しない。米国の調査では、ギャンブル依存症の治療を受けた患者の46%に逮捕歴が見られる

・もともとギャンブル好きな人は活動的で、目標を決めたらそれに向かう力が強く、工夫好きでもある

・人間社会のアルコールやギャンブルの問題は、行き過ぎによる病気の存在。古くは、8世紀の双六禁断の法から鎌倉幕府の関東評定事書、室町幕府の建武式目、江戸時代の博打禁止の法度、明治政府の賭博犯処分規則などに為政者の毅然とした姿勢が表われている



ギャンブル好きの人は、好奇心旺盛、目標に向かって猪突猛進する、あきらめない、何でもいいように解釈するといった特性も持っています。

これらの特性は、新規分野を開拓する場合に必要な特性です。人類の発展は、これらの人の博打精神のおかげかもしれません。

このように、ギャンブル好きは、薬にもなり毒にもなります。それを薬にして、毒にしないために、この本は、役に立つのではないでしょうか。
[ 2010/09/03 08:07 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『豊臣秀吉の経営塾』北見昌朗

豊臣秀吉の経営塾豊臣秀吉の経営塾
(2005/03/18)
北見 昌朗

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信長、家康は、世襲戦国武将です。天下をとるための人材、領地、資金、ノウハウなどの基盤がありました。しかし、秀吉は、本当の底辺から這い上がって、天下を取りました。

晩年は天狗になって悪政を行いましたが、天下を取るまでのプロセスには、学ぶべき点が非常に多くあります。

今回、経営の視点で、豊臣秀吉を参考にできた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。

ちなみに、著者の北見昌朗氏の本を紹介するのは、「消えた年収」に次ぎ、2冊目です。



・創業者の特色は「背が低い人が多い」「イケメンが少ない」「学歴に無縁な人が多い」。要するにコンプレックスの塊。それを克服しながら生きている。「何クソ。今に見ていろ」の精神である

・秀吉は仕官先を探すとき、「若くて将来性がある」「斬新な感覚の持ち主」「傘下に入っていない」「門地にとらわれず評価してくれる」大将で、大き過ぎない規模の大名という点を考慮した

・大手の系列会社は安定しているが、将来性は疑問。独立独歩の会社は不安があるかもしれないが、大化けする可能性もある

弱者が強者に立ち向かう方法は、長時間労働。事業主の場合、どれだけ働いても、労働基準監督署から指一本触れられない。年間4000時間働いている経営者で、倒産した人は一人も見たことがない

・秀吉は、現場の人間の扱い方を知っていた。日頃から劣等感やひがみ根性がある層に、高圧的な態度で臨めば、反発を買うのは明らか。秀吉は陣羽織を身にまとい現場を激励して回った

・若いころは、人脈づくりが大切。人脈こそ財産。将来世に出るための種蒔き

・「自分を大事にしてほしければ、まず相手を大事にしろ」「相手が喜ぶことを徹底して行え」。相手の立場で物事を考えることのできる人は、意外に少ないもの

人たらしの名人である秀吉は、「相手の言い分を聞く」「相手を潰さない」「約束は命懸けで守る」「相手の懐に飛び込んで、誠心誠意で説得する」ことで難しい交渉をまとめた

・「勝ち癖」を身に付けること。小さなことでよいから、成功体験をさせる。そうすると、人間集団は、勢いが付いてしまって、実際に勝てるようになる

・秀吉は、敵方であっても、自らを犠牲にしてまで、組織のために尽くす人間を評価し、寛大な処置をした

・秀吉は、家臣は家族と同じように扱い、武運拙く亡くなった者への心配りをした。中小企業は、従業員の結婚を奨励するなど、一家主義の社風をつくり、家族的経営を目指す方がいい

・「あの秀吉は恩賞をケチらない」「あの秀吉は敵が降伏すれば許す」ということが周囲に知れ渡れば、皆がなびいてくる。恩賞は宣伝効果まで考えて出した

・人間は物欲があるが、それと同時に名誉欲がある。この名誉欲をくすぐると、よく働くようになる。秀吉は、直筆の感状(感状の過去枚数が席順、発言権の順になる)、手柄を立てた者へ、その場ですぐ褒美(刀剣、羽織、金、銀)を与えた

・従業員には「1人当り粗利益が○○万円以上、申告所得が○○万円以上になったら賞与のアップ」など、分配のルールを説明すれば、従業員は粗利益を増やすために、一層努力する

・戦国大名は、合戦後に首実検を行い、働きぶりを公正に評価しようとした。また、右筆という名の査定官を選んで、首帳に手柄を記録させた。そのような努力は、今の企業経営にも重要

秀吉の参謀、竹中半兵衛は「育てるとは、仕事をさせてみること。誰かをまず、その役に就ける。こうなれば成功という目途をはっきりさせる。上手くできればご褒美加増。できなければ解役。悪質なら追放。それでよい」と助言した

・壁を突き破って飛躍したところは、会社の規模と発展に応じて、その幹部層を変えている。発展に付いていくことができなかった人材に関しては、降職という形で幹部の座から外している。この非情さがなければ、会社は大きくなれない



秀吉という人は、現代で言えば、下請企業や中小企業を大企業に育てる凄腕経営者というイメージです。

その意味では、大きくなることを夢見る、中小零細企業の経営者には、参考になる点が多いのではないでしょうか。

秀吉の逸話は数多く残っています。知っているつもりの秀吉をもう一度勉強するのもいいかもしれません。
[ 2010/09/02 09:03 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)