外交は「言葉」の戦い、経済は「お金」の戦い、戦争は「軍事」の戦いです。日本は、平和ボケが続いたせいか、言葉の戦いが低レベルです。
そこを周辺国家に巧妙に突かれているのが現状です。それを防ぐには、どうすればいいかのヒントが本書に詰まっています。その一部をまとめてみました。
・日本人は「
島国人間」、周囲のほとんどの国の人々は「
大陸人間」。友好的な場では、「島国人間」のやり方をすればいいが、対立的になったら、やり方を変えること
・
にこにこ、にやにやを続けてはいけない。相手の出方によって、こちらも表情を変えること。厳しい表情になったら、それに見合う言葉も出てきて、反論もしやすくなる
・日本人同士なら、初対面の他人といえども、「島国人間」同士だから、ある程度察しはつく。ところが、欧米人相手では、何が飛び出してくるかわからない。思いもかけない頼みごと、批判、非難、説明の要求などが来たりする
・他者との会話や交流において、多くの日本人は「
丁寧か」どうかに気を使う。だが、欧米人で、形式を重んじる人は一部。多くの欧米人は「
誠実か」どうかを重んじる
・言い難いことでも、敢えて言う。それが誠実さの一つの要素。欧米では、
誠実な人間とは、自己の意見、思っていること、感じていることを心から語り、自分の正しさに自信を持っている人のことを言う
・日本人同士では、けんかをすれば不仲になるが、アメリカ人とは、けんかをしたほうが、あとで仲よくなれる場合が多い
・
アメリカ人の人材評価。「演出力、表現力、発表能力に秀でている」「個の主張が強いが、相手の個も尊重する」「コミュニケーションを大切にし、上手」「意見の違いと対立を恐れない」
・誇張は嘘ではない。少々芝居がかっているだけ。それが自己の主張を通すやり方。少なくとも、大陸世界においては「
雄弁は力なり」
・日本は、地理的にも、文化的、宗教的にも、孤独な存在。主張すべきこと、発信すべきことが多いのに、それをあまりしてこなかった。「
文化通訳」なり、「仲介役」なり、専門家を養成し、活用する専門機関の設立が必要
・個人としては、政府に不満を抱いても、外部からの批判に対しては、団結して
政府の味方になるのが、世界のエリート層。日本では、エリート層が政府の味方になっていない
・日本の弱みは、
相手を理解していないこと。相手を理解してこそ、こちらも理解してもらえる。説明を求め、こちらも説明し、理解し合える人を作ることが必要
・「島国人間」の日本人は、
異文化間の軋轢の怖さを忘れている。知識として知っているだけ。説明下手でいられるのも、その怖さを本当に知らないから
・日本人は、「繰り返し」が嫌い。「きちんと説明したのだから、それで充分なはず」「
何回も同じことを言うのは、くどい」というのが日本人的感覚。しかし、国際関係では、反撃は、何度でも、繰り返さなければならない
・国際外交の世界では、対外的に強く発信しないと、向こうの主張が正しく、こちらは「
魔女」にされてしまう。こちらの意見に耳を傾けず、言いがかりをつけてくるような強い態度に出てくる相手には、こちらもより強く出る
・日本の立場に同意しない国々には、説得を続ける。そして、利害関係が一致する国々とは、手を結び、問題に立ち向かうよう働きかける
・国と国との利害の衝突においては、第一段階として、
言葉による外交交渉での解決の努力がなされるもの。武力の行使は最終段階。不戦を誓う日本人にとって、言葉と情報は、残された唯一の紛争抑止の手段であり、衝突回避の手立て
・「武器に替わる、
武器としての言葉」という発想が必要。「軍事力」に代わるものとして、「言葉力」を強めなければならない
・国内政治と国際政治とでは、原理が違う。日本の政治家は、複雑かつ多方面な外交を全世界で展開するために、もっと外務省を強化し、その専門性を使うべき。政治家とは、
言葉によって闘う職業。「口下手」「説明下手」ではすまされない
日本の政治家は、左や右の思想を問わず、周辺国家からの言葉の戦い、情報の戦いに、逃げ腰です。軍備云々の前に、言葉でやり返さないと、日本の主権は守れません。
そして、左右の人たちは、国内では論争していても、対外的には、一致団結して戦うのが大人の行動であり、エリート層の行動です。そこら辺のところが忘れられているのが、日本の嘆かわしい現状ではないでしょうか。