男性最年少芥川賞受賞作家の丸山健二さんの本を紹介するのは、「
人生なんてくそくらえ」に次ぎ、2冊目です。
この本でも、吼えまくられています。日本の大衆に喝を入れています。とにかく、日本人に目覚めてほしいという一心です。その中から、特に印象的だった文章を選び、要約して紹介させていただきます。
・あたかも国家が、社会が、宗教が、職場が、家族が、友人が、各種の保険が、医者が、預金や退職金が、一部始終を保障してくれる、また、先進国の国民なのだから、そうあらねばならないという
希望的観測が、あなたの認識をぐにゃぐにゃに歪めている
・あなたの若さが殺されるきっかけとなった最初の敵は、幼児期や幼少期に注がれた過剰な親の愛。とりわけ
母親の盲目的な愛。野性動物の母親が、わが子を自立させるための純粋な愛情なのに対し、人間の母親は、自身の生涯における
共生の相手と見なしている
・ほとんど勤め人の世界のことしか知らない、あまりに狭く、あまりに貧しい価値観に囚われている母親は、人生における成否の鍵が
学歴にのみあると信じて疑わない
・若さは自立。自立は的確な判断。判断はおのれの願望や欲望に添ったものではなく、全体を眺め、周辺を読み切った上での正確なものでなくてはならない。ところが、男性よりも
欲望に忠実な女性には、それが一番不得手
・働いて収入を得るだけでは、夫とも父親とも言えない。
子供に自立の道を歩ませることを家族に呈示しなければならない
・永続的な安定、絶え間のない安楽、どこまでも可能な逃避、そんなものは人間社会の歪みがもたらした幻想にすぎない
・望んでもいない転勤や配置換え、上層部のいい加減な根拠による人事、出世競争が原因の醜い駆け引き、
単純すぎる仕事、
無茶すぎる仕事、延々と続く家と職場の往復、くだらない上司へのへつらい、幻の安定にしがみつく間に、若さを抹殺され、魂を喪失していく
・
追いかける人生には未来があり、
逃げる人生には過去しかない
・
第二の人生、そんなふざけた、まやかしの言い回しは、欺瞞の最たるものでしかない。、実際は、退職金と一緒に、雇う価値がなくなった奴隷の残骸として、放り出されただけ
・真の若さ、自立の若さは、濃厚で
危険な自由の中にしか存在しない。その自由をつかむためには、潜在能力のありったけを駆使し、全力でぶつかっていく以外に道はない
・家庭やら自尊心やらを全部犠牲にして、仕える主人の金儲けに貢献すれば、「
奴隷頭」くらいなら出世させてもらえる。しかし、奴隷は奴隷
・世間は軽薄で、常に単純。事実から視線をそらし、論理を生理的に忌み嫌い、洞察を遠ざけ、
直感や
情緒といった尺度に頼って、非常に重要な問題までをも決定しようとする
・弱者の大半は似非弱者。弱者のふりを決めこんで、人生との闘いを回避しようとしているだけの
怠け者、あるいは
卑怯者・世のため人のためを真顔で堂々と口走る輩を絶対に信じてはいけない。愛や夢や優しさや癒しや幸福や救いという言葉を乱発する連中を避けるべき
・勤め人の世界では、仕事そのものに注がれるエネルギーは全体の一割にも満たない。
あとの九割は、通勤と、人間関係の調整と、手抜きと、飲み会に費やされる
・酒は文化であるというきれいごとの認識が固定化され、罪悪感の割り込む余地が少ない。世界がより良い段階に移行していかないのは、
酒の蔓延による。酒は感情を鎮めると同時に、正義の怒りや憤りを抑制してきた
・
ギャンブル中毒に陥った人たちは、あこぎな目的を持った狡賢い連中のカモにされたということ。博打の主催者側の思うつぼにはまったということ
・修行の場にふさわしいのは、深山幽谷に囲まれた苔むした寺などではなく、猥雑な色に染まってのたうちまわる俗世間そのもの。つまり、
どろどろの現実社会に優る道場はない
・自立の若さを保つための第一条件、それは決して
騙されないこと。騙されないためには、あらゆる権力、あらゆる権威を疑うことが肝要であり、必須条件。というより、いかなる権力やいかなる権威も
インチキだと思っていたほうがいい
著者は、組織に属さず、徒党を組まず、自分だけを頼りにして生きてきた、つまり、自立して生きてきたからこそ、自信をもって、みんなに自立の道を促しています。
自立から遠ざかることが、半ば常識になっている世の中だからこそ、著者のような野性の精神が必要となってきているのではないでしょうか。