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「言えないことをしたのは誰?」

7月10日に出版された漫画。玉造のホテルで全部読みました。

スクールセクハラ、中学校の教師による生徒への性暴力を詳細に描いています。作者は、ともよく取材をしています。私がしばしば当たる性暴力の被害に遭った少女たちをそっくり再現しているとも言えます。とても読み応えのある漫画です。

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主人公は、中学校の養護教諭。いわゆる保健室の先生。生徒からの情報で、部活の顧問の教師が何人もの女子生徒をレイプしていることを知ります。彼女は、何とかして生徒たちを救い出そうとしますが・・。

 この中で、はじめは未熟で空回りばかりする養護教諭の行動ですが。後で、だんだんと力をつけていく中で、自らの間違いにも気づいています。しかし、それでも・・。と私は思います。

 この様な事件に向き合う時には、しっかりした取材が必要で、何より被害者本人からちゃんと被害を聞き出さないと。その証言もないままで、彼女は教員室でその疑惑を他の教師たちに話してしまいます。これ、もっともやってはいけないこと。なぜか。それは、加害者が犯罪行為を知られる可能性があることを感じ取ったら、何より被害者を危険な目に遭わせる恐れがあるからです。口封じのために。

1990年、広島県の小学校での事件です。

1990年3月…広島県警は、安浦町立の小学校6年女児を絞殺した疑いで同小学校教諭・T.K.を逮捕した。被害女児が小学校を卒業した3日後、元担任だったKは彼女の家に車で訪れ「ちょっと話がある」と連れ出した上、首を手で絞め殺害。自らの妻に「子供を殺してしまった、新幹線に乗って(自分も)どこかで死ぬ」と連絡したため事件が発覚したのである。
そしてこの件には、さらに根深い問題があった。そもそも河内は被害女児に対し、日常的に体を触る、キスをするなどのわいせつ行為を繰り返していたというのだ。その行為が明るみに出たため、河内は謹慎処分を受けている最中だったのである。そんななかで起こった殺害事件…学校長や教育委員長、他の教職員らの対応も大いに問題視された。・・


 私は、この件でメディアからコメントの取材を受け、本当にびっくりして、胸が痛くて、忘れられません。この教師も仕事熱心で、保護者の評判もいい人だったと。

 さらに、別のまだ記憶に新しい事件ですが。

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これらでも分かるように、教師による児童生徒への性加害は、なにも今に始まったことではありません。この事件では、加害者は女児たちに固く口留めをしていました。被害者、特にまだ未成熟な少女たちは、その被害をなかなか口に出せません。だから、長い間多くのこどもたちが被害に遭い続けました。

 この漫画の被害生徒たちも。それを、焦ることなく、じっくりと信頼関係の中で、話を聞くことがなにより大切。そもそも、社会的には、まさか教師がそんなことをするはずがないという思いが浸透していますので。話しても信じてもらえない・・ますます被害者はだれにも言えなくなってしまいます。


 今、やっとやっと法律も変わって来て、社会も少しずつ変わって来て、ワンストップセンターも力を発揮できる(すべてのワンストップセンターではありませんが)地盤もできてきて、告発もできるようになってきました。

 また、今もなお、この漫画の中にもありましたが、学校の名誉のために、事件を明らかにすることをためらい、あたかも被害児のプライバシーのために公にしなかったという言い訳がまだまかり通っています。今回の米兵による沖縄の少女への性暴力を政府が隠蔽したのと同じように。

 多くの人、とくに学校現場にいる人は、まずこの漫画を謙虚に読んでほしいと思います。作者の懇親の取材力で、性暴力の基本が余す所なく語られています。これを読んで、少なくとも、性暴力の被害者に対する偏見を改めてほしい、そんな思いを持ちました。すごい力作を書いて下さった作者に心から感謝します。

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