氷菓 第3話「事情ある古典部の末裔」 感想!
ロゴデザインが同じだから脚本かと思ったw
神酒原は原作既読ですが、ネタバレは一切しません。
ネタバレを避けるために、「感想」ではミステリー部分に関する言及を極力避けます。ミステリーはネタが命、感情に任せて書くとうっかりネタバレしかねないので、自制をかけます。
「考察」(アニプレッション)では触れます。
置いてけぼりの里志
前回もあまり出番のなかった里志ですが、今回はなんと登場シーンが激減。部活の掛け持ちは大変です。夏の流行を先取りとかなんとか言ってたけど、その結果があのヒマワリとはね。百年の恋も冷めかねないわね。でも摩耶花さんの想いは相手のセンス程度で揺らぐような安いものではないのです。って、そんな話じゃねぇや。
現在原作の第1巻を消化中ですが、この時はまだ作劇に粗が見受けられて(まぁデビュー作ですし)、ストーリーを作ってからそのストーリーに邪魔なものを排除していっている感じでした。
千反田の鼻風邪なんか見事にこれですね。悪い言い方をすれば、ご都合主義となるでしょうか。さすがにそこまでではないですけど。
千反田ほど分かりやすくはないけど、里志もですね。ストーリーに邪魔だからと爪弾きにされてしまいました。
もしあの場に里志がいたら、いち早く折木の思惑に気付いて摩耶花をなだめすかしてしまうでしょうから、焦ったり怒ったりする摩耶花が見られないところでした。摩耶花は登場が遅れた分、たくさん出してあげないといけないですからね。
反対に言えば、ここで里志を舞台に上げなかったのは、「キャラクターを大事にしている」ともなりそうです。特に何も考えずに里志を同行させて、んで焦って折木に突っかかる摩耶花を放置でもしたら、それはキャラクター像が変わってしまいますからね。
作者の思い描く里志は、あそこで場を一番綺麗な方向に流す。しかしそれだと摩耶花がぎゃーぎゃー言えない。
しょうがない、里志は手芸部に出張してもらうか。
その結果がヒマワリ。うん、アニメスタッフは酷いことをするもんだ。
こういうことには率先して楽しみを見出す里志ですから、あとから事の顛末を聞いたら悔しがるでしょうね。
僕としても、べらべら喋る里志がお気に入りなので、今回は少し寂しかったです。今回大人しかった分、次回ははっちゃけてもらいたいね。
今回のお話
今回のミステリーは、文集のバックナンバーの在り処。
部室にはない。図書室にもない。ではどこだ? というところで、古典部OGの姉からヒントが。見てきたようなタイミングですね。
喫煙をどうにかして隠したい遠垣内先輩を脅してバックナンバーを持ってきてもらいましたが、まぁいつものごとく、ふたを開けてみればどうということはない結果でした。折木の言う通り、千反田が風邪引いてなけりゃ謎解きにすらならなかった。
もっと注目すべきは、千反田のおじの話ですね。
今までは(今回も)ちまちまとした謎に向き合ってきましたが、なんと問題は45年前に何があったか。
いきなり話が大きくなりましたね。つまり、これが『氷菓』の氷菓編における柱となる問題。
余談ですが、原作既読者は「あれ?」と思ったかも知れませんね。原作では33年前となっていますから。
これは、アニメの時代設定が2012年だからですね。原作より12年先です。既読者であれば、ここで33年前が45年前に変更になった理由がすぐに分かると思います。
途方もない話ですね。解決すべきは、関谷純が幼少の千反田に何を話したか、そして何故泣いたのか。それを紐解くには、どうやらさらに45年前にまでさかのぼらないといけないらしい。
喫茶店のシーンにて。
折木は最初、千反田の頼みを「気が進まん」と断りましたね。そしてモノローグで、その理由を語った。
折木のことをいけ好かないとする感想もちらほら見かけていますので、このシーンの折木を「非情なやつだ」と思う視聴者がいるかも知れません。
でもここは、折木の言い分の方が正しい。
あそこまで思い詰めているわけですから、確かにこれは、千反田の人生観に関わりかねない件です。しかし話を聞いただけでは、到底解決できるとは思えない。できるかできないかによって結果が大きく左右される件に、ほいほいと乗るのは「無責任」と言えるでしょう。
千反田の方が無理なお願いをしているのですね。それも承知で頼み込んでいるわけですけど。
そこで折木の出した妥協点は、「積極的にはならないが何かあれば協力する」。参加ではなく協力程度だと、責任の重さが違いますからね。
と言ってもまぁ、あまり変わらない気もしますけどね。大事なのは本人の気の持ちようか。
文集「氷菓」の発見で都合よく解決しちゃうか……となりかけたところで、一番大事な創刊号がない、とw
そう簡単に謎は解決しませんというところで次回。
ちなみに、出てきましたね、氷菓。文集の名前なのでした。でもなんで「氷菓」なんでしょうね。
今回僕の好きなシーンは、生物準備室の前の一幕です。遠垣内先輩の態度がおかしいと気付きながらも面倒くさいから帰る折木も面白かったし、それを止める摩耶花のつっこみも面白かった。
「学校中を探さないといけない」と聞いて目の色変えて攻勢に出る折木には笑いました。
あと、折木の首根っこに腕ひっかけてどつく摩耶花が可愛い。詳細には後述しますが、キャラクターがどう動けば可愛く見えるかを徹底して描いています。帽子を脱いでしまう思いです。
洗練された映像美
いやはや、今回はとてつもなく面白いですね。いや、今回「も」ですね。
やはり京アニの映像演出力はとんでもないものがあります。
今回の絵コンテ・演出は石立太一。
演出補佐に小川太一。なんだろうこれは、偶然なの?w
石立太一は『日常』の副監督を務めていましたが、いやはや、彼の演出ってこんなにすごかったっけと思うくらいに今回面白すぎます。
1話2話の監督の絵コンテも素晴らしいけど、今回は違う素晴らしさがある。
今回は「物語と映像のシンクロ」がすごかったです。
いや、物語と映像っていうのはシンクロさせるのが当たり前ですよね。キャラクターが「ナイバッチー!」って言っているのに映像ではゴールネットにボールがねじ込んでいる、なんてことがあってはいけません。
しかし今回の絵コンテ・演出は、さらにシンクロの度合いを深めるものでした。言い換えれば、映像の説得力がとてつもないことになっていた。
一番分かりやすいのは、前半の喫茶店のシーンですね。
千反田がおじのことを説明しているシーンでは、客の読んでいる新聞がよく映されていました。おじはなんでも質問に答えてくれて、なんでも知っているような人。新聞は知の宝庫。
仕掛け絵本の演出もいいですね。「幼少期の話をしている」ということがよくわかります。
「その答えを聞いたわたしは……」という千反田のセリフのあと、折木が「お前は?」と聞き返すシーンでは、鏡に映る二人が映されました。恐らくは折木の視点。聞き返すところで、鏡。
「人海戦術を使えばいい」と軽々しく言ったあとで、千反田に「こんな話、誰にでもするものじゃありません」と言われたシーン。「すまん」と謝る時に、首の向きを変えました。申し訳なさの表現と同時に、「他のやつにも頼めばいい」という考えを変えた、という表現にもなっています。
挙げ続ければキリがありません。
京アニは「作画が作画が」と言われている通り作画のすごい会社で、この『氷菓』にも「作画が綺麗だ」という評価がついているのを目が腐るほどに見てきましたが、本当にすごいのは作画ではなく演出力。
キャラクターをどう動かせば、画面をどう構成すれば、面白く映るか。それを念頭に置いて作業しているのでしょう。
もちろん、すごい演出もそれを支える作画がよくなきゃ魅力を発揮できません。真に京アニのすごいところを挙げるなら、総合力、ですかね。
石立太一は『ハルヒ』で面白い演出を数多くしてきた印象ですが、今回の演出は段違いで面白い。副監督を経て、さらにパワーアップしたんでしょうかね。
次回の絵コンテ・演出を担当するのは、これが絵コンテデビューの河浪栄作。『日常』で演出デビューをしていました。『けいおん!!』でデビューした内海紘子に続き、アニメーションDoからの演出家の器用。かつてはヤマカンも、京アニというよりはDoの所属でした。ちなみに『CLANNAD』などでキャラデザ・総作監を務めた池田和美もDoの人。これはもしかしたら数年後には、分離しちゃうかもしんないね。いや、さすがにないか?
作画監督は秋竹斉一。なんとなく、堀口悠紀子の作画に似ているように感じました。表情のつけ方が近い。
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アニプレッション「こんなにも面白い『氷菓』の世界 第3話」は、5月8日の夜から深夜にかけて投稿予定です。
(5月8日22時6分)投稿しました。合わせてどうぞ。
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参考推奨リンク
所詮、すべては戯言なんだよ
『氷菓』を見て面白くなったらこのブログを見に行くといい、というブログはいくつかあるけど、『氷菓』が面白くない人はたぶんヨークさんのような見方を忘れているんだと思う。このブログを読んでアニメ視聴の初心に返ると、きっと『氷菓』は面白く見えるようになる。
妄想詩人の手記
僕がわざと黙っていたことを、同じ嫌煙家のおパゲーヌスさんがズバッと切り捨ててくれました。ある意味、そういうことを語るにいい機会だよね。喫煙者のみなさんは是非読んで下さい。
つぶやき
ソイッシュを飲んだ。美味い。でもみんな不味いと言う。ソイジョイといい、僕は大豆食品が好きらしい。
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