氷菓 第1話「伝統ある古典部の復活」 感想!
これは恐ろしいアニメに出会ったもんだ。
神酒原は原作既読です、が、ネタバレは一切しません。
ネタバレを避けるために、ミステリー部分に関する言及はほぼ避けます。ミステリーはネタが命、既読者が少しでも語るとうっかり口を滑らせてしまう可能性があるので。
第一印象
『氷菓』では↑の前置きを毎回挿入するつもりですが、今回に関しては全ての謎が今回の内に解決してしまったので、特に避ける必要はなくなったというね。という訳で、ネタに触れる可能性もありますがネタバレは大丈夫どす。
さて、『氷菓』。
米澤穂信の『古典部シリーズ』の第1巻の表題を借りてのアニメ化(2クール確定)ですが、まずは軽く、僕と『古典部シリーズ』の出会いを語らねばなるまい。
……とか仰々しく前置きするほどのものでもなく、普通に「京アニがアニメ化するなら読んでみよう」と手を出しただけなんですけどね。シリーズは5巻までが既刊、4巻までが文庫化。神酒原は4巻まで読破。5巻を読んでないのは、まぁ、単行本って高いよねー。
というわけで、僕はシリーズをこの4月に読んでいるので、既読者の中でも記憶が新しい方に入るでしょう。僕の記事は読みごたえがあるはずです。まぁ、同時にネタバレにも最新の注意を払わないといけないわけですけどね。
小見出しを「第一印象」と題しましたが、第一印象とは少し違いますね。僕は原作を知っていますから。
まぁそんな細かいことは気にせずに、アニメ『氷菓』の第一印象といきましょう。
何これすげぇ面白いんですけど……!
他の春アニメから、ノイタミナからすら少し遅れて始まった『氷菓』ですが、スタートダッシュが遅いならより速く走ればいいじゃない、とでも言いたげなこのクオリティはなんなんでしょう。
感想ブログでは「クオリティ」という言葉が踊り狂うでしょうね。2ちゃん、ツイッターでもそうなるかな。
僕がこのアニメに注目するのは、言わずもがなアニメーション制作が京アニだから。
僕は自他共に認める京アニ信者、京アニが東でアニメを作るなら東へ走り、京アニが西でアニメを作るなら西へ飛びます。まぁこれは誇張表現ですけど。
とにかく、まぁ僕に限らず京アニだからということで注目する人は多いでしょうが、そんなわけなのです。ミステリーだからネタバレに気を付けなければいけない分、アニメーション部分での言及が多くなるでしょう。
OP
今回はすでに公式サイトで確認してしまったのですが(まぁそれも、ある程度最初から予想できたから)、スタッフ情報は基本的に見ないようにするつもりです。毎回本編見て予想したいのでね。今回確認しちゃったのは、まぁ初回だからスタッフは明々白々だよねぇということで。
ということなのですが、そういえばOPがあるのでした(EDはお預けだったけど)。
まぁOPと言えども、だいたい誰が作るかなんて決まっているようなものですが、それでも予想してみたいもの。
というわけで、見る前から簡単に予想できるアドバンテージはあったものの、OPが始まってわりとすぐに「これは武本康弘だ」と分かりました。
いやぁすごいですねこのOPは。波紋の撮影効果を随所に応用した非常に綺麗なOP、これは一発で気に入りました。
僕が武本康弘(監督)が作ったOPだと気づいたのは、『氷菓』の文字をタイトルバックに学校がズームアウトしていくところ。ああいうダイナミックなカメラ演出は、京アニの中でも武本康弘の十八番なのですね。気づいた人は気付くと思いますが、『フルメタル・パニック!ふもっふ?』のOPと演出がけっこう似ています。
それでいて、Bメロの千反田が部室にいる折木をつかまえていくところ、あそこの絵がパッパッと移り変わる演出は『涼宮ハルヒの憂鬱(2009年)』のEDで使われた演出。さらに、サビの頭で折木を中心にまたダイナミックカメラワーク、これはもう武本康弘しかあり得ない。
原画に唐田洋、牟田亮平、おっと、高橋真梨子もいるじゃないですか。高橋真梨子は記憶が正しければ、最近作画監督やってませんね(間違ってたらスミマセヌ)。
キャラクターについて
さて初回ということで、さらにネタバレしちゃう心配もほとんどないということで、キャラクターについて書いてみたいと思います。
主人公、折木奉太郎。
僕は最初公式サイトで紹介を見た時(原作読む前)、「省エネ主義」と見て文字通り省エネが大好きなのかと思ってました。電気は小まめに消す、みたいな?w
だけどまぁ、そんなことはなかったわけで。
アニメでの印象はとてもいいですね。この辺はさすが京アニ、原作の再現度が高いです。
中村悠一の演技がこれまた素晴らしい。いろんな役をされる方ですが、高校生らしい声質を作りながらも、折木らしい枯れっぽさまで見事に演出してみせている。京アニでの出演は『CLANNAD』シリーズの岡崎以来ですかね?
ヒロイン、千反田える。
奇しくも有名な探偵と名前が一緒ですが、今作の探偵役は主人公なので別にパクリとかそんなことはない。
いやぁ可愛らしいですね! もともとすげぇ可愛らしい子ですが、京アニが化けさせた、とでも言えばいいでしょうか。一挙手一投足が可愛い。目が離せない。そして目がおっきい。
佐藤聡美の声質にピッタリ。これはキャスト情報を見た時から、ナイス配役だと思ったものです。これからもぽわぽわと和ませてくれそうだ。
親友、福部里志。
これまた阪口大助の演技力が冴え渡る。原作を読んでいる時から、こいつを演じるのは難しいだろうな、と思っていました。単純によくしゃべるし、やたら凝った言い回しを多用するし。
やはり好印象です。僕は主人公の折木よりもどちらかというと彼が好きなので(比較の問題でね)、今後も注目していきたいです。
今回は出番なし、伊原摩耶花。
……出番ないので書くことがないw
とりあえず、僕のお気に入りのキャラです。どんな描き方がされるのか、わたし、気になります。
茅野愛衣の演技にも注目ですが、彼女なら見事に演じ切ってくれるでしょう。『氷菓』はいい声優がそろったなぁ。
今回のお話
今回は第1話ということで、実に堅実な作り。僕が予想したとおりの構成でした。
実は、と言うほどのことでもないけど、今は当然原作1巻の内容をやっているわけですが、1巻『氷菓』は一つの長編というよりは、どちらかというと短編連作なのですね。構成だけ見れば『ブギーポップ』の1巻と似ています。
だから今回、謎が浮上したその場で謎が解決したのですね。アニメの1話にはおあつらえ向きの内容でした。
折木が鍵の謎を解いた点に関しては、さすがに内容を知っていると今さら感想なんてないけど、やはり注目したいのは演出。
さきほど僕は、ダイナミックなカメラワークは武本康弘の十八番、と言いましたが、本編の演出は打って変わって、基本的には大人しいものでした。
フィックス(カメラ固定)まで使われていてね。フィックス好きの僕としては涎だらだら映像でしたが、そんなことは置いといて。
『氷菓』、まぁ学園ミステリーと題打っているだけあってセリフ量が多いのですよね。原作付きアニメ(特に小説原作)ってのはセリフの省略に肝がかかっているわけですが、このアニメだとそういうわけにもいかない。
というわけで映像にどう落とし込むかが問題だったのですが、やはりカメラ演出で魅せる魅せる!
大人しいとは言え、その画面では京アニ自慢のハイクオリティな作画が舞い踊っているわけで、単純に見ていて飽きません。上映会では、「消失クオリティ」なんて言った人もいたそうですね。言い得て妙です、確かに、消失クオリティと言われても首を横には振れない。
そしてところどころ挿入される、強調のカメラワーク。折木が部室に入って、千反田が振り向くところなんか顕著ですね。この辺のメリハリの上手さはさすが京アニ、というよりは、さすが武本康弘。僕は京アニの中でも、緩急の付け方に関しては武本康弘が抜群に上手いと評しています。
折木の心象風景もとても面白い。千反田の髪が絡まっていくところは、かなりびっくりしたではあるけど、花もたくさん咲いて綺麗でした。
特にいいと思ったのが、EDクレジットに合わせての折木と里志の会話シーン、里志が折木に「あれは現状に対するただの保留だね」と言ったところ。今回の折木を「保留だ」と評した文脈にも改めて感心するとともに、そのあと商店街のアーケードを抜けて傘を差すところがとてもいいです。
折木はBパートの件で、ずっともやもやしていたのでした。しかしどうもやもやしているのかが自分では分からなくて、しかし里志がズバリ言い当ててしまった。得心のいった表情が印象的です。
そこで心情の変化と呼応して、傘を開くシーンが連動したのですね。雨が心情の変化の演出に使われることは多いですが(たいていは心が晴れると同時に雨が上がるけど)、この演出は珍しい。非常に面白いです。
原作でもアーケードの終わりで傘を開く描写があるのですが、アニメはタイミングが違うのです。傘を開くタイミングを折木の心情の変化に合わせた演出、うーん、感服。
ちなみに、撮影監督の中上竜太によると、手書きとCGの境目をできるだけなくすように作ったそうですね。
そうすると、冒頭の大量の高校生はもしかしてCGかな? だとしたら驚愕ものです。だって手書きにしか見えなかったんだもの。
手書きだったとしてもすごいですね。この辺の真偽はさすがに判断が難しいですが、とにかくすごいことに変わりはない。
いやぁ、非常に面白かったです。期待通り、そして期待以上!
これが2クール楽しめると思うと、もう眠れる気がしません。誰かこの胸のドキドキを止めて。いや、止めないで!
作画監督補佐に内藤直、「作監」の項で見るのは初めてです。
原画に植野千世子、秋竹斉一、高橋真梨子。植野千世子の作監回が楽しみ。
次回は摩耶花の登場です。wktkが止まらないぜ。
参考推奨リンク
失われた何か
京アニの映像演出について詳しく述べています。今回の映像をすごいと感じたけど、具体的な言葉が出てこない人、特に必読。
藍麦のああなんだかなぁ
僕と同じく原作既読、こちらはしっかり5巻まで、しかも京アニが作るからと手を出した僕と違って純粋な米澤穂信のファン。
第1話を地味だと感じた人、必読。
我と我が身と彼のものと。
リンクを貼りはしましたが、閲覧には注意。ネタバレというほどのものでもないですが、まだ第1話なのに作品の本質を突く内容になっているので未読のまま気楽に楽しみたい人は読むと冷めてしまうかも知れない。
けど、内容はなかなか読ませる記事なのでリンク。一つ反論したいことがあるけど、そこも含めて批判的に読めるので、感想ブログを回っていてふいに出会ったアカデミックな記事にテンション少しアップ。
原作既読者以外は読まないように、と、一応釘を刺しておきます。
妄想詩人の手記
第1話で、しかも未読でありながら作品を丸裸にしてしまった記事。作品を面白くするのは何も作品だけじゃない、というのをまざまざと思い知らされる。
追記:
アニプレッションに、記事「こんなにも面白い『氷菓』の世界 第1話」を投稿しました。合わせてどうぞ。
つぶやき
ボーリングで投球フォームを直したら、今度はカーブがやたら鋭敏になって予想以上に左に曲がる事態に。いったんレーンの右ギリギリを攻めるのに左側の3本だけを吹き飛ばしていくさまは一種の芸術。なんで丁度よく曲がらんのや……。
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