arret:権利能力なき社団の財産に仮差押えする場合の必要書類
昨年の、朝鮮総連関係事件において示された判断のバージョンアップというか、揺り戻しというか、である。
下級審が素直に最高裁判例に従ったところ、当の最高裁が「それは行き過ぎだ」と是正を掛けた格好だ。
判断内容を要約すると、権利能力なき社団の財産で、代表者名義に登記されている不動産に対して社団の債権者が仮差押えしようという場合に、原決定までは確定判決で社団(構成員に総有的)に帰属する財産であることが確認される必要があるとしたのだが、最高裁は、仮差押えの場合本執行と異なり確定判決までは必要ないとしたものである。
以前の最高裁判例というのは、このブログでarret:権利能力なき社団と執行文付与として紹介したもので、以下のような判断であった。
権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者は,当該社団の構成員全員の総有に属し第三者を登記名義人とする不動産に対して強制執行をしようとする場合,上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の確定判決等を添付して当該社団を債務者とする強制執行の申立てをすべきであり,上記登記名義人を債務者として執行文の付与を求めることはできない
このように強制執行については確定判決等を要求し、仮差押えでは「確定判決」までは必要ないとした理由だが、要するに本執行と異なり仮差押えなら登記名義人も社団(構成員)もそれによって財産を失うには至らないし、仮差押えのために確定判決を求めたのでは保全制度の意味がなくなってしまうということにある。
至極妥当な判断であろう。
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