…side C…
「…僕達の出逢いは『Happiness』
それでいいんですよね…」
「そう」
「貴方はユノ…
先に好きになったのは貴方…」
「貴方じゃなくてユノ」
「……」
何度も何度も確認したのに手が震えてしまうのは、きっと知らない事ばかりだから
結局僕らはお互いの事を何も知らないのにユノの両親と食事をする
どうしてこんなに急なのか聞いたら
テミン君と入籍したら直ぐに逢わせたかったんだとか
その前に面識は無いのか聞いたら
なかなかタイミングが合わなくて叶わなかったらしい…
「…まぁ、きっと同性との結婚が嫌だから逢って貰えなかったんだと思うんだけどな…」
そう言って寂しそうにしたユノ
「それなら僕も逢って貰えないんじゃないの?」
「今回はもう結婚しちゃったから
やっと重い腰を上げたワケだ」
「…あぁ…」
今僕が居るのは有名ホテル
今からエレベーターに乗り高級創作レストランとやらに行く
昨夜逢ってから僕のマンションで遅くまで打ち合わせをしたんだけど
寝不足と緊張でグダグダ過ぎる
「チャンミナ、困ったら俺に微笑んでくれればいいよ
そうしたら何とかするから」
「…うん…」
チョンさん…いや、ユノの事を何も知らないのにユノの両親と食事会だなんて本当に嫌だ…
「ぁああぁぁぁぁ…」
「…だ…大丈夫か?」
「なっ…何であんたはそんな平気にしてられるんだよ!!」
「あんたじゃなくてユノ」
「もぉっ!!ユノ!!」
「よろしい
だってさ、ジタバタしても仕方無いだろ?
変にオドオドするより堂々としてた方がバレないと思う」
「…ぅん…」
到着したエレベーターに乗り込むと
ふたりだけの密室に変な汗が出る
「緊張しないおまじないしてあげるよ」
「えっ?」
そう言って微笑んだユノが僕の顔の横の壁に手をついて
至近距離で言った
「チャンミナは微笑んでいてくれればそれでいいよ…」
「…ぅん…わか…っ!?…ん、っんぅ、ふ、ん…!!」
ユノの距離が近すぎて何もかもがぼやけて見える
そっと唇が触れるようなキスなんかじゃなくて
欲を引きずり出すような官能的なキスに僕の腰は引けてしまうのに
そっと腕を回して抱き寄せられてしまった
「…んっ!!…や、め……」
こんな場所で何を考えているんだ!?
もうすぐエレベーターは止まるハズ
ドアが開いたら誰かが居るかも知れないのに離してくれない
「ゆ…」
こんなキスなんか知らない
膝がガクガクして、ユノが支えてくれなかったら僕は
もしかしたらへたりこんでしまっていたかも知れない
「緊張ほぐれただろ?」
そう言って微笑むユノ
…キス…してしまった…
「…マジか…」
「…ゆ…の…?」
「…チャンミナ…大丈夫か?」
「…ぅん…」
こんなに気持ちのいいキスなんか初めてで
どうすればいいのか解らず
目の前のユノを突き飛ばした
「…チャンミナ…?」
「…ご両親居ないのにキスなんて…」
「緊張、ほぐれただろ?」
「…まぁ…」
緊張がほぐれたとかじゃなくて
あまりの事態に頭がパンクしそうだ
勿論情報処理能力はガタ落ちだし
さっきまで覚えていたユノの事を全て忘れた気がする…
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