…side C…
酔っぱらってフワフワしている僕は
まっすぐ歩いているようでそうでないらしく
どれだけ歩いても自宅のマンションにたどり着けない
「…なんでだ…」
やっと見慣れたマンションを見つけてほっとしたら
目の前に現れた人影
「シムさん…」
「…どちら様ですか?」
「…チョン・ユンホです…」
「…チョン?…あぁ、僕の契約相手か…」
「気が付いたら居ないから探したんだからな」
少し不機嫌そうにそう言ったから
僕は売り言葉に買い言葉のように不機嫌に言ってやった
「へぇ…何、あんたたちは人に見られながらセックスするのが好きなのか?」
彼は目を丸くして僕を見てから
深く溜息を吐いて言った
「…そんな趣味は無い」
「僕だって見る趣味は無い」
睨むように僕を見るから
僕も睨み付けてやる
「あっ…」
どうして僕が帰って来たのかやっと理解したようで
口元を押さえて俯いてる
ほんのり頬が紅い
「…悪かった…」
「…ふざけんな…」
驚いて僕を見つめる彼
僕の口から零れたのは
そんな彼に言いたかった事
「あのさ、何の為に今日はそっちの家に行ったのか覚えてる?
今後の事を話し合う為だよね?
それなのに何で恋人とそんな事始めちゃうわけ?
僕が帰ってからでも良かったんじゃないの?ねえ…」
「…それは…悪かった…」
「結局話し合いは中途半端で終わってるし
僕は自分の部屋だって見てないのに引っ越さなきゃいけない…」
「……」
「何より…僕は、不必要なんだと思い知らされたよ…」
「え?」
戸惑いの色を滲ませた顔
だけど僕の口から次々と吐き出される本音
きっと素面じゃ言えない
「愛の無い結婚なんて、苦しいだけだ…」
「…シムさん…」
「チャンミン…」
「えっ?」
「僕の名前はチャンミンだ」
「…チャンミン…」
「あのさ、あんた契約でご両親の前では本当の夫婦みたいにしろって言ったよね?
僕達はお互いの事を何も知らないのにそんな事出来るわけ無いだろ?
だからこそ今日は色々と話さなくちゃいけなかったんだろ?
まぁ、どうせご両親に逢うのは随分と先なんだろうけどさ…」
「…申し訳ない…」
僕の言う事を黙って聞く彼は
きっと腸煮えくり返ってるんだろうな
年下の…よく知りもしない僕にこんな事言われちゃってさ…
「…本当に申し訳なかった…」
そう言って頭を下げた彼に僕の心臓は止まりそうな程驚いた
きっと…彼は本当に僕に対して悪い事をしたと思っているんだろう
きっと、根は真面目な人なんだ
そんなふうに謝られたら
何も言えなくなってしまう…
「…わかったよ…
もう…帰って…」
同性との契約結婚
きっと色々な問題が出て来るのは仕方の無い事なのかも知れない
僕は1年間だけ彼の家に間借りさせてもらうだけ…
そんなふうに思えば何とか頑張れるかも知れない
そうだ、ルームシェアとか…そんなふうに考えれば良いんだよ
彼とのキスは嫌だけど
挨拶なんだから…そう、挨拶、挨拶…
別荘に行ってるご両親が直ぐに帰宅するとは思えないし
それまでにお互いの事を話し合えばいい
「…チャンミン、悪いけど明日の夜うちの両親と食事会だから」
「…何でだよ!!」
.
- 関連記事
-