遠くで僕を呼ぶ声がする
だけど僕はカラダが動かなくて探す事も出来ない
「…ミン……チャンミン…」
誰?僕を呼ぶのは誰?
うっすらと目を開けると
心配そうな顔をしたイケメン
えぇと、どちら様ですか?
「…だれ…?」
「…は?」
「…チャンミン…?」
一人かと思ったら二人のイケメン
「…ドンヘさん…」
という事は、もう一人のイケメンはこの伏魔殿の主人…ユノさん
僕を抱き起こしてくれていたのはユノさんで
何がどうなっているのかわからず、されるがまま…
「どうしたんだ?何があった?」
「…っぁ…」
痛む頭
もしかしたら僕はアイツが飛んで来たから逃げようとして転んで頭を打ったのか
それとも普通に気絶したのか
まぁ、どちらにしても全くヘタレな理由で恥ずかしくなる…
「…それにしてもチャンミン頑張ったなぁ~!!」
「あ、はい…」
見違えるようなリビングに嬉しそうなドンヘさん
さっきのイケメンのユノさんは着ていたジャケットを脱ぐとソファーに投げた
「ちょっ…!!
脱いだらハンガーに掛けてくださいよ
そうすればシワにならないし、部屋も汚れませんから!!」
「ぷっ(笑)」
フリーズしたユノさんと
噴き出したドンヘさん
思わず言っちゃったけど大丈夫かな…
「…あーはーはー!!」
爆笑しているユノさんに僕は少しホッとした
第一印象は恐そうだったから怒られるかと思った
全身で笑いを表現して弧を描く双眸
不覚にも何故かきゅんとした…
「…ぅん?」
何故だ?
何故きゅんとしたんだ?
全くもって意味不明
という訳でこの気持ちは置いておいて
「お部屋の方は、まだ手をつけてないのでリビングとバスルームだけ掃除させて貰いました」
「…あの部屋は1日じゃ終わらないよな(笑)」
「ドンヘ酷いなぁ(笑)」
泥棒に入られた後みたいな部屋だし
大切な物まで捨てちゃうと困るから
あまり部屋は掃除したくない、というのが建前で
本当はアイツが出そうだからもう掃除なんかしたくない、というのが本音
だけど僕は入社したてのサラリーマン
会社から命令されたら断る事なんか出来ないんだ
「ユノ、丁度良い
明日はオフだから、シムと一緒に部屋を掃除しろ」
「…は?」
僕もユノさんも口を開けてポカーンとして間抜け面だった自覚がある
だってドンヘさんの言った言葉は僕にとっても衝撃的で
出来ることなら入りたく無い部屋を掃除しろだなんて何かのバツゲームみたいだ
「…ぶっ(笑)」
噴き出したドンヘさんは僕達を見て指を指して笑う
人を指差したらいけないって教わらなかったのか?
本当に愉快そうに笑うドンヘさんとは対照的に僕達二人は微動だにしない
「…明日は久々に地元の友達と…」
「じゃあ、シムひとりでやれ」
「えっ!?」
「お前が必要無いと判断した物は棄てていいから」
「ちょ…ドンヘ!!」
…そんな事をして大切な物まで棄てたら僕はクビになりますよね…
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