伏魔殿のような寝室は見なかった事にして
僕はリビングを掃除する
ダイニングテーブルの上にはゴミが無くなり
布巾で拭いてやっとテーブルらしくなった
「…年末の大掃除よりもハードな気がする…」
よく知りもしないのに他人の部屋を掃除するだなんて安請け合いをした自分
もし出来るのなら過去に戻ってきちんと断れと言ってやりたい…
いや、でも、毎日アイツの存在する部屋に入るなんて死んでも無理
…結局掃除するのが一番いいんだ…
「…はぁ…」
床を拭く
そんな簡単な事が大仕事
それでも、綺麗になっていくのは気持ちがいい
本気で清掃業者になったような気がして少しだけ一人で笑ったら静かな部屋に虚しく響いた
「…お金を稼ぐのは大変だよな…」
これだけ豪華なマンションに住んでる彼はどれ程の努力をして手に入れたのだろうか
「…きっと賃貸だから、月幾らかな…」
他人の部屋を値踏みするなんてあまりいい趣味じゃないからやめるけど
まぁ、僕の給料じゃまだまだ無理だ(笑)
キリのいい所で手を止めて
リビングを見渡せば今朝のあの部屋とは違う部屋のように見違えたから
今日の自分グッジョブ!!
と自分で自分を褒めてみた
とりあえずアイツのホイホイ的な駆除ハウスをそれとなく設置して
ソファーに座れば大きく鳴った腹の虫
「…あー…もう、こんな時間…」
昼はとうに過ぎていたのに
そんな事にも気付かない程に集中して掃除をしていたのかと思ったら
清掃業者に就職しても良かったんじゃないかとも思えた
さっき買い物に出た時についでに買ったパンをかじりながら缶コーヒーを飲む
僕はまだ独り暮らしをした事が無い
実家はソウルなのでその必要も無くて
優しい父母と子憎た…いや、可愛らしい妹達に囲まれて暮らしている
だから、独り暮らしをしている彼が
こんなになっても片付けないなんて余程の理由があるのかと思うと自然とやる気が湧いてくる
パンを食べ終えて次は何処を掃除しようかと考えていたら
開けていないドアがあったので開けてみた
「…うん?」
何も無い部屋
ガランとしていてここだけ怖いくらいに生活感が無い
クローゼットは開け放たれているけれど何も無くて
辛うじてあるカーテンだけがこの部屋を彩っていた
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